2023年5月22日月曜日

ちょうどいい案件管理ツール board。 インボイス制度や電子帳簿保存法の改正対応の請求書発行TOOL。

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2023年05月22日 13:42  ITmedia NEWS

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中小企業向けのクラウド請求書作成、販売管理、経営管理ツール、board

 インボイス制度や電子帳簿保存法の改正を受けて、受取請求書サービスが盛り上がりを見せており、本連載でも過去2回取り上げた。一方で、請求書を発行する側については、インボイス制度に対応するために適格請求書番号の記載を追加などのレイアウト修正はあるが、そこまで大きな変化は見られない。



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 請求書を発行する、という処理だけでいえば、Web上で探せばExcelやWordの無料フォーマットも見つけることができ、freee会計やMFクラウド会計などに付属する機能でも対応することもできる。請求書発行という機能だけでサービスを継続することは非常に難しく、多くのツールは姿を消していった。



 そんな中において未だにユーザー数を増やしているのがboard(ボード)である。単に「請求書を発行する」だけでなく、その前後の業務プロセスをうまく機能に組み込むことでユーザーの支持を得ているのだ。本稿では請求書発行ツールとboardの違いについて紹介する。



●シンプルな請求発行ツールはなぜ消えていったのか



 2010年代初期の請求書発行ツールの代表格に、Misoca(ミソカ)というサービスがある。



 Misocaは、プログラマーである豊吉隆一郎氏と松本哲氏によって11年にリリースされたクラウド請求管理ツールである。当時はまだクラウド上で完結する請求管理ツールは少なく、無料で使える範囲も広かったことから個人事業主や中小企業の間ですぐに評判となり、あっという間に数万の登録事業者を有するサービスとなった。その後、16年に業務ソフトウェア「弥生シリーズ」を展開する弥生に買収され、現在に至っている。



 当時は私の周囲でもMisocaを使っている人が多くいたが、その後MFクラウドやfreeeなどがクラウド型の請求書発行ツールをリリースし、あっという間にその地位を失ってしまった。見積書・請求書・納品書が発行でき、メール送付や会計ソフトへの連携ができるという至ってシンプルな機能であり、Misocaでしか使えない独自機能はない。弥生シリーズの「弥生販売」がパッケージ型ソフトであり、Misocaを買収することでクラウド請求書発行ツールを補完する狙いがあったものと思われるが、あえてMisocaを選ぶだけの理由を提示できなかった。



 10年代にはたくさんあったクラウド型の請求書発行ツールのほとんどが姿を消し、MFクラウド請求書やfreee会計の請求書発行機能がそれらを代替している。見積書を作成し、それを請求書に変換して発行する、という機能だけでユーザーからすれば必要十分であり、そこに何らかの差別化要素を見いだすのは難しい。



 ある程度の企業規模になればSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)から請求書を発行するようになるが、小規模な事業者の場合は会計ソフトとセットで提供される請求書発行ツールを利用することで事足りるのである。



 個人事業主なども数枚の請求書であれば、無料の請求書発行ツールでも対応でき、Excelで作ることも容易である。



 請求書を発行する、という機能を提供するだけではもはやビジネスとして成立することは難しくなっている。そんな中において、boardが築いたポジションは非常にユニークだ。



●クラウド請求書作成ソフト board



 boardは、ヴェルク(代表・田向祐介氏)によって14年にリリースされたクラウド請求書発行ツールである。メインターゲットはSFA・CRMを使うほどではないが、単純な見積・請求だけの機能では物足りない中小企業だ。



 SFA・CRMは受注までの商談管理、活動管理などが主な機能であり、見積書や請求書の発行は、その過程で作成されるサブ機能である。営業担当者が10人以上もいるような企業では必要なサービスではあるが、営業窓口が数名の企業では高価なCRM/SFAの機能は使いどころが少ない。一方で、Misocaのようなシンプルな請求書発行ツールもしくはExcelでは、請求書を発行する際の作業負荷が重く、月20件を超えたあたりからかなりしんどくなり、ミスも発生し始める。



 この隙間を埋めるために開発されたのがboardである。



●最大の特徴、案件ごとの管理



 boardの最大の特徴は、「案件」ごとの管理ができる点にある。ここでいう「案件」とは、1つの契約や受注を示すもので、そこにひも付く見積書、発注書、検収書、請求書などのあらゆる書類をboardでは「案件」単位でまとめて管理できる。請求書発行ツールでは見積書から請求書への変換などはできるものの、その見積書と請求書が1つの「案件」として管理されているわけではない。この「案件」という管理単位はSFA・CRMで用いられるものであり、boardは他の請求書発行ツールよりも高度な機能を備えている。



 見積から案件受注までが長期化したり、数十件が同時並行で走るようになった中小企業にとって、この「案件」ごとの管理はなくてはならない機能だ。



 「案件」管理をすることによって、士業などに多い年間契約だが毎月請求書を発行するようなケースは非常に対応がしやすくなる。見積書、発注書などは1枚で12カ月分の料金を記載しつつ、請求書の設定を「毎月請求」にするだけで自動的に月別の12個の請求書を作成してくれる。board上では案件一覧と請求一覧は別々に用意されており、受注後は毎月請求一覧を見て発行ボタンを押すだけなので、漏れがない。多くの請求書発行ツールが前月分の請求書をコピーすることで毎月請求に対応している中で、非常に優れた機能である。



 boardでは合算請求機能も用意されている。毎月請求する定額料金とは別のオプション課金などが発生した場合は別案件として作成し、すでに作成済みの請求書と合算すれば、1枚で定額料金とオプション料金を請求することも可能だ。すでに作成済みの案件及び請求書を編集する必要がないため、ミスも発生しにくい。また、分割請求機能も用意されており、着手金を請求して、納品後に残額を請求するなどのケースにも簡単に対応することもできる。



 一方で、SFAにある「リード管理」(見込顧客を管理する機能)や「活動管理」(電話やアポイントなどの活動を管理する機能)はboardには用意されていない。そういう意味ではboardはSFAではなく、あくまでも請求書管理ツールだ。



●電子契約サービスや会計サービスとも連携



 2つ目の特徴は、電子契約サービスとの連携である。コロナ禍を経て日本でも一気に普及した電子契約サービスであるが、boardはクラウドサイン、DocuSignとAPI連携しており、boardの「案件」上に作成された発注書や検収書を送付して電子署名してもらうことができる。署名が完了すればboard上のステータスも「受注」などに更新されるため、対応漏れも発生しない。



 CRMやSFAでは電子契約サービスとの連携は珍しいことではないが、請求書発行ツールでは対応しているサービスはほとんどない。月に数枚であれば1つずつPDF化して、電子契約サービスにアップロードする対応でも問題ないが、やはり件数が増えてくることで事務負荷は重くなってくる。boardの案件管理機能で受注や納品などのステータス管理が容易であるため、電子契約サービスと連携することで煩雑な処理によるストレスが大幅に軽減される。



 3つ目の特徴は、豊富な会計連携機能である。請求書発行ツールの多くは会計ソフトへの連携機能を提供しているが、タグなどのさまざまな条件によるケース別の勘定科目や税目、部門などの出し分けが非常に細かく設定できるところまで提供しているのはboardだけだ。各会計ソフトとは独立して運営されているからこそ、あらゆるケースに対応できるようになっているのである。



 また以前取り上げた通り、freee会計は「取引」という特殊な形式で処理をするのが特徴だが、boardはfreee会計とAPI連携をすることで案件のステータスが「請求済」になると即座にfreee上に取引が作られる。ユーザーとしてはfreee会計上の請求書発行機能を使っているのと遜色がないレベルでの連携であり、管理するべき案件数が増えてきた多くのfreeeユーザーがboardを使っている。



 4つ目の特徴は、外注や仕入などを「案件」にひも付けて登録することで、粗利が管理できることだ。この機能も請求書発行ツールではほとんど実装されておらず、SFAやCRMでも個別開発をしなければ実現することができない機能だ。boardでは在庫管理をすることまではできないが、受注した案件の一部を外注するようなケースではboard上で発注処理も行うことで簡単に案件毎の利益を見ることができる。



 システムの受託開発などではこの機能があることによって、案件の収支が簡単に管理できるようになる。システム開発会社出身である田向氏らしい発想である。



●ちょうどいい案件管理ツール



 boardは差別化が難しいと思われていた請求書発行ツールという領域で、さまざまな機能を付加することによって独自のポジションを構築している。まったくWeb広告などのプロモーションを打っていないにも関わらず、着実にユーザー数を増やし続け、有料ユーザーは4500社を突破し、さらには有料継続率は99%を超える。



 「案件」という概念を取り入れることで他の請求書発行ツールよりも少しだけ広い範囲をカバーし、会計ソフトにもシームレスに連携するboardは、SFA・CRMは過剰であるが、請求書発行ツールやExcelでは不足するユーザーのニーズにピッタリとハマっているのである。このような特徴を持つboardのことを私は「ちょうどいい案件管理ツール」と呼んでいる。



 請求書を発行する前には、見積もりや発注などの処理が確実に発生するため、受注ステータスを管理する必要があるが請求書発行ツールのその機能は貧弱で、多くの中小企業はExcel管理をしていた。また、年間契約かつ毎月請求の場合には見積書・発注書と請求書が1対1の関係にならないため、別途請求書を毎月作成する必要が生じていた。だからといって、高額のSFAやCRMまではいらない。そういうホワイトスペースが個人事業主や中小企業の一部には存在したのである。



 請求書を単に発行するだけであれば、わざわざ有料のツールを契約する必要はないが、boardはちょうどいい案件管理ツールであるため、請求書発行ツールではできないことができる。しかも月額料金も数千円で使えるため、費用対効果は抜群である。



 請求書発行ツールでの処理に限界を感じている企業はぜひ試してみてもらいたい

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