今の時代,企業の価値としては,多くのブランド品と同様,本質的にいいもの,であるのと同時に,多額の費用を掛けたコマーシャルなどで「有名」であることが重視されています。このうち,ライザップは,富裕層向けの新しいビジネスモデルを採用すると共に,例のビフォーアフター広告により,企業価値に比べて非常に有名となりました。
その後,ライザップは,国際会計基準を採用した上で,企業買収による「負ののれん」(簡単にいうと,会社を買い取った側が,買われる会社の帳簿上の純資産よりも安く企業を買えた場合,その差額を買った側の利益として計上できるという会計処理上の概念)の計上を繰り返すことにより,帳簿上の利益を,所謂通常の稼ぐ能力よりも大きく見せる経営を繰り返しました。このような経営は,買収した企業に想定したとおりの安定的なキャッシュフローがあればうまくいくのですが,逆の立場になってみれば分かるとおり,企業の純資産より安い値段で企業を売る側にとってみれば,それは急いで売らなければならない理由がある訳で,安定的に利益を蓄積することはできませんでした。また,上記のような目的による買収であるが故に,本業とのシナジーの有無など,経費節減効果と利益増大効果を冷静に分析した上で買収をすることよりも負ののれん狙いで買収機会を逃さないことを優先したために,買収後時間が経つと,当然のことながら経費を節減できることもなく,かつ利益が増大することもなく,利益率が低下していきました。
これに対応するため,ライザップの社長は,2018年6月,プロ経営者として名声の高かった松本晃氏を代表取締役として招き,経営環境の改善を図りますが,わずか半年で代表権のない役員となり,翌2019年6月には別会社に転出してしまいます。松本氏は,買収した企業群から,本業での利益を生み出せる会社を伸ばし,その他の会社は整理するという正攻法で改革を図ったといわれていますが,そういう経営方針は社長の意に叶うものではなかったようです。
また,本年2月に発表された1~3期の決算短信には,想定した利益がなくなったことによる繰り延べ税金資産の取り崩しによる税負担の増加という理由で赤字転落を報告し,本年6月10日発表された決算短信によれば,前期より減少したものの,60億円余りの損失を計上しました(ただし前期は190億円以上の損失でしたので,大分改善しているとはいえそうです。)。なお,主要事業のうち,美容系は減収減益,ライフスタイルとプラットフォームはわずかに利益確保となっており,営業損失は70億円という結果でした。
なお,決算短信では,継続企業の前提に関する重要事象等が指摘されています。
会社の将来は,上記のような点から予測するほかなく,現時点では構造改革真っ盛りであって,今後の成長は,本業である美容事業のキャッシュフローと,構造改革の結果によるというほかないのではないかなと思います。
何が失敗だったかといえば,買収する企業の稼ぐ力と,本業とのシナジーに対する検討が不十分なままM&Aを繰り返し,実態の乏しい負ののれんを計上したものの,翌期以降は実力通り赤字を出すことが多く,本体の実態資産が徐々に流出してしまったことが最大の理由であると思います。
原因はリンクに書かれている様に、
「負ののれん代」による見せかけの利益を、買収を繰り返すことによって積み上げたことでしょう。いずれは破綻することは、子供でも分かります。
それで大物経営者が3人も逃げ出したわけですが、事業の基本はコアコンピタンスです。つまり他には無いその企業のコアの部分です。それで差別化できるからこそ企業価値が上がります。
真っ当な経営者なら、コアビジネス以外を切り捨て、会社を縮小し、元々のスポーツアドバイザーに特化するでしょう。その時に支えてくれる銀行や出資者を引っ張って来れるか否かが社長の向かうところです。出来ない社長は、代わりを用意するしかありません。
これは実はライザップにとってはチャンスでもあります。ガラクタ企業を全部整理し、コアビジネスに小さくても良いから黒字を出せばいいのです。これで大義名分が保てます。出資者にも継続出資をお願いできます。社員も残ってくれます。
もうひとつの手は、スピンアウトでしょう。チカラある社員がスピンアウトして「ザイラップ」を立ち上げて成功則にのっとって、それこそ結果にコミットすれば、顧客は集まるでしょう。
やり方は無限にあります。
なぜかこの質問・回答が今日のダイジェストとしてサジェストされました。
あのあとRIZAPグループは、松本さんのアドバイスを(ある程度)真摯に受け止め、グループのスリム化(ダイエット)に舵を切りました。繰延税金資産を取り崩したり、多額の減損損失を計上したりと、膿を絞り出す期間をようやく乗り越え(おそらく)、進行期は黒字転換しています。継続企業の前提に関する重要な不確実性注記についても、取り下げられました。
過年度の有価証券報告書を大量に訂正するなど、直近第2四半期の決算はものすごく大変だったようです。経理や経営企画のみなさんは本当におつかれさまでした。
とはいえこれからどうなるかはまだわかりませんけど。
※※※※※ 2023.5.16 追記 ※※※※※
なぜかこの回答、定期的に読まれているみたいなんだけどどうしてなんだろう
きのう、2023年3月期の決算が出て、地獄的な赤字だったので記念に追記してみた笑
とはいえ、「chocoZAP(ちょこざっぷ)」への投資に関する費用を多く含むだろうから、これからどうなるかはまだわかりませんけど、と同じように結んでみます。
ビジネスモデルとして「ダイエット」に目を付けた点は新しいとも言えますが、ここ50年以上の日本で、さまざまなダイエット方法がブームとなっては消えていきました。これは料理のブームと同じで、ブームとなると似たような料理店が多数できては、飽きられて潰れていくのと同じです。
ブームとなって拡大傾向の時は、資金も集まり、経営状態は良くなりますが、急激に拡大した企業が店舗拡大以外で継続していくためには、それなりに健全なビジネスモデルが必要ですが、それが RIZAP にはなかったと言えます。
通常は、他業種に活路を見出したりします。RIAZP ではゴルフに事業を拡大することにより、事業の拡大を図ろうとしているようですが、果たしてダイエットと同じ手法がゴルフ好きの人達に受けるか、はなはだ疑問です。
浮き沈みの激しいダイエットという分野に乗り出した時点で、その将来の大幅赤字は決まっていたと思っていました。
特に RIZAP のダイエットは、何も新しいダイエット方法ではなく、運動による消費カロリーを増やす運動療法に、食事療法を組み合わせたもので、スポーツジムに専門の栄養士がサポートするだけの単純なダイエット方法です。このような新味のないダイエット方法では、既存のダイエット方法と効果は変わりなく、すぐに飽きられるのは自明の理だと思いますよ。
成功した理由は、派手なCMを多数打ったことですが、逆に多額の広告費はその経営にとって大きなマイナスとならざるをえません。しかし、派手なCM以外で事業を継続することができないのだから、麻薬のように多額の宣伝費を投入していく以外に道はないでしょう。
無理な拡業もありますが、元々のダイエットビジネスに関して言うと、
・従業員依存型のビジネスである、本質的な意味でダイエットに特殊性や強みなくコピーしやすいビジネス
・かつ、トレーナが流動性が高い連中で、同じようなビジネスの会社があればすぐとらばーゆする連中である
・元々立地的にも設備投資が少なくて済むビルのテナントにはいる形式であるためこれまた強豪が新規参入しやすい
どこが最大の赤字だったのか
他の回答者さんが言っているよう「負ののれん代」に頼りすぎた会計をしてたのが大きい理由だと思います。
株価上昇時点の決算報告書です。
これを参照すると2016→2017年の営業利益の上昇がいかにM&Aで賄われているかが分かります。身売りしたい会社にどれだけの買収理由があったのか、当時のインタビュー等を簡単に洗ってみましたが、正当性は感じられませんでした。
銀行とか証券会社とか周囲の悪い大人が、悪知恵入れたんじゃないですかねー。
組織のダイエットに失敗した。
ライザップが赤字 = ライザップの必要のない健康な社会はおそらくライザップが目指すものです。本望でしょう…
カルビーから引っ張った松本さんの使い方が悪かった。
これにより「真っ当な経営に舵を切るのは止めた。経営より古参が大事」と
いうメッセージを内外に発してしまった。多分本音だったでしょうけど。
リンク先の記事でも 三河屋 幾朗 (Ikuro Mikawaya)さんの回答 でも解かると思うのですが、会計上の利益と実際の現金収入の乖離=キャッシュフローを気にしなかった事が最大の失敗でしょうね。 経営のプロが3人も逃げ出した(匙を投げた)と言う事は、瀬戸社長がプロの提案に聞く耳を持たなかったのでしょう。
瀬戸社長に残された選択肢は不採算子会社の切り離しと採算部門だけでの出直しでしょうか。 でも、経営はプロに任せた方が良さそうです。
会社をお金で買ってしまったのが最大の失敗と思います。お金で買うべきは、買う会社に居る人材だと思います。
自分には経営の才能があると勘違いしている経営者が良くやる失敗。負債をどんどん増やして民事再生で手にした会社を手放すようになると思います。
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