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処遇改善で60歳以降の勤務継続率が59%→98%に
――シニア活躍推進について、これまで取り組んできた施策を教えてください。
菊岡大輔氏(以下、菊岡) 当社では60歳以上のいわゆるシニア層の活躍推進に力を入れています。2013年4月に65歳定年制を導入しましたが、この時は65歳定年でも、60歳以降の処遇は年収が3割ほどダウンするものでした。2015年4月には、65歳定年後の再雇用制度「アクティブ・エイジング制度」を導入し、70歳までの雇用継続を可能にしました。2022年4月には「60歳一律役職定年」の廃止とシニア社員の処遇改善を行い、65歳まで処遇をシームレスにしました。さらに2023年4月には「アクティブ・エイジング制度」の内容を改定。週4日勤務、月の給与20万円と一律だった内容を、週5日勤務も選択可能にし、報酬も職務に応じて最大35万円まで拡充するなど、働く日数と給与の選択肢を広げました。
――2022年4月に「60歳一律役職定年」の廃止とシニア社員の処遇改善を行い、賃金が低下しないようにしたわけですね。
菊岡 そうです。それまでは同じ業務を担っていても60歳になると処遇が低下していました。改定後は、同じ役割であれば同じ処遇を継続するようにしました。
――2013年4月に改正高齢者雇用安定法が施行され、65歳までの継続雇用制度が導入されました。法改正に合わせていち早く制度を変え、その後も段階的に制度を見直しています。相次いで制度変更を行ってきた背景にはどんな目的があったのですか。
菊岡 もちろん法改正に対して回答を出すという目的もありましたが、一番の目的は技術職を中心としたシニア人財のリテンション(引き留め)です。2013年以前の旧来の嘱託再雇用制度では60歳を迎えたら4割ぐらいが退職していました。技術キャリアが豊富で、高度のスキルを持ち、事業運営に必要な資格を持っている技術者の半分近くが流出してしまうのは、当社の事業にとって非常にマイナスでした。
一級建築士、一級建築施工管理技士といった資格を持つ高度な人財には会社に残ってもらいたい。会社に残って仕事をやってもらう以上は、モチベーションを上げてもらいたい。旧来の嘱託再雇用制度では、どうしても「自分はもう現役ではない」という意識になってしまいがちです。
そこで選択したのが65歳定年制の導入です。その効果はすぐに表れました。61歳以降も勤務を継続する人の割合は、2012年が58.9%だったのに対して、65歳定年制を導入した2013年は74.3%に跳ね上がりました。その後も増加し続け、2022年は98.4%となっています。今では60歳を過ぎてもほぼ全員が会社に残るようになりました。
――60歳を過ぎても給与が低下しないようにした2022年度は、第7次中期経営計画(2022年度~2026年度)がスタートした年でもあります。
菊岡 実は、第7次中期経営計画がスタートする前に社員アンケート調査を行っています。その中で7割近いシニア社員は、業務の大変さと給与が見合っていないと回答していました。仕事の負荷は下がっていないのに給与だけが下がる。そのような不満が多くありました。
経営側は、ここはシニア層に対して人的資本投資をすべきだと判断し、第7次中期経営計画のスタートに合わせてシームレスな処遇体系に変えることを決断しました。2022年度の賃上げはトータルで3.5%でしたが、そのうち1%をシニアの処遇改善の原資として使いました。シニアに積極的に投資し、パフォーマンスを上げていただきたいと考えたためです。
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