毎日、口にするモノなの
かつて「日本人は水と安全はタダだと思っている」と評された時代が懐かしい。今や各地の水源地では健康リスクの高い化学物質による汚染報告が相次ぎ、政府の対策も後手に回っている。日本の水道水に今、いったい何が起こっているのか。汚染現場の最新レポートをお届けする。 *** 世界広しといえど、飲用できる水道水を一般家庭へ供給できている国は、わずか11カ国しかないという。中でもトップクラスの安全性を誇る日本の水が、今や危機に瀕している。 元凶は「PFAS(ピーファス)」。約1万種あるとされる有機フッ素化合物の総称だが、もともと自然界には存在せず、分解されにくいため、「永遠の化学物質」とも呼ばれている。恐ろしいのは、水などを介して人体に取り込まれると、臓器などに蓄積されてしまうことだ。 WHOや米国の学会などでは、PFASがもたらす健康リスクとして、発がん性や高コレステロールを伴う脂質異常症、乳児・胎児の発育低下などが指摘されている。そんなPFASの中でも、特に有害性が高いとされるのは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS〈ピーフォス〉)と、ぺルフルオロオクタン酸(PFOA〈ピーフォア〉)と呼ばれる二つの化学物質。国際条約の規制対象で、日本でも輸入や製造が禁止となっているのだ。 深刻なのは、これらの化学物質が、全国各地の河川や地下水などの「水源地」で相次いで検出されていること。しかも、国の定める暫定目標値よりも、はるかに高い濃度で残留しているというのである。 全国各地に存在 ようやく政府も本腰を入れて対策に動き出し、6月20日には内閣府食品安全委員会の作業部会が、PFASにおける健康への影響について、初めて評価書の案を取りまとめた。同書では「動物実験によって出生児に低体重などの影響が認められる」とした上で、関係省庁に対して水道水におけるPFAS濃度の基準値策定を求めている。 その2日後、22日には、政府が全国規模では初の水道水におけるPFASの実態調査を、5月から始めていたことが報じられた。今秋をめどに、全国の自治体や水道事業者に対して回答するよう一斉に指示を出したという。 これまでも環境省はPFASの実態調査を全国の自治体と協力して行ってきたが、2022年の調査で対象となったのは、38都道府県に過ぎなかった。 「汚染ハザード」一覧マップは、「週刊新潮」が現時点で判明した最新の調査結果をもとに、国の暫定指針値を超える高濃度のPFASが検出された地点をまとめたもの。そこにあなたの住む街の名前がないからといって、安心するのは早計である。 国の一斉調査が進んでいけば、“ホットスポット”は増える可能性が高い。そして汚染地域には、ある「共通の特徴」が見られるというのだ。
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「週刊新潮」2024年7月4日号掲載
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