2019年8月20日火曜日

次世代無線LAN規格「Wi-Fi 6」(802.11ax)を知るための8つのFAQ

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次世代無線LAN規格「Wi-Fi 6」を知るための8つのFAQ

次世代Wi-Fi規格に対する業界の期待が高まり続けている。「Wi-Fi 6」はこれまでの流れを一変させると専門家が予想する中、知っておくべきことについて解説する。

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Wi-Fi 6は今までの無線LAN環境を一変させる
 「Wi-Fi 6」はWi-Fiの新規格だ。2019年1月時点でまだIEEE(米国電気電子学会)が正式に承認していないにもかかわらず、業界では既に盛んな宣伝が始まっている。そうした騒ぎはさておき、Wi-Fi 6には大きな期待が託されており、アナリストの予想では、この先何年もの間、無線LANを劇的に向上させる見通しだ。
 新規格に関心のある読者のために、よくある質問の一部を以下に紹介する。

802.11axとWi-Fi 6の違いは?

 大まかに言えば、「802.11ax」と「Wi-Fi 6」は同じ次世代無線LAN技術を指す。IEEEは2014年5月にこの規格を策定するための委員会を組織して以来、これを802.11 axと呼んできた。
 技術的には、802.11axがIEEE規格で定められた無線LAN技術を指す。一方のWi-Fi 6は、無線LANの標準化団体Wi-Fi Alliance(WFA)が認定した802.11ax対応の製品とネットワークを意味する。ただ、この2つの用語を混同して使うネットワーク専門家も増えている。
 WFAは業界標準やプロトコルに従った製品の認定を実施している団体で、これまでは「IEEE 802.11」という名称を採用してきた。だがWFAは2018年末、専門用語をユーザーに分かりやすいものにするため、無線LAN技術を世代で表現する新しい命名体系を導入した。
 WFAは現在、802.11axに準拠した製品をWi-Fi 6と呼んでいる。一方「802.11ac」製品は「Wi-Fi 5」、「802.11n」製品は「Wi-Fi 4」と呼ばれる。現在の市場ではあまり見掛けなくなった、それより前の世代のIEEE規格についても名称を変更し、「802.11g」は「Wi-Fi 3」に、「802.11a」は「Wi-Fi 2」に、「802.11b」は「Wi-Fi 1」になった。

Wi-Fi 6は802.11acよりも早い

802.11axは、その前の世代の802.11acや802.11nより高速で、安定してギガビットの壁を突破できる(最大通信速度が1Gbpsを超える)初の無線LAN規格としてアナリストに評価されている。さらに重要なことに、802.11axは強固になっただけでなく、よりスマートになった。「OFDMA」(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多重接続)という新機能のおかげで、アクセスポイント(AP)に同時接続できるクライアントの数が増える。
 独立系アナリストのジョン・フルーエ氏は次のように解説する。「これはデバイスとネットワーク間のルーティングの効率を高めることを意味する。つまり高速道路の速度制限を引き上げてより高速で走行できるようにするのではなく、車線数を増やして流量を増やすという改良だ」
 Wi-Fi 6機器が新規格に完全準拠するためには、機器が下り(APからクライアントへ)と上り(クライアントからAPへ)の両方でOFDMAを利用できるようにする必要がある。
 802.11acが5GHzの周波数帯のみを使用するのに対し、802.11ax機器は2.4GHzと5GHzの両方の周波数帯でデータを転送できる。これによりスループットが向上する。

IEEEが802.11axを承認する時期は?

 IEEEの予想では、2019年後半に802.11axを承認する見通しだ。802.11axの最初の2案が委員会で承認されなかったことから、このスケジュールはほぼ1年遅れとなっている。しかし同委員会は2018年7月の採決で案の第3版を通過させ、今は最終案を審議委員会であるIEEE Review Committee(RevCom)に提出する準備を進めている。RevComは提出された規格案を、最終的な判断を下すIEEE Standards Boardに推薦し、新規格として承認するか却下するかの判断を求める予定だ。最終的な投票は2019年12月に実施される見通し。
 WFAは、準拠製品を認定するためのWi-Fi 6認定プログラムを2019年末までに立ち上げる意向を示している。

アップグレードするのは早過ぎる?

 正式承認に向けた動きはゆっくりだが、同規格は十分安定しており、早くから採用しても問題はないと考える専門家が多数を占める。無線技術のアナリストでIEEEメンバーのクレイグ・マティアス氏は、ワイヤレス技術のコンサルティング企業Farpoint Groupの社長でもある。同氏は、承認前の規格を採用した機器も、承認後のファームウェアアップグレードによって、正式な規格への準拠が保証できると見積もっている。従って、現時点(2019年1月)で自信を持ってドラフト段階の802.11axに投資できると考えているという。
 ただしマティアス氏などの専門家は、「十分な数の802.11ax準拠製品が出荷されるまで、導入のメリットは最小限になるだろう」と指摘する。OFDMAでは次世代のAPとエンドユーザーデバイスの両方が必要とされる。もし不足した場合、APは後方互換モードに切り替わる。
 2018年の報告書の中で、金融情報会社IHS Markitのアナリストであるヨギタ・カネシンとクリスチャン・キムの両氏は予測を述べた。それによると、802.11ax準拠クライアントが大量に登場するのは2020年になるという。
 一方で調査会社ZK Researchの創業者で主席アナリストのゼウス・ケラバラ氏は次のように述べる。「高密度環境などのクリティカルな場面で使われるネットワークについては、より積極的なアプローチを検討すべきだ」
 「多くの点で、ネットワークはクライアントが導入されるよりも前に構築することが望ましい。苦情が相次ぎ、慌てて対処を迫られる事態は誰も望まないはずだ」(ケラバラ氏)

Wi-Fi 6の導入を検討すべき人は?

 OFDMAのおかげで、Wi-Fi 6はスタジアムや学校、会議場といった人が密集する場所でのネットワーク状況を一変させる可能性がある。そうした場所でのニーズに基づき、いち早く採用される公算が大きい。フルーエ氏によると、輻輳(ふくそう)の多発やトラフィック管理問題に直面しているネットワーク管理者は、まずアップグレードを検討する必要がある。
 「例えば多数のIoT機器を設置しているスマートビルディングなど、大量の無線機器が存在している場合は恩恵を受けられる。802.11axは仮想LANを分割し、トラフィック管理の向上につながるだろう」とフルーエ氏は語る。
 Wi-Fi 6には、「Target Wake Time」(TWT)という新機能も搭載される。この機能では、短時間のアクセス予定を組むことによって帯域幅とバッテリーの消費を抑え、IT機器のスリープ時間を増やすことができる。例えばWi-Fi 6のAPを使い、1日1回スマートサーモスタットの性能に関するデータを取得する設定にしておけば、24時間のうち23時間以上は低消費電力モードを保つことができる。TWTはモバイル端末でも利用できる。
 Wi-Fi 6では既存のインフラをそのまま活用できることから、「いずれは最も重要なIoT技術の一つになる」とマティアス氏は予想する。「新たに基地局やゲートウェイを用意する必要はなく、完全にネイティブなWi-Fi設備だけで環境を構築できる」(マティアス氏)
 本稿に登場したアナリストたちは、802.11nからのアップグレードを予定しているユーザーは、802.11acを飛ばして802.11axを採用すべきだとの見解で一致している。
 フルーエ氏は言う。「ここまで待って資本を節約してきた以上、今こそ802.11axへ移行して、次世代の波に乗るべき時だ」
 802.11nよりも古いネットワークについては、できるだけ早くアップグレードする必要があるとマティアス氏は述べる。802.11g、802.11a、802.11b機器は時代遅れとみなされるという。

Wi-Fi 6の導入が不要な人は?

 フルーエ氏の意見はこうだ。「802.11nおよび802.11acネットワークを低密度環境で運用している管理者は、接続問題がほとんど発生していなければ、802.11axの導入は必須ではない」
 WAN環境の管理者に対して、フルーエ氏は次のように促している。「例えばブランチオフィスとインターネット間が低速WANで接続されているとすれば、次世代Wi-Fiへのアップグレードは台無しになる。こうした可能性がないかどうか慎重に検討すべきだ」
 「802.11nまたは802.11acから802.11axにアップグレードする場合、もしWi-Fiの方がWANよりも速度が速ければ、WANがボトルネックになる。Wi-Fiがどれほど優れているかは問題にならない」(フルーエ氏)

Wi-Fi 6機器を提供するベンダーはどこ?

 Broadcom、Celeno、Intel、Marvell、Qualcomm、Quantennaの各半導体メーカーは、いずれも標準化前のWi-Fi 6チップセットを製造している。Aerohive Networks、Aruba Networks、Huaweiなど他のメーカー数社も、既にドラフト版のエンタープライズ級アクセスポイントを登場させている。

レガシークライアントでも利用できる?

 IEEEは802.11axについて、レガシークライアントとの完全な後方互換性をうたっている。だがネットワーク管理者は、全面的な導入に踏み切る前に、自分たちで適正評価を実施する必要がある。
 「一般的にわれわれは、この技術についてある程度の経験を積むために、例えば違うビルなどで限定的あるいは孤立的に試験導入することを勧めている。管理コンソールとの互換性を確認し、既存の802.11nおよび802.11acクライアントとの後方互換性を見極めなければならない」。マティアス氏はそう話している。

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