2020年9月7日月曜日

エンパグリフロジンがHFrEF患者に有効

https://medical-tribune.co.jp/news/2020/0904531568/

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 2020年09月04日 05:10
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イメージ画像© Getty Images designer491 ※画像はイメージです

 EMPEROR-Reduced*1試験は、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全(HFrEF)患者3,730例を対象に、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンが心血管および腎アウトカムを改善するかどうかを検討した国際共同二重盲検ランダム化比較試験。米・Baylor University Medical CenterのMilton Packer氏らは、心不全の標準治療にエンパグリフロジン1日1回10mg投与を上乗せした結果、糖尿病の有無にかかわらず腎機能低下が抑制され、心血管死または心不全による入院の複合リスクが低下したと欧州心臓病学会(ESC2020、8月29日~9月1日、ウェブ開催)で報告した。これらの結果はN Engl J Med2020年8月29日オンライン版)に同時掲載された。 

左室収縮機能障害がより高度な集団で評価

 2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬は心不全による入院リスクおよび重度の腎有害事象を軽減する。

 ESC2019で報告されたDAPA-HF試験*2では、糖尿病の有無にかかわらずダパグリフロジンのHFrEF治療薬としての有効性が示された(N Engl J Med 2019; 381: 1995-2008)。同試験の主な対象者は、軽度~中等度の左室収縮機能障害とN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)高値を示す患者である。

 一方、EMPEROR-Reduced試験では、左室収縮機能障害がより高度なHFrEF集団でエンパグリフロジンを評価した。直近12カ月間に心不全入院歴がある患者、またはLVEFが30%以下、31~35%、36~40%でNT-proBNP値がそれぞれ600pg/mL以上、1,000pg/mL以上、2,500pg/mL以上の患者を抽出し、心房細動患者のNT-proBNP閾値は2倍とした。

 対象は、2017年4月~19年11月に欧米や日本を含むアジアから登録された、心不全の標準治療を受けている18歳以上のHFrEF患者〔LVEF40%以下、ニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類Ⅱ~Ⅳ度〕3,730例。エンパグリフロジン(10mg/日)またはプラセボを追加投与する群にランダムに1:1で割り付けた。

 主要評価項目は、初回イベント発生までの心血管死または心不全による入院の複合とした。

心不全による入院リスク30%減

 エンパグリフロジン群1,863例とプラセボ群1,867例のベースラインの平均年齢は67.2歳と66.5歳。両群の背景因子は類似しており、女性が約24%、白人が約70%、黒人が約7%、アジア人が約18%であった。約半数に糖尿病歴があり、LVEF 30%以下が73%、NT-proBNP値1,000pg/mL以上が79%、推算糸球体濾過量(eGFR) 60mL/分/1.73m2未満が48%で、20%近くがアンジオテンシン受容体-ネプリライシン阻害薬を投与されていた。

 中央値16カ月の追跡期間中、主要評価項目である心血管死/心不全による入院は、エンパグリフロジン群361例(19.4%)とプラセボ群462例(24.7%)に発生し、エンパグリフロジン群ではプラセボ群に比べて25%リスクが低下した〔ハザード比(HR)0.75、95%CI 0.65~0.86、P<0.001〕。

 エンパグリフロジン群では心不全による入院総数(初回および再入院)が388件と、プラセボ群の553件に比べて30%減少した(HR 0.70、同0.58~0.85、P<0.001)。

重度の腎イベントとeGFR低下を抑制

 重度の腎イベント(慢性透析/腎移植/eGFR持続低下の複合)は、エンパグリフロジン群30例(1.6%)とプラセボ群58例(3.1%)に発生し、エンパグリフロジン群ではプラセボ群に比べてリスクが半減した(HR 0.50、95%CI 0.32~0.77、P<0.01)。

 二重盲検治療期間中のeGFR低下率は、エンパグリフロジン群ではプラセボ群に比べて有意に抑制された〔-0.55mL/分/1.73m2/年vs.-2.28mL/分/1.73m2/年、群間差1.73mL/分/1.73m2/年(95%CI 1.10〜2.37、 P<0.001〕。

 単純性尿路感染症は、エンパグリフロジン群で頻度がより高かったが(1.3%対0.4%)、低血糖、足切断および骨折の頻度は両群で差がなかった。今回の試験では、他の心不全治療薬で懸念される低血圧、体液減少、腎機能障害、徐脈、高カリウム血症などはエンパグリフロジン群で見られなかった。

HFrEFの新たな標準治療として有望

 以上の結果から、Packer氏らは「心不全の標準治療を受けているHFrEF患者において、エンパグリフロジンの上乗せは、糖尿病の有無にかかわらず、プラセボに比べて心血管死または心不全による入院の複合リスク低下および腎機能低下の抑制に関連していた」と結論した。

 また、同氏は「EMPEROR-Reduced試験はSGLT2阻害薬の有益性を、より重症度が高いが安定した高リスクの心不全患者に拡大し、腎アウトカムの改善を初めて示した。DAPA-HF試験と今回の試験のデータから、エンパグリフロジンとダパグリフロジンはHFrEF患者の新たな標準治療になると信じている」と述べた。

*1 EMPEROR-Reduced:Empagliflozin Outcome Trial in Patients with Chronic Heart Failure with Reduced Ejection Fraction

*2 DAPA-HF:Dapagliflozin and Prevention of Adverse‐Outcomes in Heart Failure

(坂田真子)


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