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久々に登場した「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」を詳しくレビューします。「GTX 1650」に、やや巨大なヒートシンクをドーンと取り付けただけの「完全ファンレス仕様」のグラボです。
完全無音で果たしてGTX 1650を冷やせるのか?、ゲーム性能や冷却性能を検証。
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スペックと仕様を解説:完全ファンレス仕様
「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」のスペック
「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」は、GTX 1650 4GBを搭載するローエンドクラスのグラフィックボードです。全長178 mm(約18 cm)のコンパクトなボード設計で、面積のほぼすべてがアルミニウム製ヒートシンクに覆われています。
「GTX 1650」のスペック比較 | ||
---|---|---|
GPU | Palit KalmX完全ファンレスモデル | Palit StormX OCシングルファンOCモデル |
世代 | Turing | |
プロセス | 12nm製造 : TSMC | |
トランジスタ数 | 47.0 億 | |
ダイサイズ | 200 mm2 | |
シェーダー数CPUのコア数に相当 | 896 | |
TMU数Texture Mapping Unitのこと | 56 | |
ROP数Render Output Unitのこと | 32 | |
演算ユニット数 | 14 | |
Tensorコア数機械学習向けの特化コア | – | |
RTコア数レイトレ用の特化コア | – | |
クロック周波数 | 1485 MHz | |
ブーストクロック | 1665 MHz | 1725 MHz |
VRAM容量 | 4 GB | |
VRAM規格 | GDDR5 | |
VRAMバス | 128 bit | |
VRAM帯域幅 | 128.0 GB/s | |
理論性能(FP32) | 5.967 TFLOPS | 6.182 TFLOPS |
TDP | 75 W | |
補助電源 | なし | |
MSRP | $ 149 | |
参考価格 | 19990 円 | 14820 円 |
同じくPalitが販売している、シングルファンモデル「GTX 1650 StormX OC」とスペックを比較してみました。基本的なスペックは同じで、ブーストクロック周波数が60 MHzだけ違います。
やはりファンがない分だけ、クロック周波数を上げにくくなっているようです。とはいえ1725 MHzと1665 MHzでは、約3.6%しか差がないので、おそらく体感はほぼ不可能な性能差でしょう。
わずかな性能低下を大幅に上回る「完全ファンレス仕様」というメリットが、KalmXには付いています。
外観とデザインをレビュー
パッケージングはひと目でファンレス仕様と分かるように、本体デザインを中央に据えたシンプルなデザインです。
スタンダードな見開き式のボックスをめくり上げると、Palit GeForce GTX 1650 KalmX本体が型抜きされた梱包材に収まっています。
ボードデザインは「完全ファンレス」です。PCB基板本体より1.9倍も巨大かつ、放熱が速いアルミニウム製ヒートシンクに覆われていて、見るからに放熱性はスゴそう。
ヒートシンクのフィン枚数は43枚、厚みは0.6 mmでした。ヒートシンクにGPUチップ本体の熱を運び出すのは、2本ある直径6 mmのヒートパイプです。
反対から観察すると、PCB基板からガッツリはみ出す巨大なヒートシンクがよく見えます。
ヒートシンクの厚みは38 mmで、2スロット占有です。TDPが75 WのGTX 1650に対しては、ものすごく分厚いヒートシンクと言えます。
インターフェイス(映像出力端子)はDisplay Port 1.4aが2つ、HDMI 2.0bが1つで、合計3つ実装されています。ローエンドクラスでありながら、DVI-Dなどレガシー端子を1つも実装していないのは珍しいです。
ヒートシンク中央にはめ込まれている、Palitのロゴが入った側板はシャンパンゴールド色で統一されていて、高級感を演出しています。
「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」の性能を検証
テスト環境
テスト環境「ちもろぐ専用ベンチ機」 | ||
---|---|---|
CPU | Core i9 9900K | |
CPUクーラー | 虎徹Mark II120 mm x2の中型空冷 | |
マザーボード | ASRock Z390 Phantom Gaming 6 | |
メモリ | DDR4-2666 8GB x2使用メモリ「G.Skill FlareX C14」 | |
グラフィックボード | Palit GeForce GTX 1650 KalmX | |
SSD | SATA 500GB使用SSD「Samsung 860 EVO」 | |
SATA 2TB使用SSD「Micron 1100」 | ||
電源ユニット | 1200 W(80+ Platnium)使用モデル「Toughpower iRGB PLUS」 | |
OS | Windows 10 Pro 64bit検証時のバージョンは「1903」 | |
ドライバ | NVIDIA 442.74 | |
ディスプレイ | 3840 x 2160@60 Hz使用モデル「BenQ EL2870U」 |
いつもどおり、ちもろぐ専用ベンチ機を使って「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」の性能をテストします。
CPUは現状もっともボトルネックが生じない、ゲーミング最強のCPU「Core i9 9900K」を軸に、適当なパーツを組み合わせたスペックです。メモリはDDR4-2666を合計16 GB搭載しています。
検証時に使ったグラフィックドライバは、NVIDIA GeForce Driver 442.74です。
データの比較について
今回のグラフィックボードレビューでは、価格帯の近いグラフィックボードとの比較データを掲載しません。
理由は、単に検証する時間がないからです。実はローエンドグラボを検証するのは約1年ぶりで、すでに持っているデータはすべて古い状態。よって検証し直す必要がありますが、その時間が取れない状況です。
3DMark FireStrike
3DMark FireStrike1920 x 1080 / Graphics Score |
DirectX11ベースのGPUベンチマーク「FireStrike」で基本的な性能をテスト。2019年5月に検証したGTX 1650よりスコアが高いのは、おそらくドライババージョンの違いが原因かもしれません。
3DMark TimeSpy
3DMark TimeSpy1920 x 1080 / Graphics Score |
DirectX12ベースの「TimeSpy」では、逆にスコアがやや大人しくなりました。
もっと他のグラフィックボードと、ベンチマークスコアの比較をしたい場合は↑こちらのグラボ性能まとめ表をどうぞ。
FINAL FANTASY 15
FINAL FANTASY XV : Benchmark1920 x 1080 / 高品質 |
重量級ゲームのFF15ベンチマークの結果は、きちんとGTX 1650らしい性能です。完全ファンレス仕様で、Radeon RX 570とほぼ同じ性能は素直にスゴいと思います。
フルHDゲーミングの性能
Palit GeForce GTX 1650 KalmX 1920 x 1080 / 最高設定 |
フルHDゲームを最高画質でプレイして、フレームレートを計測した結果をグラフにまとめました。さすがに最新ゲームを最高画質は、GTX 1650にとって荷が重すぎる様子です。
一方で、レインボーシックスシージやオーバーウォッチなど。FPSゲームでは意外と平均60 fps以上を出せます。設定を中程度に妥協すれば、ほとんどのゲームを快適にプレイ可能な性能です。
熱と消費電力を実測テスト
グラボ温度と実効クロック
フルHD向けのGPUベンチマーク「Unigine Heaven」を約90分、起動したまま放置して、グラボのGPU温度とGPUクロック周波数を記録しました。
結果をグラフにまとめると、典型的なサーマルスロットリングを観察できます。温度は82℃まで上昇し続け、GPUクロック周波数は1770 MHz前後です。やはりファンレス仕様だと、実効クロックはある程度妥協せざるを得ないでしょう。
消費電力を実測してチェック
電力ロガー機能の付いた電源ユニットを2つ使って、グラフィックボードの消費電力を実測します。CPUを1つの電源ユニットで給電し、その他のパーツは2つ目の電源ユニットで給電します。
検証の後、マザーボードからグラフィックボードを外した状態でベンチマークを実行して消費電力を計測し、求められた計測値を引き算してグラフィックボード単体の消費電力を求めました。
FF14ベンチマーク(フルHD)を実行中に計測した結果、Palit GTX 1650 KalmXの消費電力は55 W前後を記録。TDPの75 Wはあくまでも目安で、実際の消費電力は20 Wも低いです。
ファン動作音
冷却ファンが無いので、動作音は「無音」です。耳をヒートシンクに近づけても、コイル鳴きなど異音はまったく聞こえず、完全な無音動作を実現しています。
ケースファンを取り付けてみる
Palit GTX 1650 KalmXは、放熱性に優れた巨大ヒートシンクを装備しているので、ケースファンを取り付けてあげれば驚異的な冷却性能を発揮する可能性があります。実際に140 mmファンを取り付けて検証です。
なお、ファンを取り付ける前提の設計ではないので、完全に固定するなら結束バンドなどでグルグル巻きにする必要があります。今回の検証では、ファンをグラボに立てかける感じで取り付けました。
予想通り、ファンの効果は圧倒的です。温度は最大41℃に抑えられ、GPUクロック周波数は1905 MHz前後を維持します。
もっともな指摘ですね。
ではグラフィックボード本体から15 cm離れた位置に140 mmケースファンを設置し、吸気でエアフローを当てた状態で、Unigine Heavenを起動したまま約90分放置して検証を行いました。
ケースファン | なし | あり |
---|---|---|
GPU温度 | 83 ℃ | 48 ℃ |
温度差 | -35 ℃ | |
GPUクロック | 1770 MHz | 1890 MHz |
性能差 | +120 MHz |
依然としてファンの効果はてきめんです。アルミニウム製の巨大ヒートシンクの放熱性はものすごく優秀で、ファンが密着していなくても、余裕でGTX 1650を冷やし切ってくれます。
去年レビューした「Palit GeForce GTX 1650 StormX OC」では、GPU温度は69℃に達していました。対して、今回のKalmXはケースファンの風をゆるりと当てるだけで47℃に温度を抑えています。
GPUクロックも温度の低下に比例して改善し、ファンレス時の1770 MHzから約7%上昇して、1890 MHz前後で推移しました。エアフロー対策を施すだけで、実質オーバークロック状態です。
ヒートシンクの表面温度
Unigine Heavenで負荷を掛け、GPU温度がピークに達している状態をサーモグラフィーカメラで撮影してみた。ヒートシンクの表面温度は68~70℃前後で、全体的にまんべんなく熱が分散しています。
GPUチップが位置する場所は、他よりも温度が8℃ほど低いです。きちんと熱をヒートシンクに運び、効率よく冷やせている様子が分かります。
まとめ:無音でコンパクトなGTX 1650搭載グラボ
「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」の微妙なとこ
- 価格設定はやや高い
- 性能はやや控えめ
- シングルファンモデルより大きい
他のGTX 1650搭載モデルと比較すると、価格設定は4000~5000円高いです。そしてファンレス仕様ゆえに、ブーストクロックを控えめに設定してあるため、性能もGTX 1650としては平均的。
コンパクトなサイズもシングルファンモデルと比較してしまうと、割と大きい方です。「完全ファンレス仕様」にどこまで価値を感じるかどうかが、評価の分かれ目になるのは間違いないでしょう。
「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」の良いところ
- 常に「無音」で動作
- 放熱性に優れた巨大ヒートシンク
- フルHDゲーミングに耐える性能
- ワットパフォーマンスが高い
- エアフロー次第では猛烈に冷える
- オーバークロックの余地あり
- シャンパンゴールドの高級感あるデザイン
完全に「無音」で動作し、RX 570に相当するGTX 1650らしいサイレントでパワフルな性能こそ、Palit GeForce GTX 1650 KalmX最大のメリットです。
記事を書いた時点では、Palit GeForce GTX 1650 KalmXより高性能な完全ファンレスモデルはまだ存在しないため、高性能なファンレスグラボなら選択肢は実質一択といえます。
そして、巨大なアルミニウム製ヒートシンクの放熱性は非常に優秀です。ケースファンからエアフローを少し当てるだけで、GPU温度がガクッと冷え、クロック周波数は100 MHz単位で上昇します。
適切なエアフローを整備するだけで、実質的なオーバークロックが可能です。ヒートシンクの直下に1000円くらいのケースファンを配置し、吸気にして外気が当たるようにすると、無音 & 高性能を狙えます。
「Palit GTX 1650 KalmX」は、完全無音でフルHDゲーミングがそこそこプレイできる、極めて貴重なグラフィックボードです。サイレントなゲーミングPCを自作するなら、イチオシNo.1グラボです。
と言っても、他にマトモな無音グラフィックボードはほとんど無いのが現実だったり。無音グラボをお探しなら、結局は「Palit GeForce GTX 1650 KalmX」に行き着くと思います。
以上「Palit GeForce GTX 1650 KalmXをレビュー:完全ファンレスで無音動作のグラボ」でした。
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