がんや感染症などさまざまな病気の治療薬候補となる化合物を、従来の手法より大幅に速く予測できる人工知能(AI)を開発したと、九州大の中山敬一主幹教授(分子生物学)らのチームが発表した。このAIで見つけた化合物は実際に新型コロナウイルスを減らし、がんの悪性化に関わるたんぱく質の働きを抑えたという。専門家による査読を受ける前の論文を27日に公開した。 薬のほとんどは、病気の原因となるたんぱく質と結合することで効果を発揮する。たんぱく質の立体構造をもとに、結合しやすい化合物を予測するシミュレーションが創薬に使われているが、計算量が膨大で時間がかかるのが難点だった。 このAIでは、たんぱく質と化合物のペア100万組以上の結合力などのデータを学習させ、立体構造の情報を全く使わず、たんぱく質のアミノ酸配列だけで化合物の「薬としての有望さ」をパソコンではじき出せるようにした。同じ時間で判定できる化合物の数は従来の数千倍になり、立体構造が未知のたんぱく質でも予測できる。 チームは、このAIで約1万種類の既存薬の中から見いだした承認済みの緑内障治療薬エトキシゾラミドが新型コロナウイルスの増殖を抑えることを実験で確認。約10億種類から絞り込んだ化合物が、がんの悪性化に関わるPPATというたんぱく質の働きを阻害することも実験で確かめた。中山教授は「あらゆる病気に対する薬の候補を速く安く予測できることを実証した。薬の開発速度が飛躍的に上がることが期待される」と話す。(安田朋起)
朝日新聞社
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