https://news.yahoo.co.jp/articles/469bc5ec660f33d49cfde03b9b69b45a06386c50
シェアしました。
コロナ初期に“実戦投入”遠隔診察ロボを体“
北京で開かれた「国際サービス貿易展」に登場した最新医療機器の数々。中には中国で新型コロナの感染が拡がった初期に“実戦投入”された遠隔治療のシステムもあった。中国での感染拡大初期には医師の数が足らず、また都市封鎖されていた武漢では、医療関係者の感染も相次いでいたことから、医師が遠隔診療を行える機器が急いで投入されたのだった。 記者が実際に試してみると…離れた病院にいる医療関係者が操作するロボットアームが振り下ろされてきた。のどをエコー検査するはずが最初はなぜか肋骨あたりをグリグリ。痛くて恐怖を覚えたが最終的には喉の表面をエコー検査のレバーが滑っていく。少し力加減を間違えて振り下ろせば簡単にのどが潰されてしまうだろうに、どうやって力加減を調整しているのか。
無人化・非接触加速…PCR検査も無人で
検査が終わると携帯に1~2分で結果が送られてきた。エコーの写真と共に「異常なし」。コロナ感染拡大期には武漢に入らずに検査できるため接触を避ける用途で使われたが、中国の山間部など医師や病院が足らない地域への活用が期待されているという。 さらに「世界初」という「鼻PCR検査ロボット」も展示されていた。AIが検査対象者の鼻の穴の形を認知し、ロボットアームが鼻に検査棒を突っ込む。ただでさえ痛いのに、ロボットに容赦無く突っ込まれたらどうなるのか…。来年の北京冬期五輪で海外から多くの人が中国を訪れると見込まれる中、水際対策への導入もささやかれるが人の手で行うのにくらべて時間が掛かりすぎるとの指摘もある。
世界最初のパンデミック経験で…ポストコロナ医療で先行目指す
世界で初めて新型コロナの脅威を体験した中国、この未知のウイルスに対抗するために中国ではそのパンデミックの初期に様々な機具やサービスがお試しで導入された。 もちろん、この時世界はまだこの新型コロナの本当の恐ろしさを実感していなかったため、外から見ると「一風変わった」あるいは「ヘンテコな」アイデアに映り、実際私たちもそのようなトーンで報道していた。 ドローンで上空からマスクをつけていない人を見張り、上空から注意を与えている様子や、商店がお釣りを直接手渡すことを避け、クレーンのような道具を使ったりしている様子もそうだっただろう。 その当時、掃除ロボットを改良して使われ出した自動消毒ロボットもその一つ。都市閉鎖で市民の外出が禁じられた街や建物を自分で勝手に走り回り、消毒して回るロボットだ。 しかし、ことし9月にロボットの展示会にいってみると、当時は奇抜に見えた自走消毒ロボットの最新モデルが会場のあちこちを走り回っていた。 連続8時間、建物を自動で走り回って消毒するロボットなど新モデルが続々と登場。いまやロボット商品のジャンルの一つとして立派に市民権を得ていたのが感慨深かった。
ワクチン年間生産90億本PCR1400円 物量で制圧目指す
新型コロナパンデミックははからずも各国の医療の力量と知恵を試す機会にもなった。各国がいかに自国の国情にあったコロナ対策を取れるか、がその後の結果を左右した。 中国が当初、とったアプローチは、世界の工場としての生産力や技術力を生かして、膨大なモノ、人、金をつぎ込む“物量の医療”。 政府が開発を強力に後押ししてきた国産ワクチンは、年間生産能力は年末までにおよそ90億回分に達するとみられる。またPCR検査キットも1日2600万回分の生産能力を確保。1回あたりの検査費も日本円で1400円程度と低く抑えられている。 また中国政府は遠隔診療などをめぐる規制も緩和。世界で最初に新型コロナのパンデミックに見舞われたことを逆手に、ポストコロナ医療で世界をリードしようとの野心も伺える。
オフィスに白衣姿ずらり…約170円でチャット診察
上海市内に本社がある医療関連会社「平安健康」のオフィスを訪ねると、部屋には異様な光景が広がっていた。ずらっと机を並べた50人ほどの白衣姿の医師たちが脇目もふらずにPC画面に話しかけていたのだ オフィスの天井からは「内科」「中医科(漢方医)」などの看板が下がっている。総合病院のようにそれぞれの専門医が、オフィス内の様々な場所に固まって診療科を構成しているのだ。医師たちのスペースは机一つにPC一台、それぞれの病院の診療室よりははるかに少ないスペースで済む。3交代24時間体制でオンライン診療にあたっているという。 文字によるチャットのみの診療なら15分9.9元(約170円)。音声付きは20分46元(約800円)。テレビ電話は20分59元(約1000円)と細かく設定されていた。
BOX診療所も登場…医師4万人とマッチング
さらに専用のBOX型診療所も登場。一見、プリクラか3分間写真に見えなくもないが、扉には「問診室」の文字。中はイスに座って画面に向い写真撮影ならぬ診察を受けられる作りになっている。 最初はAIの医師が患者から症状のほか、年齢や性別など基本的な情報を聞き取る。試しに「胃が痛い」との症状を訴えると、その後も性別や年齢など基本的な情報を聞いてきた。 さて、基本情報を聞き取ると登場したのは本物の医師。と、いっても画面越し、しかもチャットのみだが。医師の経歴を見ると胃腸炎などを専門としていて、所属は寧夏回族自治区の銀川市の病院とある。上海からは1600キロ以上離れている。 彼は症状などAIに答えた基本情報を元に、この会社が抱える医師たちの中からマッチングされた医師だった。この会社にはおよそ2000人の社員医師に加え3万8000人の社外医師も登録。合計約4万人の医師を確保している。 医師とのやりとりが10分ほど続いた後、症状の解説があり、その後「電子処方箋」なるものが画面に表示された。胃薬の一つを奨めていて、飲み方などの注意を記載しているのはやはり上海から1600キロ離れた成都の医療機関に所属する薬剤師。 BOX診療所には薬の自販機も併設されていて、奨められた薬の在庫があればそのまま購入することができる。また、無い場合には自宅に宅配される仕組みにもなっている。 現在、この会社のオンライン診断を利用できるアプリのユーザーは累計4億人。新型コロナの前に比べ10倍に急増したという。 「(コロナ拡大で)みんな外出を恐れて病院での感染リスクもあるので、公共の場所でみなに大きな利便を提供できた。」 こう語った「平安健康」の担当者は、今後、海外への事業展開にも意欲をみせる。 「こうした事業はいま大きく注目され政府の政策も有利に作用している。業界の発展より政府の政策が先行していて日の出の勢いの産業になっている。我々は人々が診察を選ぶ「新常態」となっている。」 「患者の脈を取る」ことから始まる東洋医学の本場、中国。医師に直接見てもらうために北京市内のやや大きめの病院の前には、朝から患者たちが長蛇の列を作っているのが常だった。政府が強力に後押しする遠隔診療も都市部で急拡大する一方、伝統的な医療が好まれる農村部ではせっかく配備された高価な機器が殆ど使われないまま放置されているものもあるという。ポストコロナの医療の姿は…14億人規模の壮大な実験の成否は、日本の医療の未来を占う上でも多くの教訓を提示してくれそうだ。 NNN中国総局 富田 徹 NNN上海支局 長谷川敬典
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
https://news.yahoo.co.jp/byline/takizawayoriko/20190826-00139865
中国の保険会社による無人診断ボックス 注目すべきは生活への総合的な貢献
中国の大手保険会社「平安保険」はデジタルを使い、顧客の生活への総合的な貢献に注力することで伸びている会社である。
その平安保険が提供する無人診療所「一分鐘診所(ワンミニッツクリニック)」に実際に行ってみた。
無人診療所「一分鐘診所(ワンミニッツクリニック)」を体験してわかった目論見と課題
2019年7月に、上海交通大学内に設置された無人診療所「一分鐘診所(ワンミニッツクリニック)」を訪れた。「診療所」というより「ボックス」という方がしっくりくるたたずまいである。すぐ横には薬の自販機が併設されている。
中は一畳ほどの広さで、椅子とモニター、血圧測定器が設置されている。
モニターをタップし診断を開始すると、年齢、性別などの基本情報のあと症状を聞かれた。
筆者の予想に反して、やりとりはチャットのみであり、また音声入力がデフォルト設定となっていた。キーボードでの入力も試みたものの、ピンイン入力(中国語の入力方式)での漢字変換ができず、実質的に使えない状態であった。
「お腹が痛い」という設定で診断を行なったものの、使い勝手はあまり良いとは言えなかった。
筆者の中国語力の問題もあってか音声入力がなかなかスムーズにできなかったこと、「お腹の痛い部分の写真を撮って送って欲しい」などの回答が難しい質問がなされて戸惑っていたこと、また一問一問に対する医師側の返答が遅かったことから(一度回答を送ると返信までに1分程度を要した)、なかなか診断が進まず診断完了までに20分以上を要した。
一分鐘(ワンミニッツ)と銘打たれているため、当初は一分で診断まで終わるような印象を受けたが、この「一分」というのは「一つの返答が来るまでに一分かかる」という意味なのだろうか。片手間で、スマホ上のアプリで行うのであれば問題にならないスピード感かもしれないが、わざわざボックスに入ってまで行うには、じれったいスピード感であった。
同様のサービスはスマホアプリでも提供されているため、このボックスは平安保険およびそのサービスの認知を取るという目的が大きいと考えられる。
特に上海交通大学のような名門大学であれば、若くてデジタルリテラシがあり、かつ今後比較的高額な保険商品を検討し得る、質の高いユーザの獲得にもつながりやすいだろう。
筆者が使用した際にはあまりにも使い勝手が悪かったため、逆効果にならないだろうか少し心配にもなったが、同時に「不十分なものでもまずリリースしてみる」という姿勢も中国ならではとも感じた。
すでに2019年2月時点で中国8つの省や直轄市に約1,000台導入され、利用者は300万人に上っているという。企業や大規模「社区」、ドラッグストアチェーン、高速道路のサービスエリアなどに設置されており、最近は大学が新たな設置場所と位置付けられつつあるようだ。(参考記事:「平安好医生」:無人診療所「ワンミニッツ・クリニック」の利用者が300万人を突破)
ちなみに後日、スマホアプリから同様の機能を利用したところ、テキスト入力もでき、また医師からの各質問に対して回答文面の例が表示されタップで次々質問に回答できたため、回答が非常に迅速かつ楽であった。
また、回答してもらう医師を選ぶことができるなど、ボックスでは使えなかった機能がいくつか存在していた。
最終的に処方箋を出してもらうことができ、その場でスマホ決済を行い、自宅まで届けてもらえることを確認できた。
日本でのオンライン診療:少しずつ規制緩和が進むものの実施は限定的
日本でも現在はオンライン診療が認められているが、初回は対面で受診することや、同一医師に限定した受診が原則となっている。また保険適用の対象も高血圧や糖尿病など慢性疾患に限定されている状態だ。
平安保険のサービスで提供されているようなチャットのみでの処方や薬を直接自宅に配送する行為も、現在は禁止されている。(これらの規制については、リスクが低くまた必要な人が使いやすいものとなるよう、徐々に厚生労働省主導で見直しがなされている。)
そのような中、このような中国の取り組みを紹介すると、「日本とは法規制が異なるからできる」「日本では規制緩和が難しいからできない」などの議論が持ち出されがちだ。
確かにそのような側面はある。しかし、その話をしたところで何も得られない。また日本にそのまま移植することが良いとも限らない。今ここで着目すべきは、「日本がこれをできない理由」ではなく、この事例から何を学べるか、ということではないだろうか。
参考にすべきは、高頻度で接点を取りユーザの生活に寄り添っていること
この事例の肝は単発のサービス内容ではないと筆者は考えている。
注目すべきは平安保険が、「モノ(保険)を売って売り上げを立てる」のではなく、「長期でコト(顧客体験)を提供し、平安保険を好きでいつづけてもらうこと」を重視する戦略を実行できている点だ。
伝統的な保険ビジネスは、ユーザと「保険の契約」「保険の受け取り」という1-2回程度の接点しかないことも往々にしてあり得る。
そんな中、平安保険は高頻度で顧客接点を持つ生活サービスを提供している。先にご紹介した「医師による無料問診サービス」もその一つだ。
その他にも、平安保険は、個別医師の診療予約サービス、毎日の歩数に合わせてポイントがもらえるサービス(ポイント交換のためにはアプリを開く必要がある)など、多種多様な健康関連サービスを提供している。
単発接点になってしまいがちな保険という商品の提供だけではなく、日常的に使える健康関連サービスをいくつも提供しているのだ。
無料もしくは安価にこれらのサービスを提供することにより、ユーザの平安保険に対する信頼やロイヤリティは高まり、平安保険側はサービス利用状況からユーザの状態を把握することができる。
それによって新たな保険商品の提案や見直しの提案をユーザの必要なタイミングで行うことができるというわけだ。
ユーザとしても、信頼している平安保険から自分の状況を踏まえた適切な提案をされるため、さらに平安保険へのロイヤリティは高まっていく。
あるユーザからは「私は平安保険が好きなんです、だって私の生活を支えてくれるんですから」と言われるまでの存在にまでもなっているという。日本の保険会社ではなかなか見られない状態ではないだろうか。
(参考記事:「顧客に信頼される」が最優先、徹底的な顧客志向で成功する中国「平安保険」の戦略【前編】)
伝統産業、大企業だからこその進化の可能性
「人々の不安やリスクを少なくする」という性質をもつ商品である保険を売るのが、伝統的な保険会社だろう。保険商品の販売だけではなく、人々の健康を促進したり不安を取り去るこのような健康関連サービスを提供することは、その本分の考え方とも親和性が高いだろう。
本論の「オンライン診断」領域の話に立ち戻ると、日本においてはオンライン診断領域はベンチャー企業の参入が盛んだが、保険事業を行う企業にこそ、シナジーがある分野だと考えられる。
またこのような大規模に医者を取りまとめ、無料で診断を提供することができるのも、信頼と体力がある大企業ならではではないだろうか。
平安保険の事例は、デジタル時代における伝統的産業、大企業のあり方の良い例となるだろう。今後の展開にも注目だ。
株式会社hoppin 代表取締役 CEO。東京大学卒業後、株式会社ビービットにてUXコンサルタント。上海オフィスの立ち上げも経験。その後、上海のデジタルマーケティングの会社、東京にてスタートアップを経て、中国ビジネス視察ツアー(休止中)、中国に学ぶUX研修/講演/勉強会、中国市場リサーチ、UXコンサルティングなどを実施する株式会社hoppinを創業。神楽坂とワインとももクロとモノを書くのが好き。アドベンチャーガール。
0 コメント:
コメントを投稿