2023年5月15日月曜日

弁護士費用、相場は70万~100万円→本人訴訟&AIでほぼゼロ? 答弁書の自動生成システム、開発者に聞いた。

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2023年05月14日 18:40  まいどなニュース

まいどなニュース

裁判で弁護士に頼めない人は意外と多いといいます ※臥像はイメージです(琢也 栂/stock.adobe.com)

民事訴訟の原告・被告、どちらの立場になっても、まず立ちはだかる壁が書面の準備。現状では弁護士や司法書士に依頼せざるを得ないことが多く、費用面で高いハードルになっているという。このハードルを下げようと、AI(人工知能)を活用して、質問に答えるだけで答弁書や準備書面を自動生成し、本人訴訟がやりやすくなるシステムを開発している人物がいる。株式会社Web staff代表取締役の吉永安智さんに詳細を聞いた。

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相場は70万~100万円…弁護士費用の壁

「本人訴訟とは、簡単にいえば、弁護士や司法書士に頼らず自分で裁判を行うことです」

そう語るのは、株式会社Web staff代表取締役の吉永安智さん。

たとえば離婚に伴う養育費の支払いを求める訴訟では、原告は訴状、被告は訴状に対する反論として答弁書を用意する。だが、裁判とは無縁に過ごしている一般人が簡単に書けるものではない。弁護士や司法書士に頼むと費用がかかるうえ、代理人を依頼した場合、費用の相場は70万~100万円ともいわれる。

「書面を自分で用意して本人訴訟ができれば、そういった問題に悩む人が減るはずです」

吉永さんは、その書面をAIに生成させるシステムを開発中で、年内には無料提供を始めたいという。

AIに書面を生成させるとは、具体的にどのようなシステムなのだろう。

「自分たちがAIでやろうとしてることは、現段階では答弁書です。すなわち、AIに訴状を読み込ませて反論を作成します。理由は大きくふたつがありまして、ひとつは反論文には、前提として訴状があるわけですよね。訴状に対してAIに答えを求めると、かなり具体的に答えてくれるんです」

AIに対して、素材を明確に与えることが大事だという。

「訴状はルールに沿って書かれてあるので、素材にしやすい。だから、現段階では答弁書の完成度を高める調整を行っています」

AIが生成した答弁書を裁判所へ提出するか否かは、当人の判断に委ねられる。

じつは吉永さんは、民事訴訟の被告になった経験がある。

「ある日突然、自分に非がないはずのことで訴状が届く。その瞬間の心理は、実際に経験しないと分からないでしょうね」

答弁書の自動生成を無料で提供しようというのも、かつて「訴えられて、誰からも助けてもらえない状況」に置かれた経験から、今の世の中に必要と痛感したからだ。吉永さんは弁護士を付けず1人で裁判に臨んだが、1人で戦えない人のほうが圧倒的に多いともいう。

「裁判を通してそれが分かったし、まだ世の中にないシステムなので、自分で開発しようと思ったのです」

無資格で法律事務を行う非弁行為にあたらないか?

吉永さんはWEB上で「本人訴訟オンラインサロン」を立ち上げて、会費ひと月2000円で会員を募った。これから民事訴訟を起こそうとしている人、すでに訴訟を起こした人、訴えられている人など、様々な人が参加しているという。会員数はまだ100人に満たないが、20代~50代の男女で、家庭をもっている社会人が多いそうだ。サロンでは裁判に関して、会員どうしでアドバイスしあう関係ができている。

ここで、ひとつの疑問が湧く。AIが書面を生成するサービスや会費制のサロンは、非弁行為にあたらないか?

非弁行為とは、弁護士の資格をもっていない者が、報酬を得る目的で、弁護士だけに認められている行為を行うことを指す。

   ◇   ◇

【弁護士法第72条】弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

   ◇   ◇ 

これに対して、吉永さんは「非弁行為にはあたりません」と、はっきり否定する。

「オンラインサロンは場を提供しているだけです。非弁行為のいちばんの問題点は、弁護士資格をもっていない者が弁護士の業務を、報酬を得て行うことです。本人訴訟オンラインサロンは、個人の相談には対応しません。しかし、ノウハウは載せています。これは書籍と同じ考え方です。法律の本を出すのに、弁護士以外の人が出しても違法ではありません。また、セミナーや勉強会を有料で開く場合でも、講師が弁護士である必要はありません。ですから、自分たちがやっていることはノウハウの提供で、サロンの会員どうしでアドバイスしあう場です。個人を相手に法律相談をやったり、業務として書類をつくったりするわけでもありません」

もちろん、吉永さんが法律相談をやるわけでもない。会員どうしのアドバイスも、法的なアドバイスはNGだという。

「書面に対して、この書き方は弱いとか、こんな反論が来るからこう書いておいたほうがいいというような、文章に対してのアドバイスに限定しています」

本人訴訟オンラインサロンの監修をしている元弁護士A氏にもコメントを求めた。A氏の弁護士歴は10年。一般民事から企業法務まで、幅広い業務を経験したとのこと。

「オンラインサロンでの交流の場は、サロンへの投稿やシステムを利用した結果について、会員同士で話し合う場となっております。法的なアドバイスは禁止されており、会員間では金銭のやり取りもありません。そのため、現状のサービスにおいて非弁行為の問題はないものと考えております」

法曹界との共存を目指す

AIによる答弁書や準備書面の生成と本人訴訟オンラインサロンについて、これからの課題を聞いた。

「サービスを提供すること自体は、難しくないと考えています。最大の課題は法曹界への影響です。開発の時点から、当プロジェクトはAIと弁護士との共存を考えています。将来、AIの参入は法曹界に大きな影響が起こり得ると予想しています。近々、弁護士会へのアプローチも考えています」

本格稼働すれば、書面の生成だけでなく、提出すべき証拠一覧とその理由、相手(原告)からの反論予想、準備書面を提出した後に裁判所から詳細な説明を求められる項目の予想なども、AIがアウトプットしてくれるという。

ある日突然「被告」の立場に立たされて孤軍奮闘を強いられる人の希望に繋がるか、今後に注目したい。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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