オーストラリアの研究チームは、使用済みのコーヒーを原料とするバイオ炭を開発し、このバイオ炭を用いてコンクリートの強度を約30%向上することに成功した。貴重な資源になりつつある砂の代替品として、有機性廃棄物を利用できる可能性がある。研究成果は『Journal of Cleaner Production』誌に2023年7月28日付で公開されている。
有機性廃棄物の処理は、メタンや二酸化炭素などの温室効果ガスの発生を伴うため、環境上の課題になっている。有機性廃棄物である使用済みコーヒーは、世界全体で年間100億キログラムが発生しており大きな問題だ。
ロイヤルメルボルン工科(RMIT)大学の研究チームは、コーヒーかすを熱分解して新規のバイオ炭を開発。このバイオ炭を混ぜてコンクリートを作ると、強度は30%向上した。熱分解とは、有機化合物を酸素のない環境で加熱し分解する化学反応だ。
研究チームによると、コンクリート業界は使用済みコーヒーかすのような有機廃棄物のリサイクル率向上に大きく貢献できる可能性を秘めているという。また現在コンクリートの材料として用いられている砂の代わりにコーヒーかすバイオ炭を使用することで、貴重な天然資源である砂も保護できる。
コンクリートの需要は急速に増加しており、世界中の河川敷や土手などから天然砂が採取され続けている。毎年500億トンの天然砂が、建築物のために使用されているという。研究チームのMohammad Saberian博士は、建設業界はその持続可能性を確保するために代替原料を探求する必要があると述べている。
研究チームはこれまでに、木材、食品廃棄物、農業廃棄物、都市型固形廃棄物などさまざまな有機廃棄物から、コンクリートの材料として活用できるバイオ炭を開発してきた。有機廃棄物の処理問題に取り組んでいるいくつかの協議会は、すでにコーヒーかす以外の有機廃棄物を原料としたバイオ炭を利用するインフラプロジェクトを計画しており、コーヒーかすを利用した研究にも関心を示している。
研究チームは、今後コーヒーかすバイオ炭の実用化に向けて実地試験に取り組む予定だ。さらに、研究を発展させるために、さまざまな産業界と協力したいと考えている。
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