https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/202310/581543.html
LDL-C 140mg/dL以上、小学4年生の約5%が該当
LDLコレステロール(LDL-C)の高い期間が長いほど、動脈硬化のリスクが高まるとされる。LDL-C高値を示す児童の拾い上げを主な目的として、香川県は毎年、県内の小学4年生約8000人を対象に血液検査を実施している。小児生活習慣病予防健診の一環で、これにより、年に10人以上の児童で家族性高コレステロール血症(FH)が見つかっている。
FHは血中LDL-Cの代謝に関わるLDL受容体などに変異が見られる遺伝性疾患で、ヘテロ接合体の患者は200~300人に1人の頻度で存在するといわれている。出生時からLDL-Cが高い状態にさらされるFHでは、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の発症リスクが高まる。未治療の場合、健常人よりも平均15年ほど短命だといわれるが、「小児期に拾い上げて、食事療法や薬物療法を適切に行えば、予後を劇的に改善できる」と、香川大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科学教授の南野哲男氏は語る。
しかし、国内でのFHの推定診断率は1%未満と極めて低い。特に小児では、アキレス腱肥厚や黄色腫といった身体所見に乏しい上、血液検査を行う機会が少ないため、診断はより困難となる。
このような背景から、香川県では2012年以降、南野氏主導の下、県内の小学4年生に血液検査を実施している。対象となるのは毎年8000人程度で、実施率は95%程度と非常に高い。同健診では、高LDL-C血症の定義に当てはまるLDL-C 140mg/dL以上の児童を拾い上げ、地域の医療機関への受診勧奨を行う。受診先でFHが疑われた場合、児童は県内の基幹病院に紹介となり、十分な倫理的配慮の下、遺伝子検査が実施される。
同健診でLDL-C 140mg/dL以上に該当する児童は全体の5%程度(図1)。この中から毎年10人以上でFHが見つかるという。「FHの発症頻度を考えると、大まかな診断率は3割程度になる。国内での推定診断率とされる1%と比較して、非常に高い値と言えるだろう」と、南野氏は同取り組みの成果を強調する。
さらに、南野氏は「児童のFHを拾い上げることにより、親をはじめとした親族での発見にもつながっている」と話す。常染色体顕性遺伝の形式を取るFHでは、子がヘテロ接合体の場合、少なくとも両親のいずれかがFHとなるからだ。「小学4年生の親は40歳前後が多く、未治療のFH患者であれば冠動脈疾患を発症し始める頃。この年代での治療介入はとても重要だ」と南野氏は説明する。
「小児期におけるFHの診断および介入は、ASCVDの発症抑制につながることを踏まえると、医療経済的にも有用と考えられる」(南野氏)。2020年に閣議決定された循環器病対策推進基本計画においても、小児期・若年期から配慮が必要な疾患としてFHが挙げられており、学校健診などによる早期発見を推進すべきであるとされている。現在、このような香川県の取り組みは、静岡県掛川市など他の自治体にも広まりつつあるという。
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