https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02011/102000021/
環状4号の工事で、JR品川駅構内の20以上の線路をまたぐ橋梁を構築する。都心部では珍しい国内最大級の1600t吊りクローラークレーンを採用。架設ブロックの大型化で夜間の線路閉鎖の回数を減らし、安全性と施工性を向上させた。
JR品川駅構内で終電後の午前1時30分過ぎ、超大型の1600t吊りクローラークレーンが長さ120mのブームをゆっくりと旋回し始めた。あらかじめ吊り上げた橋脚のブロックを、複数の線路をまたいで100m以上離れた施工箇所に設置。ブロックを据え付け、午前3時前にブームを元の位置に戻した。
延長約30kmの都市計画道路である環状4号の延伸工事の現場だ。未開通の白金台─港南間の約2.1kmのうち、国道15号(第一京浜)と海側の旧海岸通りを結ぶ約700mの延伸部に、品川駅上空を通過する道路橋を構築する。
線路横断部を中心とする延長310mの範囲については、JR東日本が東京都から委託を受けて整備している。橋脚8基(P3―P10)を構築した上に、鋼床版連続箱桁を架ける。施工者は鹿島。工期は2021年3月から28年3月までの予定だ。
現場は、山手線や京浜東北線、電車車両基地など20以上の線路をまたぐ。線路直上部を含むP7─P10間の桁はクレーンで、線路敷地上空にある残りのP4─P7間の桁は送り出してそれぞれ架設。線路間のP6とP7の橋脚も複数のブロックに分割し、クレーンで据え付ける計画だ。
線路直上部となるP7─P8間の鋼桁や線路間の橋脚のクレーン架設は、列車を進入させない「線路閉鎖」やき電停止の手続きが必要になる。ターミナル駅のため、終電は遅く始発は早い。実際の作業時間は90分程度だ。作業は常に翌朝の列車運行支障のリスクが伴う。
この施工条件に対して鹿島が提案した工法が、冒頭の1600t吊りクレーンによる架設だ。地組みする鋼桁や橋脚のブロックを大きくすることで、線路閉鎖が必要な架設の回数を減らした。
1600t吊りクレーン採用の狙いはP6橋脚
1600tクラスの超大型クレーンを導入する工事は、土地に制約の多い都市部では珍しい。監理技術者を務める鹿島JR品川駅環状第4号線工事事務所の尾崎友哉次長は、「当社の実績では、港湾での1350t吊りクレーンが最大だった」と話す。
JR東日本も当初から大型クレーンの活用を想定していた。それが可能だったのは、品川駅近くにあった車両基地を全8回に及ぶ切り替え工事でスリム化し、広大な敷地を生み出したからだ。
「品川駅周辺で進む再開発プロジェクト間で調整し、期間限定だが、大型クレーンの設置や桁の地組みができるヤードを確保できた」。JR東日本東京建設プロジェクトマネジメントオフィス品川プロジェクトセンターの岩井有人マネージャー(総括)は、そう説明する。
当初の施工計画では1250t吊りクローラークレーンと100t吊り・550t吊りオールテレーンクレーンの併用だった。それを鹿島の提案で1600t吊りクローラークレーン1基に変更した。一番の狙いは、狭い線路間に構築するP6橋脚だ。
P6は1250t吊りクレーンだとブームが施工箇所に届かず、100t吊りオールテレーンクレーンを橋脚の真横に据え付けて施工する計画だった。橋脚が18ブロックと小割りになり、ほぼ全ての作業を夜間に実施しなければならない。
加えて、「P6の狭い施工箇所でクレーンを使うのは、架線が近く作業自体のリスクが高い」(尾崎次長)。1600tクラスに変えることで5ブロックに減らせたうえ、昼間の地組み作業を可能にした。
もちろん桁の架設でも十分な効果を得られた。線路直上部となるP7─P8間の桁は当初50回に分けて架設する計画だったが、1600t吊りクレーンに変えたことで4分の1以下に減らせた。線路に掛からないP9─P10間の桁も当初43回だった架設が9回で済んだ。
クレーンは、主ブームと逆側にウエートワゴンを備え、重量が計約2000tに上る。クレーンを設置する箇所にはH形鋼の杭52本を支持層まで打設して作業構台化し、重みで沈下しないように施した。
工事は23年10月時点で基礎工や超大型クレーンを使った作業が完了し、折り返し地点にたどり着いた。27年度末の完成を目指して今後、P4─P7間の桁の送り出し架設という新たな作業工程に移る。
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