https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08613/?n_cid=nbpnxt_mled_dmh
自転車との接触事故を起こした、日本初の自動運転「レベル4」に対応する車両(以下、自動運転車両)の事故原因が判明した。同車両は福井県永平寺町において2023年5月から行われていた有料移動サービスで使用されていたが注)、同年10月の事故発生直後に運行を停止していた。
その後、経済産業省や国土交通省、永平寺町などの関係各所が原因の究明を進めてきた。2023年11月10日に永平寺町が発表した報告書によると、事故の最大の原因は自動ブレーキを作動させるための学習用データが不足していたことだった。同町は同時に発表した再発防止対策を講じた上で、2024年3月以降の運行再開を目指す(図1)。
接触事故が発生したのは、2023年10月29日午前10時25分ごろ。発生場所は、移動サービスを提供している「永平寺参ろーど」の片道約2kmの区間のうち、「荒谷停留所」から永平寺方面に約1km進んだ「対向車両とのすれ違い待避所」(町営第三駐車場付近)である。走行ルートの左側に並行して止まっていた無人の自転車に接触した後に緊急停止した。
自動運転車両には、車両の前方を監視するセンサーとして、車両前部のルーフ下に単眼カメラを1個、車両前部にミリ波レーダーを1個、車両前部に超音波センサーを4個搭載している(図2)。これらのセンサーを用いて自動ブレーキを作動させることになっていたが、すれ違い待避所では単眼カメラによる検知を優先するようにシステムの仕様を設定していた。自動ブレーキの不要作動(必要のないときに自動ブレーキが作動すること)をできるだけ抑えるためである。
今回の接触事故では、ミリ波レーダーと超音波センサーは正常に機能して自転車を検知した。さらに、単眼カメラで検知した映像を基に画像認識(機械学習によるパターン認識)によって自転車と判断して自動でブレーキをかけることになっていたが、今回の事故では単眼カメラが自転車を認識できなかった。
その原因について永平寺町は報告書で、(1)無人の自転車を認識するための学習用データが十分ではなかった(2)単眼カメラは自転車の真後ろの映像を捉えており、その映像を自転車として認識できなかった──という2点を挙げた。これらの原因は、事故前後におけるドライブレコーダーの映像や事故状態記録装置の時系列データ、対象物を検知するセンサーの記録データの分析によって突き止めた。
永平寺町は今回の事故を受けた再発防止策として、すれ違い待避所において接触する可能性があると検知された対象物に対しては、「単眼カメラによる画像認識との整合がなくても自動でブレーキが作動するように制御方法を変更する」とした。
また、真後ろから捉えた無人の自転車といった「認識の難しい画像」を追加で学習させることで、単眼カメラの認識性能を向上させる。さらに、「自動運転車両が通行することに対する注意喚起の看板を走行ルートに増設するなど、運用面での安全に配慮した措置を行う」と説明している。
なお、今回の事故の経緯を詳しく見ると、自動運転車両は事故の発生場所に差し掛かったときに、設計した仕様通りに速度を約12km/hから約6km/hに減速した。さらに、走行ルートの左側で休憩していた人(自転車の所有者)を検知し、速度を約4km/hまで落とした。しかし前述したように、走行ルートと並行に止まっていた自転車を単眼カメラで認識できずに走行を続けた。
自動運転車両は自動ブレーキシステムを作動させるほかに、遠隔監視室からの操作でも停止させられる。今回は遠隔監視室にいた担当者(特定自動運行主任者)が、自動運転車両が自動で止まらない可能性があると判断し、事故直前に車両の停止操作を行った。その結果、同車両は減速を開始した。
ところが、自動運転車両は前述したように約4km/hまで減速したが停止できず、同車のバンパー左端と自転車の右側ペダルが接触した(図3)。接触によってバンパーに装着した衝突検知スイッチが作動し、自動運転車両は緊急停止した。
0 コメント:
コメントを投稿