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プログラミング言語「Python」には何種類かの開発環境があるが、代表的なものの1つが「Anaconda」だ。Anacondaの導入方法や使い方、管理方法などを解説する。

 AI開発から子どものプログラミング教育まで、幅広く利用されているPython。需要も人気も、今最も高いプログラミング言語でしょう。

 Pythonの開発環境は何種類かありますが、その代表が「Anaconda」(アナコンダ)です。本稿ではAnacondaの導入方法や使い方、管理方法などを解説します。

 Anacondaには無料版と有料版があります。学術や趣味の用途の個人ユーザーなら無料版を使えます。本稿では無料版を解説します。

 なお、本稿におけるAnacondaの構成や機能、画面構成などは本稿執筆時点(2023年8月末)のものとします。環境はWindows 10 64bitとします。Windows 11でも同様に使えます。

Anacondaの概要

 Anacondaは自分のパソコンにインストールして使用するタイプの開発環境です。同タイプの開発環境としては、ほかに、Python公式サイト(https://www.python.org/)で配布されている「CPython」(シーパイソン)が有名です。Python公式の「処理系」であり、C言語で書かれたものです。処理系とは、プログラミング言語で書かれたソースコードを実行するためのソフトウエアです。なお、公式サイトのCPythonは、処理系のみを指す場合はCPythonと呼ばれたりしますが、一般には「Python」と呼ばれています。

 AnacondaはCPythonに比べて、サードパーティー製ライブラリやツール類が充実しているのがメリットです。このあと改めて解説します。一方のCPythonは、最新バージョンのPythonをいちはやく使えるという「公式」ならではのメリットがあります。

 Python開発環境は、インストールするタイプだけでなく、クラウドサービスのタイプもあります。その代表は「Google Colaboratory」です。インストール作業不要で、Webブラウザとインターネットさえあれば、簡単なユーザー登録だけですぐに利用できるのがメリットです。それに対してAnacondaは、こちらものちほど改めて解説しますが、複数の仮想環境を作成して切り替えて使えるなどといった、自由度の高さがメリットです。

 なお、Anacondaでもクラウドサービスタイプの「Anaconda in the Cloud」が2023年初頭頃にリリースされました。本稿の最後に紹介します。

Anacondaの構成

 Anacondaは大きく分けて、以下の3つの要素で構成されます(図1)。

  • (1)Python処理系
  • (2)ライブラリ
  • (3)ツール類
図1●Anacondaの構成
図1●Anacondaの構成
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 Anacondaは、インストール時に(1)~(3)をすべてまとめてセットアップします。強力なPython開発環境を容易に構築できる手軽さも人気の要因の1つです。

 では、(1)~(3)を簡単に解説します。

 Anacondaでは、(1)のPython処理系に、前述のCPythonを用いています。つまり、公式サイトで配布されているものと同じ処理系です。ただし、公式と異なり、常に最新バージョン(最新版)であるとは限りません。とはいえ、最新版でなくても最新版に近いバージョンなので、実用上はまず問題ありません。最新版を使いたければ、後述する仮想環境を利用しましょう。

 (2)のライブラリについて解説します。ライブラリとは、アプリケーションを開発する際に使う“ソフトウエアの部品”です。ライブラリを使うことで、複雑な処理を関数やクラスひとつで簡単に自分のプログラムに組み込めます。

 Anacondaには、高度な数値計算の「NumPy」、データ加工・分析の「pandas」、機械学習の「scikit-learn」など、AIやデータサイエンスで事実上標準のライブラリが同梱されています。そのほか、画像加工の「Pillow」やExcel制御の「OpenPyXL」など、豊富なライブラリがあらかじめインストールされています。

 これらのライブラリはいわゆるサードパーティー製です。CPythonには、Python標準のライブラリは同梱されていますが、サードパーティー製のライブラリは入っていません。CPythonを使うのであれば、これらのサードパーティー製ライブラリを個別にダウンロードしてインストールしなくてはならないのです。

 (3)のツール類は、開発用と管理用の2種類に大別できます。開発ツールは定番の「Jupyter Notebook」をはじめ、複数種類が用意されています。管理ツールは、「conda」と「Anaconda Navigator」の2本柱です。本稿では、主要なツールの使い方を解説します。

 ちなみに、Anacondaとは別に、「Miniconda」という開発環境もあります。これは、Anacondaから必要最小限のライブラリやツールを抜粋した開発環境です。公式サイト(https://docs.conda.io/en/latest/miniconda.html)からダウンロードしてインストールできます。