https://gigazine.net/news/20240419-goldene-single-gold-atom-layer/
厚さ原子1個分で炭素のみで構成されたシート状物質「グラフェン」は素材強度が非常に高く、熱伝導と電気伝導が非常に高いため、未来の新素材として期待されています。リンショーピン大学の研究チームが、このグラフェンと同様に原子1個分の厚さしか持たない金のシート「 」を生成して単離することに成功したと報告しています。
グラフェンと同様の二次元材料はこれまで多くの科学者が追求してきましたが、金属原子は常にクラスター化して になる傾向があったため、金属原子の二次元材料を生成することは非常に困難だったとのこと。
2015年に発表された ではスズ原子の二次元材料が、2019年の では鉛原子の二次元材料が報告されていました。今回リンショーピン大学の研究チームが発表したのは「初めて単独で自立する金原子の二次元材料」で、研究チームはこれをグラフェン(Graphene)にならって「ゴールデン(Goldene)」と名付けています。
ゴールデンを生成するため、リンショーピン大学はチタン炭化物の間にケイ素の原子単層を挟み込んだ材料を生成しました。この積層構造の上に金を加えると、金原子がその構造内に拡散してケイ素と置換し、金の原子単層が構成されます。
その後、チタン炭化物だけを除去して、ゴールデン単体を取り出します。このチタン炭化物を除去する技術には、「 」と呼ばれる日本の鍛造技術が応用されたとのこと。この村上試薬は炭化物をエッチングして除去し、鋼の色を変えるために使われるそうで、リンショーピン大学の研究員であるカシワヤ・シュン助教は村上試薬の濃度や時間を少しずつ変えながら実験を続けたそうです。さらに、チタン炭化物を除去した後に露出したゴールデンが丸まって金ナノ粒子になってしまわないように、界面活性剤を使って構造を安定させたとのこと。
カシワヤ助教は「シート状物質であるゴールデンは溶液の中にあり、ミルクに入ったコーンフレークに少し似ています。ある種のふるいを使うことでゴールデンを集め、電子顕微鏡で検査して、成功したかどうかを確認します」とコメントしています。
金ナノ粒子が電子工学・触媒・フォトニクス・センシング・バイオ医療などの分野で有望視されていることから、研究チームはゴールデンも同様に有用である可能性を示唆しています。
例えば、金ナノ粒子には、光を吸収すると電子が高エネルギー状態に遷移するという光学特性があり、この性質を利用して、水を分解して水素を生成する光触媒などが研究開発されています。また、ゴールデンを大量生産できるようになれば、さまざまな場面で使われている金の量を大幅に削減できる可能性もあります。
研究チームは、今回生成したゴールデンが新たな可能性を切り開くかもしれないと述べていますが、その特性には未解明な部分も多く、今後の研究が望まれると述べています。また、白金や銀など、他の貴金属でもゴールデンと同様の生成方法で二次元材料が作れるかを調査する予定だとしています。
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