2024年4月12日金曜日

中国NIO:固態電池 中国のEVメーカーであるNIO(蔚来汽車)は、「全固体」に拘らないという戦略を取りました(※4)。 NIOの電池では、電解質にゲル状の半固体物質や、液体を含浸させた固体電解質などが用いられます。「固態電池」とも呼ばれるNIOの電池は、固体電解質の安全性と、液体電解質の高いイオン伝導度の「良いとこ取り」を狙っているようです。


(※4)https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05229/?i_cid=nbpnxt_sied_blogcard

全個体電池とは?|今までの電池と何が違うのか、現在の状況を解説  従来型電池に用いられている液体電解質を固体電解質に置き換えたものが全固体電池です。近年、全固体電池は多大な注目を集め、開発競争が激化しています。

本稿では、全固体電池が注目を集める理由をはじめとして、全固体電池の仕組みやメリット、開発状況などについて解説します。


高まる電池需要

現在、世界的に電池の需要が高まっています。この背景にあるのはスマートフォンと電気自動車の利用拡大です。

特に電気自動車は近年の発展著しい分野と言えるでしょう。電気自動車製造大手のテスラは、この10年で世界有数の規模を誇る企業に成長しました。テスラのCEOであるイーロン・マスクは米フォーブス誌が発表した2022年の長者番付で第1位にランクインしています。

環境負荷低減や化石資源使用削減に対する関心の高まりは、電気自動車にとって追い風となりました。走行時にCO2を排出しない電気自動車は、クリーンな移動手段と捉えられています。

ガソリン車と電気自動車の最大の違いは動力源です。ガソリン車はエンジンを利用し、電気自動車は電気を利用します。電気自動車において電池が必要となるのはこのためです。

 

また、今では11台持つのが当たり前になったスマートフォンにも電池が用いられています。他にも、IoT社会のキーデバイスとなるセンサーは、有線による電力供給が期待できない場所での利用が想定されるため、小型電池ないしは小型の発電システムが必要です。

以上のように、これからの社会を支えるデバイスには電池の存在が欠かせません。そして、その需要は今後益々高まっていくことでしょう。

 

電池の仕組み

日本では学校の実験教材となっている電池ですが、全固体電池のメリットや課題を理解するためにも、従来型電池の仕組みを簡単に確認しておきたいと思います。

 

電池とは?

電池とは、光や熱、化学エネルギーなどを電気エネルギーに変換する装置を指します。

太陽光を電気エネルギーに変換する装置は「太陽電池」、熱を電気エネルギーに変換する装置は「熱電素子」、化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置は「化学電池(いわゆる普通の電池)」と呼ばれます。

化学電池は大きく2種類に分類できます。化学エネルギー電気エネルギーの不可逆的な変換しかできないものが「1次電池」、電気エネルギー化学エネルギーの変換(いわゆる充電)も可能なものが「2次電池」です。

スマホや電気自動車に必要となり、今後大きな需要が見込まれるのは「2次電池」です。

 

電池の構造と仕組み

図の引用元:https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20200330_03

 

電池を構成するのは、主に「正極」、「負極」、「電解質」の3つの要素です。

電池に外部回路(スマホのディスプレイや電気自動車の駆動装置など)を接続すると、正極と負極ではそれぞれ異なる化学反応が生じます。代表的な2次電池であるリチウムイオン電池を例に取ると、放電時には、負極側ではリチウムイオンと電池を放出する反応、正極側ではリチウムイオンと電子を吸収する反応が起きます(充電時にはその逆の反応)。

 

リチウムイオンは負極から放出された後、電解質を通って正極へ至り、電子は外部回路を通って正極へ移動します。このとき生じた電子の流れを利用してスマホや電気自動車を駆動させることができるのです。

 

リチウムイオン電池の課題

現在ほぼ全てのスマホが搭載しているリチウムイオン電池ですが、その電解質には可燃性の有機溶媒が用いられます。この有機溶媒は高温では発火、低温では凍結の危険があり、液漏れしても発火します。

初期のスマホでは、爆発炎上がしばしば話題に上りました。これは電池性能の面で無理をすることが多かったためです。

リチウムイオン電池に関する長年の研究開発の結果、材料、構造、熱管理、封止など様々な面で改善が為され、危険性は大きく低減しました。しかし、液体電解質を用いている以上、潜在的リスクからは逃れられません。

 

電池は、その危険性故ゆえ、性能を制限されている面があります。例えば、電池の急速充電は理論上可能ですが、電池内部の急激な温度上昇を招き、電解質の発火に繋がるため、部分的にしか実行できません。また、液漏れを防ぐために必要となる厳重な封止は、スマホ内の限られたスペースを圧迫し、形状の自由度を損なっています。

 

 

全固体電池とは?

全固体電池も従来の電池と同様、「正極」、「負極」、「電解質」の3つの要素から構成されており、動作原理は同じです。正極と負極の間でイオンと電子をやりとりし、電子の流れを使って外部装置を駆動させます。

 

決定的な違いは電解質が固体であるということです。この特徴は、液体電解質による潜在的リスクを取り払い、電池の機能を大幅に引き上げる可能性を秘めています。

 

全固体電池のメリット

電解質が固体であれば、液漏れのリスクはありません。これにより厳重な封止が不要となり、形状の自由度が増します。

 

また、熱変動に対しても強靭です。発火点は有機溶媒よりはるかに高く、最初から凍結しているため、下限温度も広がります。このため急速充電も可能となるでしょう。

化学的安定性についても多くの場合で、従来の液体電解質を上回ります。中には大気中でも安定して動作できる電池も存在し、こうした場合には封止自体が必要ありません。電池寿命の大幅な向上にも寄与することでしょう。

 

総じて、全固体電池は「安全」です。この特徴は、事故発生時のリスクが大きく、安全基準の高い自動車に最適といえます。

 

デメリットと課題

「安全で強靭」という他に代えがたい特徴を有する全固体電池ですが、実用化に向けてはまだまだ課題が残ります。

まず、電池はイオンという微粒子を負極から正極へ(または正極から負極へ)運ばなければならないわけですが、液体の中と固体の中、どちらの方が運びやすいかといえば、当然「液体」です。極端な例えですが、液体電解質中のイオン伝導は「プールを泳いで渡ること」、固体電解質中の伝導は「地中を掘り進むこと」と似たようなものであるとイメージできます。

固体電解質中ではどうしてもイオンが渋滞し、放電(または充電)スピードが低下してしまいます。

また、電極/電解質間のイオンの受け渡しも課題です。

電池の仕組みのところで述べた通り、電極表面では常に化学反応が起きています。電極は充放電に伴って縮んだり、膨らんだりするため、一定の形状ではありません。

液体電解質であれば、電極形状が変化しても液体が電極に密着し、界面でイオンを受け渡すことができます。しかし、固体電解質では、形を変える電極に上手く密着することが困難です。こうして電極/電解質間に隙間が生じると、イオンの受け渡し効率が低下してしまいます。

 

全固体電池では、これらイオン伝導の問題から、どうしても出力を上げにくいという問題が残ります。これは電気自動車など、大きな電力を必要とするデバイスにおいて致命的な欠陥といえるでしょう。

 

材料による分類:硫化物系と酸化物系

全固体電池は、電解質に用いる物質の種類によって、「硫化物系」と「酸化物系」に分類できます。

硫化物系は比較的高いイオン伝導度を有し、高い出力を得やすいことが特徴です。しかし、副次的に起きる反応で電池内部にガスが生じたり、化学的に不安定であったりと、安全面に課題が残ります。

一方の酸化物系は高い安定性を持ちますが、硫化物系に比べると大きな出力は得られません。

 

構造による分類:バルク型と薄膜型

固体電解質中のイオン伝導度が低いという課題を解決するため、構造面でも工夫が為されています。

伝導度が低いならば、伝導する距離を極力短く(つまり、電解質を薄く)すればよいと考えました。こうしてできたものが薄膜型の全固体電池です。薄膜型の電池は比較的大きな出力を得やすく、半導体製造で培われた薄膜作製技術(真空蒸着など)を転用できるため、コスト面でも有利に働きます。

ただし、薄くしすぎると、ショート(電解質内部を電子が通過する現象)が起きやすくなります。素子面積を大きくするにつれてショートが起きるリスクは増すため、電池の大型化には向きません。そして、電池が大型化できないと蓄電量が低下してしまいます。

これら特徴を加味し、スマホなどの小型デバイスでは薄膜型、電気自動車などの大型デバイスではバルク型(薄膜型に対し、十分な厚みを持つ形状)の利用が検討されています。

 

全固体電池の開発状況

全固体電池は小型電子機器で部分的な利用が始まっていますが、最も大きな売り上げが見込める電気自動車では未だ本格的な導入に至っていません。

主な課題となっているのは、電解質界面におけるスムーズなイオンの受け渡しと、電解質内部のイオン伝導です。この課題を解決するため、様々な機関が研究を推進しています。

 

最後に、現在進められている全固体電池開発の取り組みをいくつか紹介します。

 

産総研:界面接触の改善処理

産総研は、電極に用いる材料を粉砕・微細化して、固体電解質との界面接触の改善を進めています(※2)。

メカニカルミリングと呼ばれる機械的処理は、材料をすり潰すというシンプルな操作ですが、微細化された材料を用いた電池では界面でのイオン伝導が改善し、酸化物系ながら高い出力を得ることに成功しました。

全固体電池の構造は未だ確立されておらず、今後最適な構造が発見されれば、性能が大きく向上することも期待できます。

(※2https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2021/pr20211120/pr20211120.html

 

東大:セルロースナノファイバー(CNF

東大は、電解質にセルロースナノファイバー(CNF)を利用することで、性能向上に成功しました(※3)。

CNFは、植物細胞壁の主要構成物であるセルロースを微細化したナノ材料です。表面積が大きく機械的強度にも優れるCNFを配合した電解質は、高い柔軟性を持ち、電極との密着性を向上させます。

そのままではイオン伝導性を持たないCNFですが、化学的に修飾することで、イオン伝導性などの様々な特性を付与することが可能です。

図の引用元:https://www.kansai.meti.go.jp/E_Kansai/page/20181011/01.html

(※3https://newswitch.jp/p/29343

 

中国NIO:固態電池

中国のEVメーカーであるNIO(蔚来汽車)は、「全固体」に拘らないという戦略を取りました(※4)。

NIOの電池では、電解質にゲル状の半固体物質や、液体を含浸させた固体電解質などが用いられます。「固態電池」とも呼ばれるNIOの電池は、固体電解質の安全性と、液体電解質の高いイオン伝導度の「良いとこ取り」を狙っているようです。

 

(※4https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05229/?i_cid=nbpnxt_sied_blogcard

 


 


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