https://www.med.shimane-u.ac.jp/h_docs/2023022000016/
緑内障は眼と脳をつなぐ視神経が萎縮し、徐々に視野が狭くなってくる病気で、わが国の失明原因第1位です。緑内障は、眼圧(眼球内を満たしている眼の中の水(房水)の圧力)を低く保つことで進行が遅くなるという特徴があります。眼圧を下げる治療には、薬物治療、レーザー治療、手術治療がありますが、中でも約10年前に登場した、目の中に専用の医療器具を留置し、房水の排出路を作って眼圧を下げるチューブシャント手術が最も効果が高い治療として行われています。
しかし、少数ですが、チューブシャント手術でも眼圧が十分に下降しない難治症例が存在します。当院眼科学講座では2014年から、チューブシャント手術で効果が十分にみられない症例でも眼圧の下降が期待できる術式として、ファイバーテック社(千葉県佐倉市)と共同で、内視鏡的毛様体光凝固術(Endoscopic cyclophotocoagulation, ECP)装置の開発を行ってきました。
この術式では、本来観察する事ができない、眼の中の毛様体ひだ部を特殊な内視鏡で観察しながら、レーザーで凝固します(写真1、写真2)。その結果、毛様体から産生される房水が減少する事で眼圧が下降します。また、術式の安全性を高めるために、組織への深達度が浅いグリーンレーザーを世界で初めて採用しました。10眼を対象に行った臨床試験では、過去に平均4.3回の手術歴のある難治緑内障でも眼圧が下降し、全例に効果が認められ、重大な合併症もありませんでした。
2022年には医療機器として承認を受け(図1)、7月から他施設に先駆けて保険診療による治療を開始しました。これまで、6例(山陰在住2例、四国在住1例、九州在住1例、関東在住2例)の治療を行いましたが、いずれも大きな問題無く経過しています。本術式が緑内障による失明を少しでも減らす事に貢献できることを期待しています。
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