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新型コロナウイルスの影響で大きく減った男女の出会いの機会。従来は対面形式だったお見合いは時代の波にも乗ってオンラインの需要が増え、マッチングなどに人工知能(AI)が活用されている。一方、そんな世界に飛び込み、利用者の心の機微に寄り添って後押ししているのは昔ながらの仲人だった。 【オンライン結婚相談所の様子】 2021年5月14日の午後、三重県在住の会社員、近藤幸子さん(30)=仮名=が自宅でスマートフォンを見つめながら顔をほころばせていた。画面越しに仲人の横山茉鈴(まりん)さん(25)から「気持ちの変化はありますか」と尋ねられると、「前向きな心境です。車で1時間以内の距離に住む人に会えるといいですね」と話し始めた。 ◇マッチングはAIでも後押しは人の力 利用するのはITベンチャー「いろもの」(東京都渋谷区)が19年2月から運営するオンライン結婚相談所「naco-do(なこうど)」。従来の結婚相談所と同様に、入会するには▽結婚していない▽男性は無職ではないこと――などの条件がある。会員になると、AIによる見合い相手の検索・申し込みの他、仲人との定期的なビデオ面談が受けられるという。 AIの機能に加えて仲人ら人間の力も活用するオンライン結婚相談所は他にもある。システム開発などを手がけるSEM&O(東京都新宿区)が19年6月から運営する「スマリッジ」は社外のマッチングシステムで相手を選んだ後、婚活アドバイザーのスタッフがチャットやメールで利用者を支える。人材サービス大手エン・ジャパン(東京都新宿区)の子会社が16年5月から運営する「エン婚活エージェント」も、コンシェルジュが利用者に電話やメールで▽プロフィルの書き方の助言をする▽抱える問題点を見つける▽やる気を引き出す――などをする。月額料金は1万~1万5000円程度が多いが、契約やサポートをオンラインで完結できるため、店舗展開が不要でコストを削減できるという。 naco-doを利用する近藤さんは「婚活パーティーやマッチングアプリは既婚者も紛れ込んでいるとのうわさを聞いた。価格も勘案しながら、真剣に相手を探せるところを求めた」と振り返る。20年末から利用を始め、意中の異性になかなか出会えず退会を考えたこともあったが、「仲人に相談に乗ってもらい、背中を押してもらった。以前よりも前向きに相手を探せるようになった」と笑顔を見せる。 オンラインでの婚活については「仕事でもビデオ会議システム『Zoom(ズーム)』を使っているし、新型コロナの感染リスクも軽減できるので抵抗はなかった」。ただ、月額料金でのビデオ面談は原則2カ月に1回。増やすには追加料金がいる。それ以外にも仲人と連絡を取るチャット機能があるが、「相手の声や顔が見えないため言葉のニュアンスが伝わりにくいことがある」と話す。 ◇対面経験のある仲人も試行錯誤 一方、仲人たちもオンラインでの相談には試行錯誤を重ねている。1月から「いろもの」で働く中原愛子さん(49)は約10年間、対面形式の結婚相談所での経験を持つ。仲人の業務に自信を持っていたが、いざ始めると、対面形式との違いに戸惑ったという。 緊張する利用者に対し、対面ならコーヒーを注いで「ひと休憩入れましょう」と声をかけるが、画面越しではできない。オンライン特有のタイムラグもあり、会話のリズムも整えにくい。「身動きを入れて話したり、テンションを普段より高くしたりする工夫を試している」。ただ、オンラインゆえの利点もあり、「(利用者は)自宅でリラックスをした状態で話してもらいやすい」という。 ◇飲食・観光業界から転職も 20年10月に同社の仲人になった石崎由理子さん(54)は観光業界からの転職だ。企画していたツアーがコロナ禍で軒並み中止となるなどして決意。リモートワークは初めてで「利用者とのチャット機能は相手の顔が見えないので慎重に言葉を選ぶ。仲人の先輩と反省会を行うなど試行錯誤している」。5月は週5回ほど利用者の相談を受けた。「リモートで働けるので、新型コロナのような感染症が再び流行しても続けられて安心だ」と語る。 「いろもの」で働く仲人は5月現在13人。新型コロナの感染拡大後に応募が急増し、21年4月は8人の募集に428人が殺到した。完全リモートで面接や研修、就業が可能なため、全国から応募がある。多くは飲食や観光などコロナ禍の影響を受けた業界からの転職で、「自宅で働きたい」「顧客に長期間対応できる仕事がしたい」「人の幸せに関わりたい」などが志望動機という。 山田陵社長(33)は「応募者の増加に驚いたが、コロナ禍で接客できる職種が少ないことが要因だろう」と分析。「仲人には柔らかくて親しまれる人柄が求められる。顧客の幸せに情熱を注ぎ、オンラインでの接客に可能性を感じる人材がほしい」と話す。 ◇コロナ禍で利用増 オンラインの長所も 全国2767(2021年4月末現在)の結婚相談所が加盟する日本結婚相談所連盟(IBJ)によると、会員登録者の合計は4月に初めて7万人を突破し、月別のお見合い件数も同月は過去最高の4万3604件に達したという。担当者は「新型コロナウイルスによる外出自粛で出会いの機会が激減したことが登録者の増加につながっている。(オンラインには)距離の制約がなく、マスクを外して自宅でリラックスして対話できるなどのメリットもある」と話す。 ただ、ゴールイン(結婚)するカップル数は減少傾向にある。厚生労働省が2月に発表した20年の人口動態統計の速報値では婚姻件数は53万7583組(前年比7万8069組減)だった。減少率は12・7%で、戦後では1950年の15・1%減に次ぐ2番目の落ち込みだった。 川名好裕・立正大教授(恋愛心理学)は「昔と比べて多くの女性が社会進出し、結婚するより1人で生活する方が楽という人が増えている」と指摘。対面とオンラインの出会いの特性については「対面ではルックスや経済力、社会的な地位を見て『恋愛を楽しむ』という側面が大きい。一方でオンラインは対面以上にコミュニケーションが重視され、精神的な魅力も見えてくるので、長期的に良い関係を築くための情報を得やすい」と話す。【益川量平】
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