https://news.yahoo.co.jp/articles/257b1ddf982301884082966348f594ace665964f
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2021年2月にインド北部ヒマラヤ山脈の氷河から、氷と岩の巨大な塊が崩れ落ちた。 新たな調査研究によると、この塊は1800メートル下の谷底に落下したとされ、滅多に起こらないような洪水を引き起こし、200人の死者を出した。 【全画像をみる】再発は時間の問題、インドの大洪水は温暖化による氷河崩壊が原因だった 気候が温暖化すると、氷河に関連した地滑りが増えると言われており、専門家はこのような洪水がさらに増えると予測している。 幅550メートルの岩と氷の壁が、エンパイアステートビル4棟分を積み上げた高さから落ちるところを想像してみてほしい。 4カ月前にインド北部で2つの発電所を破壊し、200人以上の死者を出した災害の原因がこの塊だったことが、6月10日に発表された新たな論文で指摘されている。 2021年2月7日の夜明け前、インドのヒマラヤ山脈にある標高約5500メートルのロンティ山の氷河で雪崩が発生し、巨大な塊が時速約216キロメートルで1800メートル下の谷に落下した。 その塊が落下とすると、岩石は崩壊し、氷は溶けて、土石流となって谷底の川に流れ込んだ。その下流、チャモリ地区にあるリシガナガとタポバンには水力発電所があった。谷間のカーブで減速した土石流は、時速90キロメートルで発電所の地下にあるトンネルに流れ込み、多くの作業員が閉じ込められて死亡した。 この「チャモリ災害」の被害の深刻さは、当初、科学者たちを困惑させた。通常、この地域の雪崩では、この災害ほど急激で、長時間にわたる洪水は発生しない。 カルガリー大学の地球科学者で、今回の論文の筆頭著者であるダン・シュガー(Dan Shugar)は、Insiderに次のように語っている。 「『通常』の乾いた岩石による雪崩であれば、今回のように遠くまで進むことはなかっただろう。つまり、リシガンガやタポバンの水力発電所に到達しなかったはずだ」 シュガーの研究チームは、この災害の深刻さを説明できる重要な要素を発見した。雪崩の組成(氷が約20%、岩が約80%)と、その1800メートルにおよぶ落下が相まって、激流となった土砂が下流の谷にいた作業員を襲ったということだ。 研究者の計算によると、この洪水の体積は2700万立方メートルで、サッカー場1600面以上を厚さ3mの瓦礫で覆うほどの量だった。
洪水は谷の壁を220メートル駆け上がった
チャモリが位置するインド北部のウッタラカンド州では、洪水や地滑りが珍しくない。2013年には、豪雨によって壊滅的な洪水が発生し、およそ5700人が死亡している。 2月の災害後、専門家は当初、ロンティ山の頂上付近にある湖を支えている氷河の塊が崩れ落ちて湖水が噴出したと考えていた。氷河湖の中には、数億立方メートルもの水を湛えるものもあるのだ。 しかし、衛星画像を見る限り、土石流の経路にはそのような湖はなかった。 シュガーの研究チームは、谷の地形図や災害時の映像、周辺の地震データなどを分析し、何が起きたのかを再現した。 ロンティ山から崩れ落ちた氷河の塊は、平均して80メートルの厚さがあった。その塊は山のふもとに落ちると、近辺の森の木をなぎ倒し、厚い土埃を舞い上げた。谷底への衝突はあまりも激しく、そこにあった岩と氷が混ざり合い、谷の壁面を220メートルの高さまで逆流するほどの勢いがあった。 スイスにあるチューリッヒ大学の氷河学者ホルガー・フレイ(Holger Frey)は、氷河の氷を溶かすのに「ほぼ『最適』な条件がそろっていた」とInsiderに語り、その条件の下で発生した大規模な洪水によって「この悲惨な災害の範囲が拡大し、破壊力が増すことになった」と付け加えた。
Aylin Woodward
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