https://plat.io/ja/posts/honeycode
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まえがき
2020年はプログラミング不要でアプリを作ることができる「ノーコード」ツールが大いに注目を集めた年となりました。昨今のIT人材不足、DXの流れで需要が高まっていることに加え、新型コロナウイルス対策としても、素早くアプリを完成できるノーコードが活躍したことも記憶に新しいでしょう。
その潮流に乗るように、大手企業もノーコードツールをローンチし始めています。以前のブログでは2020年1月にGoogle社が買収したAppsheetを紹介しました。
それと並び話題になったのが、2020年6月にAmazonがAWSの1つとして公開したノーコードツールのHoneycodeです。2020年8月のガートナー調査(※)でもIaas市場で2位のAzureを抑えダントツのシェアを誇るAWSが出したノーコードツールということで、大きな期待を寄せられています。本記事ではHoneycodeの概要や使用方法を紹介、また、実際にアプリを作成してみた印象について、レポートしていきます。
※publickey blog 「IaaS型クラウドにおけるAWSのシェアは45%、Azureが18%で2位、3位はアリババ。2020年8月のガートナー調査」
1. Honeycodeについて紹介
Honeycodeは、Amazonがアマゾンウェブサービス(AWS)の1つとして2020年6月に公開したノーコードツールです。アプリを作るために必要なサーバー環境はすべて用意されているフルマネージドサービスなので、利用者はブラウザとインターネット環境さえあれば、Honeycodeを使ってモバイルもしくはWEBで動くビジネス向けのアプリを作成できます。
【料金】
無料でユーザー数20人までのアプリなら何個でも作成できますが、Workbook(後述します)のデータサイズが2500行までという制限があります。それ以上のデータサイズやユーザーの人数が必要な場合は月額19.99$のPLUSもしくは29.99$のPROといった有料プランが用意されています。詳しくは料金表のページをご覧ください。
【日本語対応】
2020年12月20日の時点では、まだベータ版の段階で、日本語対応はしていません。ただし日本語データの入力は可能です。
【Honeycodeのビジョン】
Honeycodeも他のノーコードツールと同様、コードを記述しなくてもアプリケーションを構築することができるサービスですが、これをリリースした背景にはどのような動機があるのでしょうか?AWSのバイスプレジデントLarry AugustinがHoneycodeについて語った動画を見ると、次のような点をビジョンとしているようです。
現状の企業が抱える業務課題として、「独自性がある業務に対し、ツールが対応していない」ということが挙げられる。 その課題に対してHoneycodeは、「チームの生産性に対する課題を解決するため、ユーザーに独自アプリを作る力を与えること」を目指している。
彼は動画において更に具体的に、「スプレッドシートを手動更新することで業務を進めていくやり方は非効率で、それはカスタムアプリケーションに置き換えていくべきである。だが、アプリを開発できるエンジニアが不足しているのが問題だ」とも述べています。
ノーコードツールの意義と必要性についての認識は、DXの推進による業務効率化が急務なのに、ITエンジニア不足が叫ばれているという日本の状況とも重なるといえるでしょう。
2.Honeycodeを使ってみた
~全体的な作成の流れと作りやすさ検証
Honeycodeでアプリを作りはじめる前に、皆さんにまず理解しておいてほしいことを2点ほどお伝えします。
① 「Workbook中心」にアプリを作成する
Honeycodeの中心となるのはWorkbookと呼ばれるスプレッドシート、Excelのような表形式のシートです。kintoneやPlatioのように、フォームからアプリを作る過程でテーブルが出来るタイプではなく、最初にデータテーブルを定義して、そこにデータを書き込んでからアプリに発展させていきます。ようは「Excel表をアプリにしていく」ということです。そのコンセプトを念頭に置かないと、混乱のもとになるでしょう。
② ベータ版なのでバグや不具合が出てくる
これは仕方ありません。作成の途中で、何度か原因不明のエラーに陥ることがあります。特に日本語入力は不具合が多いです。列名やプロパティ名称などは、なるべく半角英数字を使用することをおすすめします。
それでは、実際にHoneycodeを使ってアプリを作っていく流れについて説明します。
【アプリ作成の4ステップ】
1. チームメンバーを加える
Honeycodeは、チームと呼ばれるグループ単位でアプリを共有します。チームメンバー全員が自身のメールアドレスを登録しHoneycodeのアカウントを取得することが必要です。最初は各アカウントにつき1チーム(自分の名前のチーム)が作られますが、組織でアプリを共有するには管理者が自分のチームにメンバーを招待して、各々がそれに参加したうえで、さらに作ったWorkbookをチームのメンバー宛にShareするという手順になります。これらの手続きはすべてメールアドレスベースで行う必要があり、メンバーの招待時もファイルの一括インポートなどはできずカンマ区切りで指定になる等、全体を通してメンバー管理や共有に関しては、やや手間がかかる印象を受けました。
2.ワークブックを作る
チームができたら、まずはアプリの土台となるWorkbookを作ります。新規のブックを作ることも、既存のCSVをインポートすることもできますし、18種類あるテンプレートから選ぶこともできます。(ノーコードツールは概ねテンプレートをアレンジした方が初心者にとってアプリが作りやすいことが多いですが、Honeycodeに限っては新規で作る方がむしろ簡単です)
Workbookは仕様がほぼExcelやスプレッドシートと同じなので馴染みやすく、編集もしやすいでしょう。この点はkintoneに近いかもしれません(ただし、一部に独自の関数や数式が使われています)。1つのワークブック中に複数のテーブルを含めることができ、アプリ内のすべてのデータがワークブックに定義されるため、例えばアプリでデータを選択式にするリストボックス(PickListといいます)を作りたいときにはその選択項目を保持したテーブルが作成されることになります。
3.アプリを作る
ワークブックのデータが揃ったら、メニューにあるBuild Appというボタンを押せばアプリ作成画面に進みます。ここでウィザードを使うと、指示に沿って進めていくだけで半自動にてオブジェクトやテーブルが配置され、簡単にアプリが出来上がるのがHoneycodeのすごい点です。今回は簡単な営業日報アプリを作ってみたのですが、一覧画面、詳細画面、日報登録画面の3点を自動で仕上げてくれました。画面レイアウトや不必要なパーツの削除など、多少手直ししただけで、もうアプリが完成です。時間にして僅か5分足らずだったでしょうか。画面デザインの際にテーブルのデータも並んで参照されるのでアレンジもしやすかったです。また、「Automation」と呼ばれるメール通知設定などの自動化設定もまとまっていて簡単でした。ただ、例えば特定のデータだけフィルタをかけた別の画面を作るなど、少し応用的なシーンを設定するとなると、慣れない数式や関数を設定する必要があり、少し難しいかもしれません。
4.共有する
作ったアプリの挙動はすぐにブラウザ内でプレビューできるので便利です。動作を確認したら、チームメンバーにアプリをシェアすることで共有できます。スマホ(iPhone)とタブレット(iPad)からアクセスしてみました。タブレットの画面サイズには対応していないのか、12インチiPadの画面いっぱいにフィットしませんでしたが、動作はスムーズで問題ありませんでした。数式を入れて作った、特定の条件を満たすと管理者に通知される機能も正常に動いており、一安心です。アプリを修正しても利用者は更新ボタンを押したりログインし直したりする必要なく、リアルタイムで修正が反映されるところが感心しました。
一通り触ってみて、最初はWorkbookありきのコンセプトの理解に戸惑い時間を取られましたが、結果的に1日でアプリを形にすることができました。ウィザードに限らず、ヘルプ、チュートリアルはかなり充実しているほか、サジェスチョンなども随所でみられ、親切でした。
【Honeycodeの難易度・・・・・・誰でも作れるか?どのレベルの知識が必要?】
単純なアプリを作るのであれば、手順を理解すれば誰でも短時間で作成できるでしょう。しかし、アプリをブラッシュアップするためには、Excel関数と数式が理解できるレベルの知識、あとはデータベース基礎知識が必要という印象です。
3.Platioとの比較
いくつかの点で、Honeycodeの機能/使いやすさの評価をわかりやすくするために、同様にノーコードでモバイルアプリを作成できるツールである「Platio(プラティオ)」と比較してみました。
・テンプレートの充実度=Platio
Platioが日本企業向けの現場業務ですぐに役立つテンプレートを120種も備えているのに対し、Honeycodeのテンプレートは18種類で、グローバル企業の文化が基準になったものが多い(例えば勤怠管理のアプリは「週払い制」向けにデザインされている)。
・アプリの作りやすさ=引き分け
最初にワークシートを定義しなくても直感的なGUI配置でアプリができるPlatio。その後の設定やアレンジも、IT系の知識が乏しい初心者にも易しい。対してHoneycodeはWorksheetにデータを設定する手間はあるが、データさえ作ってしまえばアプリの完成までは自動的に速く進めることができる。ただし条件付きフィールドやフィルタリングなど応用技術は多少数式の知識が必要。
・多様性/ビジュアル=Platio
Platioは写真、動画、位置情報、バーコード、IoT機器など、アプリに多様なデータを含められるのに対し、Honeycodeは(現状)Workbookのセル内のデータ(テキスト情報と色変化)のみのため、視覚的効果と多様性は乏しい。
・アプリへのアクセス性=引き分け
Honeycodeのチームメンバー登録、招待、アプリの公開までの流れはやや手間がかかる。また、アプリ作成環境とユーザー利用場所の区別がない。反面、アプリの仕様変更後、アプリがリアルタイムでアップデートするところがよい。Platioはアプリの作成環境へのアクセスは分離しており、アプリ内のユーザー管理も独立しているためスッキリ制御できる。しかしアプリが仕様変更されると、基本は手動でのアップデートが必要。
まとめ
この記事ではAmazonのノーコードツールであるHoneycodeを特集しました。使ってみた印象としては、Excel/スプレッドシートに相当な敬意を払いつつも、脱Excel/スプレッドシートによる業務効率化を意識したツールだということです。実際、データ表(Workbook)からアプリへのスピーディーな変換と成形機能は素晴らしいものでした。
現状はベータ版であることと、日本語非対応であることからも、日本企業で今すぐ役立つアプリを作ることは少し難しいかもしれません。しかし、本格的に日本でサービス展開されたら、課題管理表や勤務管理表などのシートを次々にアプリ化でき、業務効率化を強力に支援する便利ツールになる日も近いでしょう。
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