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2021年07月07日 05:05
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近年、老化細胞の除去(senolysis)による抗老化治療の概念が提唱され、さまざまな老化細胞除去治療の開発が進められている。大阪大学大学院健康発達医学寄附講座教授の中神啓徳氏は、老化T細胞を標的としたワクチンを開発。マウス老化T細胞の減少や耐糖能の改善が得られたことを第32回日本老年学会/第63回日本老年医学会(6月11日〜7月4日、ウェブ開催)で報告した。
生活習慣病や炎症性疾患などを対象に治療ウイルスの開発進む
ワクチンには①ウイルスを活用したウイルスワクチン②遺伝子治療技術を活用した核酸ワクチン③ウイルスと遺伝子治療技術を活用したウイルスベクターワクチン④蛋白を用いたワクチン―がある。①〜③は液性免疫(抗体誘導)と細胞性免疫を不活化し、④は抗体を誘導する(図1)。液性免疫、細胞性免疫のいずれにおいてもT細胞が獲得免疫の司令塔として働き、抗体を誘導には濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh細胞)が重要な役割を果たすことが近年明らかされている。
図1. ワクチン基盤技術の分類
(中神啓徳氏提供)
中神氏らは、④の抗体誘導型のワクチンを感染症以外の病態に応用できないかと考えて検討している。高血圧、糖尿病、脂質異常、脳梗塞、心筋梗塞、血栓症といった生活習慣病・慢性疾患に加え、がん、網膜症、炎症、老化といった難治性・炎症性疾患に対し、動物モデルを用いて開発を行ってきた(関連記事「高血圧ワクチンの安全性と有効性」)。
生活習慣病に対する治療ワクチンは、高齢化に伴うポリファーマシー(多剤併用)の解決、服薬アドヒアランスの改善などのメリットが考えられる。一方で、通院回数の減少により在宅での健康管理が求められる、免疫の多様性に伴う個別化医療での対応が必要といった課題がある。
これらの疾患は外因性分子であるウイルス性感染症と異なり内因性分子が標的であるため、免疫賦活薬(アジュバント)による免疫寛容の解除および細胞性免疫の制御による自己免疫疾患の回避に加え、親和性が高い抗体産生の持続が必要である。具体的には①適切な抗原配列設計②適切なアジュバントの選択③担体(キャリア)の活用―が求められる。基盤技術はおおむね確立されており、自然免疫活性化ペプチドの同定、独自のペプチドキャリアの開発、人工知能(AI)の応用などが進められている。
ワクチン投与でマウスの老化T細胞を抑制
老化した細胞はさまざまな炎症性物質を分泌し(細胞老化随伴分泌現象:SASP)、周囲の細胞の老化を促進して組織・臓器の機能低下を引き起こす。これらは発がんを含むさまざまな加齢性疾患の要因の1つであるため、老化細胞を除去することで臓器・組織の機能改善が期待できる。マウスへの細胞膜透過性低分子化合物AP20187の投与により、老化マーカーであるp16INK4aを高発現した老化細胞のアポトーシスを誘導し、寿命の延長や発がんを含む老化関連疾患が抑制されたことが示されている(Nature 2016; 530:184-189)。
中神氏らは、老化T細胞の除去により慢性炎症状態を改善できると考え、マウス老化T細胞に高発現するCD153を標的としたワクチンを作製。マウスへの高脂肪食負荷により短期間で内臓脂肪組織に老化T細胞が増加するという報告(J Clin Invest2016; 126: 4626-4639)に基づき、高脂肪食負荷マウスモデルを用いてワクチンを評価した。
同氏らが開発したのは、抗原ペプチドにキャリア蛋白としてキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を結合させたコンジュゲートワクチン。今回の研究の鍵とされるアジュバントには、中和活性を持つ抗体の産生を誘導する水酸化アルミニウム(alum)と、細胞傷害活性を持つ抗体の産生を誘導する合成核酸のCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)の2種類が使い分けられた。
検討の結果、CpG ODNを用いたCD153-CpGワクチンにおいて、CD153陽性細胞に対し補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有する抗体の誘導が確認された。さらに、同ワクチンの投与により①Toll様受容体(TLR)7のリガンドであるR848の投与に伴う膵臓中の老化T細胞の誘導が有意に抑制される②高脂肪食負荷により悪化する耐糖能やインスリン抵抗性が有意に改善する③高脂肪食負荷により増加する内臓脂肪中の老化T細胞が有意に減少する―ことなどが示された。
CD153染色による病理学的検討では、高脂肪食負荷後に脂肪細胞組織の周囲を老化T細胞が取り囲む王冠様構造(crown-like structure)が観察されたが、CD153-CpGワクチン投与により抑制された(図2)。同様の現象がマクロファージでも認められたことから、老化T細胞の減少を介して炎症性の他の免疫細胞も抑制できる可能性が示唆された。
図2. 脂肪組織中の老化T細胞の変化
同研究はワクチンにより老化細胞数を抑制した世界初の報告であるという。ただし、「マウスとヒトでは老化T細胞のマーカーが異なるため、今後はヒト老化T細胞の探索を進める必要がある」と同氏は付言した。なお、研究の詳細はNat Commun(2020; 11: 2482)に報告されている。
(安部重範)
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