Audibleが 月額 1500 円を 維持しつつ ビジネス モデルを 転換する訳
オーディオブックやポッドキャストといった「オーディオエンターテインメント」を手がけるAudible(オーディブル)が、1月27日より日本向けの会員プランが「聴き放題」に移行する。月額の利用料は従来通り月額税込み1500円のままで、ビジネスモデルの転換が行われた格好になる。
1月26日に行われた、同社の2022年戦略発表会でカントリーマネージャー 逢坂志麻(おおさか しま)氏に真意を聞いた。
コイン制から“聴き放題”への移行
米国で1995年に創業したAudibleは、オーディオブックや音声コンテンツの制作/配信事業者として2008年にAmazon.comの傘下となり、世界各国で事業を展開している。日本では2015年7月に6カ国目としてサービスインし(現在は10カ国で展開)、さまざまなデバイスでコンテンツを楽しめる。
非会員でも個別のタイトルを購入できるが、基本は会員となることでポッドキャストが聞き放題であったり、毎月付与される1コインでオーディオブックを1冊入手できたり、ダウンロードによるオフライン再生が行えたりと、豊富な特典が用意されていた。1月27日からはコイン制が廃止され(会員が所有しているコインは有効期限内まで利用可能)、新たにストリーミング再生もサポートする。
また、Audibleの会員非会員の区別なくAmazon MusicのポッドキャストをAudibleのアプリで聞けるようになる
Audibleには40万点以上のオーディオコンテンツが用意されているが、今回の聴き放題では日本語コンテンツの約95%を占める12万点以上が対象になる。残りの5%は原作が英語だったり、翻訳本だったりと権利関係の処理で時間がかかるものが該当し、いずれは100%にしていきたいという。
この判断に至った背景として、逢坂氏は2021年を振り返り「2021年はAudibleを非常に活用していただけた1年だった。会員数は2018年にコイン制を導入したときと比較して約4.5倍になり、日本で聞かれたAudibleの合計時間は1900万時間にもなった。従来は自己啓発やビジネス関連のタイトルが人気で、ユーザー層も最も多いのは20代~40台の男性だったが、在宅時間の増加などライフスタイルの変化に伴って女性層を中心に年代の幅が広がった」と語った。
月額1500円の維持という部分にはかなりこだわった
そして「会員特典を聴き放題に移行した理由は2つある。1つは会員のリスニング習慣が変化しており、年々聞く時間も延びているが、いろいろなコンテンツに手を伸ばしているのが分かってきた。そのニーズに適合する形で今回決断したのが大きい。もう1つはオーディオコンテンツに触れていなかった人に、手軽に触れていただくというきっかけという面も大いにある」とし、「月額料金の1500円をサービス提供当初より維持しているが、より価値のあるサービスにしていかなければならない信念がある。1500円のままで、大きな価値を感じていただきたいという思いで決めた」(逢坂氏)。
逢坂氏は「Audibleの利用シーンもグンと広がっており、家事をしながら、ペットの散歩をしながら、寝る前にスマホではなく目を休めて耳でリラックスして寝付くなど、いろいろなユースケースが増えている」と分析。
「2021年からはオーディオファーストを掲げ、書籍として出版する前にAudibleで独占配信を行ったり、『アレク氏 2120』といったAudible Originalsのオーディオエンターテイメント作品を積極的に投入したりと取り組んできた。こういったコンテンツの拡充によって会員の満足度が上がり、出版社やクリエイターのやる気や注目度が上がるという好循環が起きている」とし、「2022年には三浦しをんさんの新作『墨のゆらめき』(仮題)を配信予定で、これまでの新潮社に加え河出書房新社、幻冬舎、講談社、実業之日本社といった出版社とも新たなプロジェクトを行う予定だ」とアピールした。
今後のコンテンツ制作方針はどうなのだろうか。
日本の“音の市場”は開拓の余地が大きい 村上春樹さんの日本語版も
その一方で、Audible事業部 レンジできるようになったことで、オーディオブックだけでなくポッドキャストに力を増やすことで相乗効果がある。聴き放題でその時間が増えると確信している」と語った。
最後に逢坂氏は「これまで声の可能性を信じ、音声の可能性をどこまで広げられるのかとAudibleをやってきたが、2022年は挑戦の年だ。これらのさまざまな取り組みを行う中で、唯一無二のオーディオエンターテインメントを目指していきたい」と抱負をビジネス・アフェア シニアコンテンツリーダー キーリング・宮川もとみ氏は「日本でオーディオコンテンツは盛り上がりを見せているが、まだまだ認知が低いと思っている。1月27日からは、オーディオブックとポッドキャストをこれまで以上に強化し、視野と知見が広がるオリジナルのコンテンツをお届けしたい。さらにAudibleならではのオーディオエンターテインメントに力を入れる」という。
このオーディオエンターテインメントとは、オーディオブックとポッドキャストという2本柱に並ぶもので、単なる朗読ではなく声のパフォーマンスが要求され、本ではなくドラマ化されており、サウンドデザインが必ず行われているという特徴があるものを指すという。
例えば、発表会で公開された米国のDCコミックス「The Sandman」の日本語版が該当する。日本語版では総勢50人を上回るキャストが登場し、サウンドも奥行きのある豪華なものになるそうだ。
The Sandmanのメインキャストである声優の森川智之さんは「Audibleという、絵がないところでの収録はプロでも難しい。収録するスタジオにモニターがあって、音の波形に合わせて日本語でセリフをしゃべるが、その尺に合わせるのが技術的に非常に大変だ。台本を見ながらやると、長い台詞を波形に合わせるのも難しい」と、オーディオエンターテインメント特有の制作の難しさを挙げる。
「いわゆるラジオドラマもやっていきたいが、現在制作しているところがあまりなく、過去の作品は版権の問題があってすぐに追加するのは難しい。海外では360度サウンドのコンテンツもあるので、今後はやっていきたいと思っている」(宮川氏)
ポッドキャストでは、TBSテレビで世界遺産のナレーションを担当している俳優の杏さんが、オリジナルの杏が読んだ本を地図にして起源を探るオーディオジャーニー「Journey To The Origin Ann」が配信される他、オーディオブックでは村上春樹さんの作品がついに日本語版として登場する。
宮川氏は「今回、聴き放題になったことで、コンテンツの尺やフォーマットの縛りが絞りがなくなったので、コンテンツの定義すらクリエイターが作っていけばいいという環境が整った。一緒にやっていくクリエイターの皆さんと、新しいものを生み出せるとわくわくしている。これまでなじみのなかったジャンルにチャレンジできるようになったことで、オーディオブックだけでなくポッドキャストに力を増やすことで相乗効果がある。聴き放題でその時間が増えると確信している」と語った。
最後に逢坂氏は「これまで声の可能性を信じ、音声の可能性をどこまで広げられるのかとAudibleをやってきたが、2022年は挑戦の年だ。これらのさまざまな取り組みを行う中で、唯一無二のオーディオエンターテインメントを目指していきたい」と抱負を述べた。
0 コメント:
コメントを投稿