全1495文字

 2024年1月に開催されたテクノロジー見本市「CES 2024」の韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)ブースを訪れると、入り口で横5台、縦3台の77型の透明有機ディスプレー群が出迎えてくれた。そして、それらが前後に移動するというダイナミックなデモンストレーションを見せていた。

LGエレクトロニクスのブースは15台の透明有機ELテレビがお出迎え
LGエレクトロニクスのブースは15台の透明有機ELテレビがお出迎え
(写真:筆者)
[画像タップで拡大表示]

 昨年(2023年)のCES 2023のプレスカンファレンスでは、「OLED T」(TはTRANCEPALENTの頭文字)と命名されたプロトタイプが紹介されていたが、今回のCES 2024では、高級ブランドの「LG Signature OLED T」として、いよいよ家庭向けに発売する旨がアナウンスされた。

LGエレクトロニクスのプレスカンファレンスで発表された77インチ/4Kの透明有機ELテレビ「LG Signature OLED T」
LGエレクトロニクスのプレスカンファレンスで発表された77インチ/4Kの透明有機ELテレビ「LG Signature OLED T」
(写真:筆者)
[画像タップで拡大表示]

 韓国LG Display(LGディスプレイ)はすでに30インチ/2K、55インチ/4K、77インチ/4Kの透明有機ELパネルを開発済みだが、LGエレクトロニクスは、まずは77型を選択した。これまでは透過率が40%だったのでBtoBでは使えたが、民生用は難しかった。今回は45%まで向上したので、民生用としての展開が可能になった。

透明有機ディスプレーの仕組みは単純

 透明有機の仕組みは単純で、透明な画素内に発光部がある。透明部分が広く獲得できれば、透明度は上がるが、反対に発光部が小さくなり、輝度は下がる。発光部の効率を上げ、画素内部の透明部の面積を拡大すれば、透明度は上がる。77インチのスペックはピーク輝度600nits、平均輝度200nitsであり、輝度が3000nitsに達した最新型のMETAパネルとは比較にならない。しかも業務用とは異なり家庭用としては、コントラストが極めて重要になる。そこで、背景を見せる透明モードと、コンテンツを見るための黒色のバックパネルモード(下から黒幕がせり上がる)を用意した。

コントラストを確保するため下から黒幕が立ち上がる
コントラストを確保するため下から黒幕が立ち上がる
LGエレクトロニクスのブースから(写真:筆者)
[画像タップで拡大表示]

 透明有機EL自体はすでにBtoBで実用化され、オフィスのパーティションや地下鉄の窓ディスプレー、サイネージなどのアプリケーションが進展している。家庭でのアプリケーションはどうか。昨年のCES 2023の同社ブースでは、美術館のような部屋で、壁の模様とコラボレーションした透明ディスプレー上の模様映像をデモしていた。

広告