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MRAMの動作周波数をTHz帯に向上
東京大学は、交換バイアスによりワイル反強磁性体「Mn▽▽3▽▽Sn」の磁気状態を室温で制御可能なことを発見した。反強磁性体を用いた超高速、超省電力の次世代メモリを開発するための重要な技術と位置付ける。
超高速、超省電力の次世代不揮発性メモリ材料として注目
東京大学大学院理学系研究科の朝倉海寛大学院生、肥後友也特任准教授、中辻知教授らによる研究グループは2024年5月、交換バイアスによりワイル反強磁性体「Mn3Sn」の磁気状態を室温で制御可能なことを発見したと発表した。反強磁性体を用いた超高速、超省電力の次世代メモリを開発するための重要な技術と位置付ける。
磁気抵抗メモリ(MRAM)は、電力を消費せずにデータを保持できることから、次世代メモリとして期待されている。MRAMはこれまで、データを記録する磁気トンネル接合(MTJ)素子に強磁性体が用いられてきた。この強磁性体を反強磁性体に置き換えれば、動作周波数をGHz帯からTHz帯へと飛躍的に向上させることができるという。
研究グループはこれまで、スピン軌道トルク(SOT)による磁気状態の書き込みと、トンネル磁気抵抗効果(TMR)による書き込みを行い、Mn3Snが強磁性体の代替に適した反強磁性メモリ材料であることを実証してきた。ただ、反強磁性体MRAMを実現するには、参照層となるMn3Snの磁気状態を交換バイアスで固定する必要がある。
実験では、MTJ素子の参照層とピニング層で構成される二層膜のうち、参照層の強磁性体をMn3Snに置き換えた薄膜試料を作製した。そして、二層膜の界面に生じる交換バイアスを測定した。この結果、磁場中冷却時に印加した磁場(冷却磁場)の方向に対応して、異常ホール効果の信号がつくるヒステリシス曲線にシフトが生じることを確認した。このことは、Mn3Snのカイラル反強磁性秩序を交換バイアスによって固定できたことを示すものだという。
観測した交換バイアス(信号のシフト量)は、試料の保磁力に対して比較的小さい値であったが、ポテンシャルとしては1桁以上大きくできるとみている。なお、100Kという温度環境では、0.4T程度の巨大なシフト量を確認した。
さらに、交換バイアスによりMn3Snのカイラル反強磁性秩序に付与できる磁気異方性を、冷却磁場の向きによって試料形状に関係なく任意の方向に印加出来ることを明らかにした。この「Omnidirectional」特性を実証できたことで、脳型計算や量子演算など新原理コンピューティングの実現につながる多値記録素子への応用が期待できるという。
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