コンデンサー大手である村田製作所の超小型積層MLCC

 電気(電荷)を蓄えたり放出したりするコンデンサー。家電から電気自動車(EV)、インフラ設備まで、あらゆる機器に搭載される、電子回路に必須の電子部品です。0.5ミリメートルのシャープペンシルの芯に乗ってしまうような超小型なコンデンサーの仕組みと最新動向について、新入社員と業界ウォッチャーであるベテラン記者が議論を交わしました。

 新入社員 コンデンサーというのは、電気を蓄えたり放出したりする部品ですね。具体的にはどのように機能するのでしょうか。

 記者 コンデンサーは、電気を蓄えたり放出したりするだけでなく、直流電流は通さず交流電流のみを通す役割に加え、回路から出るノイズを吸収するフィルター機能もあります。つまり、電子機器を安定動作させるのに不可欠な働きをしているわけです。

 新入社員 なるほど、電気製品には必須の部品なのですね。コンデンサーにも種類があるのでしょうか。

 記者 ありますよ。材料の違いでセラミック、タンタル、アルミ電解、フィルム、電気二重層などに分類されます。用途に応じて最適な材料が使い分けられているのです。

 新入社員 材料によって特徴がどう変わってくるのでしょうか。

 記者 誘電率の高い誘電体セラミックを積層プロセスで量産する積層セラミックコンデンサー(MLCC)は、小型で高容量、優れた周波数特性があります。そのため、スマートフォンやウェアラブル機器によく使われています。アルミ電解コンデンサーは、蓄えられる電荷量を表す静電容量が大きく、電子機器の中でも電源回路で活躍しています。

 最近では、電解液の代わりに導電性高分子(ポリマー)を電極材料に使う、高分子電解質による導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーや、電解液と導電性高分子を電解質に用いた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサー(ハイブリッドコンデンサー)が急拡大しています。その要因は車向けです。

 新入社員 車向けは求められる性能が変わってくるのでしょうか。

 記者 はい。厳しい環境下での使用が前提となるため、150度といった高温対応や高信頼性が重視されます。車向け電子部品の信頼性における世界基準である「AEC規格」への対応も求められます。

 新入社員 他にはどのような種類がありますか。

 記者 タンタル粉末を誘電体素子として使用しているのがタンタルコンデンサーで、ノートパソコン(PC)やゲーム機などに使われています。MLCCとアルミ電解コンデンサーの中間的な位置づけとして活躍しています。

 蒸着したプラスチックフィルムを誘電体に使っているフィルムコンデンサーは、電源分野に用いられ、ノイズ対策などで使われています。耐熱性に優れるポリプロピレン(PP)フィルムが最も使われています。

 電気二重層キャパシタ(EDLC)は、活性炭電極の表面に有機分子を吸着させ、誘電体としたものです。半導体のバックアップ電源や蓄電、回生エネルギーなどとして使われています。

 新入社員 コンデンサーの役割と各種類の特徴が分かりました。大きさはどれぐらいなんですか。

 記者 スマホやウェアラブル機器向けでは0.4×0.2ミリメートルなどの超小型なものがあります。通称「0402サイズ」と呼ばれています。用途によっても大きさはさまざまですが、最近はさらに小型な0.25×0.125ミリメートル(0201サイズ)も登場しています。電子機器を高機能化・高性能化するのに必要な部品だけに、小型・高容量の追求に加え、耐熱性の向上や長寿命化も、コンデンサーの新製品開発では重視されています。

 新入社員 日本企業も活躍しているのでしょうか。

 記者 村田製作所やTDK、ニチコン、日本ケミコンなど多くの企業が製品を展開し、それぞれが強みを発揮しています。業界団体の電子情報技術産業協会(JEITA)の統計では、2023年のコンデンサーの世界出荷金額は1兆4217億円としています。