■果汁吸われ
「繰り返し農薬を散布しても追いつかない」
今月23日、早生品種の収穫を終えたが、果汁を吸われて実がへこみ、水分不足でコルク状になったものも少なくない。例年、収穫量の数%を規格外品として廃棄しているが、今年は廃棄率が30%近くに達する。
栽培する品種の多くは、これからが収穫期。二十世紀梨などブランド品種は、被害を受けても果汁として需要があるが、一般の食用と比べて取引価格は8割近く落ちる。花田さんは「過去にない大きな被害になりそうだ」と心配する。
■暖冬で越冬
カメムシは例年、冬の寒さで死滅するが、今年は暖冬で多くが越冬。地球温暖化に伴う暑さで繁殖サイクルが早まって新世代が続々と生まれている。
鳥取県が4~7月、県内3町で捕獲調査を実施したところ、平年の37倍に相当する約9万8500匹の果樹カメムシが確認された。8月も猛暑が続いており、同県は今秋が発生のピークと予測している。
JA全農とっとり(鳥取市)によると、県内の二十世紀梨の収穫量は前年比23%減の2200トン、販売額も同20%減の10億5600万円に落ち込む見込みだ。
被害は梨以外にも広がる。和歌山県では収穫量全国トップ(昨年)の柿に影響が出ている。橋本市など栽培が盛んな4市町では、主力品種「富有柿」で、平年の30倍近い約11%の実に黒変などの異常が見つかった。
このうち橋本市など3市町を管轄する「JA紀北かわかみ」では、収穫量が昨年から最大2割減り、被害金額も最大10億円になると見込む。担当者は「未経験の事態。さらに深刻化する可能性がある」と語る。
愛媛県でも、収穫量全国トップ(昨年)のキウイで、収穫を待つ実の4割近くに果汁を吸われた痕跡が見つかった。今後の成長次第で被害の程度も変わるため、収穫が本格化する秋に正念場を迎える。
■コメも影響懸念
コメの水分や養分を吸う「斑点米カメムシ」の被害も心配されている。食害を受けると、米粒に茶色い斑点が現れて取引価格の目安となる等級が下がり、収穫量も減る。
注意報は、過去10年間で最多の31道府県(22日時点)が発表。鳥取県が先月、今年の状況を調べたところ、約7割の農地で発生が確認され、1割強だった昨年を大きく上回っていた。
農林水産省によると、果樹カメムシには畑全体を覆う網の設置、斑点米カメムシにはすみかとなる水田周りの草刈りがそれぞれ有効だが、コストや手間がかかる。抜本的な対策はなく、同省は定期的な農薬散布を推奨している。
◆カメムシ =国内には1300種類以上が生息。果樹やコメなどの汁を吸う種類は病害虫として、都道府県が警報や注意報を発表する。今春、都市部で大量発生したカメムシは、繁殖のため本来の生息地の山林に移動したとみられ、現在は山林近くの果樹園や水田に出やすい。
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