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世界で充電器の超高出力化が進む中、電気自動車(EV)の充電時間をガソリン車の給油時間並みに短縮する上で、最後のボトルネックが蓄電池である。そしてその蓄電池に大きな技術革新の波が訪れている。中国やイスラエルの電池メーカーが、“超急速充電”が可能な電池を開発し、量産も始めているのである。自動車や蓄電池メーカーの合言葉は「10分充電」だ。

 欧米では電気自動車(EV)を充電する際の出力が350kWという超高出力の充電器の設置が2018年から始まり、今では相当な数になりつつある。中国でもこの1年ほどで600kWや800kWという出力の充電器の設置数が急増し、2024年末には10万基を超えそうだ。

超高出力充電≠超急速充電

 ところが、充電器の超高出力化で先行した欧米で、EVの充電に関する各種の課題が大きく改善したという話は聞こえてこない。実態はむしろその逆で、それがEV市場の減速の要因の1つになっている。

 これには、大きく3つの理由が考えられる。(1)超高出力での充電に対応していないEVが多い、(2)超高出力充電対応車であっても、電池容量の増大に充電出力の高出力化が追いついておらず、充電時間の短縮にはつながっていない、(3)対応車でも実際には電池側の制約で、超高出力充電を十分には生かせていない─といった理由である。

 (1)については、充電時に受け入れ可能な出力の上限値を各EVが設定している。多くの場合、その値は超高出力充電の値をかなり下回るのが実態だ(表1)。例えば、日産自動車のEVである「サクラ」は上限が30kW。日本でも50kW以上の急速充電器が増えてきているが、上限が30kWではその高出力を生かせない。EVのうち、比較的安価な車種の場合、この上限値が低く抑えられているケースが多い。

表1 EVが受けられる充電器からの最大電力
(出所:日経クロステック)
表1 EVが受けられる充電器からの最大電力
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 その他の日本のEVでこの上限値が最も高いのはトヨタ自動車の「bz4X」で、150kWである。ドイツ車や韓国車のそれは200k~330kWでかなり高いが、こうしたEVはかなり高額で、出荷台数は限られている。

 次に(2)だが、こうした高額EVの蓄電池は多くが80k~100kWhといった大容量だ。中には150kWhの電池を積むEVもある。こうした大容量電池を従来の急速充電器のスタンダードだった出力50kWで充電すると、急速充電とは名ばかりで2時間弱~3時間もかかってしまう。

 欧米で充電器の超高出力化が先行したのは、大容量電池を積むEVの充電時間が、長くなりすぎないようにするためであって、充電時間を15分や10分、あるいはそれ以下に短縮するためではなかったわけだ。EVの使い勝手をガソリン車並みにするという目標の実現には程遠いのが実態である。

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