オージス総研はオリックス向けシステムでのトラブルを巡り、開発元の両毛システムズを訴えた。裁判で焦点となったのは、データの排他制御機能の扱いである。前橋地方裁判所は一審判決で排他制御機能の具備を「技術常識」と断定。「考慮する役割はもっぱら開発者」として両毛システムズの債務不履行を認めた。両毛システムズに4億1047万円の支払いを命じたが、両社とも控訴した。
大阪ガス子会社のオージス総研はオリックスから受注したシステム開発プロジェクト(オリックス案件)におけるトラブルを巡り、同業の両毛システムズを提訴した。オージス総研の発注を受けて両毛システムズが開発したシステムに瑕疵(かし)があったとして債務不履行などに基づく損害賠償、さらにはオージス総研がプロジェクト途中で両毛システムズを支援した業務に対する報酬の支払いを求めた。その額は損害賠償が21億9561万円、報酬が12億1390万円の計34億円超に及ぶ。両毛システムズも未払いの報酬5163万円の支払いを求めて反訴した。
前橋地方裁判所が2024年3月27日に言い渡した一審判決は両毛システムズに対し、オージス総研へ4億1047万円の支払いを命じるものだった。両毛システムズが求めていた5163万円の報酬の支払いについても全額認めた。オージス総研は判決を不服として4月10日に控訴。両毛システムズも11月1日に控訴したことを明かしており、現在は東京高等裁判所に舞台を移して争っている。オージス総研と両毛システムズは日経コンピュータの取材に対し、「係争中のためコメントは差し控える」としている。オリックス案件で両社の間に一体、何があったのか。一審判決から経緯を読み解く。
オリックス案件の前に不具合
オージス総研がオリックス案件を受注したのは2015年1月。低圧電力の市場自由化に向けたシステム開発だった。オージス総研はこのうち、顧客料金管理システムとWebポータルの開発を両毛システムズに発注した。2015年1月30日から12月14日までの間に計10件の個別契約を結んだ。
ところが、システムテスト工程に入った2015年10月から不具合が発生した。「処理が正常に終了しない」「Webポータルから契約者を登録できない」などだ。オージス総研は11月以降、両毛システムズの作業場に社員などを派遣したり、一部機能に関するソースコードを解析・修正したりして不具合に対応。その後も不具合は続き、2016年6月には両毛システムズが業務の支援をオージス総研に委託する覚書も締結した。
オージス総研は2017年2月、オリックスなどに対して「問題等が残っており制約付きの運用にはなるものの、手順書に従った一定の安定したレベルでのシステム維持管理が実施できる状態になったと判断できる」と完了報告した。だが判決文によると、オリックスはシステムの利用を始めたものの、2017年9月末に「中止し、他のシステムに乗り換えた」という。オリックス案件の報酬について、オリックスは「継続中の裁判について、弊社が回答するところではない」(広報)とした。オージス総研は「守秘義務があるため答えられない」との回答だった。
オージス総研と両毛システムズはオリックス案件を受注する前から協業関係にあった。話は2013年4月に遡る。オージス総研が両毛システムズに対し、オリックス向け顧客料金管理システムの元となる「共同開発ソフトウェア」の開発・販売などで協業を提案。両毛システムズが中小規模のガス販売事業者向けに提供する顧客・販売管理の総合パッケージシステム「GIOS」をベースに開発を進めることが決まり、開発に関する「共同開発契約」と、販売などに関する「共同事業契約」を締結していた。
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