2023年8月2日水曜日

(第13回)言葉がなくても交渉できる--元エクアドル大統領とハーバードチームの交渉術1  昔、ペルーとエクアドルが戦争状態でしたが、停戦合意をして和平に至る為に行われ、アメリカのハバード大学の教授による、「交渉術」と言うスキルを政治家、軍人、貴族、一般人と幅の広い層にの人がこのスキルを身に付ける事で、例えばロシアとウクライナの停戦合意を行い平和的解決も可能かも知れません。何度かロシアとウクライナは停戦合意をして平和的解決を強く望みましたが、イギリスの首相がそれをユルシマませんでした。引き続き戦争を続ける様に強引に戦争する様に交渉したのはイギリスの首相でした。

 

(第13回)言葉がなくても交渉できる--元エクアドル大統領とハーバードチームの交渉術1

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内田隆

 皆さんは自分のコミュニケーション力に自信がありますか?

 リーダーシップの古典的大家であるハワード・ガードナーもコミュニケーション力は重要なリーダーシップスキルのひとつだと述べていました。また、MIT出身でシステムに強いとしてシティバンクのCEOに指名され、80年代からのシティバンクの躍進の立役者であるジョン・リード氏(ちなみに彼がヘッドハントしたのが八城政基元シティバンク日本代表です)がMITスローンに来校したとき、「対話力」が最も大切だと話されていました。

 組織のトップならずとも、コミュニケーション力は誰もが伸ばしたいスキルのひとつでしょう。ですが「コミュニケーション力は何か?どうすれば強化できるのか?」と尋ねられても一言で答えられる人はそうは多くないものです。

 一般に、コミュニケーション力を向上させる方法として良く聞くのは次の3つです。

1.優秀な先輩営業マンなどの話し振りなどを観察したり、セミナーで話し方を繰り返し練習することで強化するロールモデル。
2.論理的に話すことで理解されやすく、かつ相手の反論を減らすことができるロジカル・シンキング。
3.人の脳は「視覚」「聴覚」「体感覚」のいずれかを中心としたシステムであることから、相手の中心システムに合わせた説明の仕方をすることでコミュニケーションを図るNLP(脳神経言語プログラミング)の手法。
 そのどれもが有効だと思いますが、各々欠点もあります。

1.ロールモデルは、自身で観察・吸収の仕組みをつくらなければいけないこと。また必ずしも良い先輩や教科書の例題が自分に合うかは不明です。
2.ロジカルシンキングは、論理的に説き伏せることに夢中になりがちで他人の感情を掴むことが疎かになりがちです。
3.NLPは、プログラム化されたパターンに従って行動することがいつも正しいとは限らないこと。例えば、子どもが何かしたときにあなたが怒ったとします。子どもには「○○すると怒られる」というパターンがプログラミング化され、○○をしなくなります。しかし、あなたがたまたま不機嫌だったり違った理由から怒ってしまい、普段だったら喜べた子どもの振る舞いだったとしても、子どもは既に怒られるとプログラミング化されているためコミュニケーションにミスが起こります。つまりそのときの心を占めているインタレスト(関心)によって、同じことを言われたとしても結果の振る舞いは異なることがあります。
以上より、第4の方法も学ぶ必要があるでしょう。と言うよりもどれか一種類学ぶだけではコミュニケーションに強くなるには不十分なのです。MITに先日寄稿された論文では4種類以上を同時に試すと4倍の確率で身につけることができるそうです。
 そこで今回と次回では4番目のコミュニケーション力としてハーバード流ネゴシエーション(交渉術)におけるインタレストをベースとしたノンバーバル(非言語)コミュニケーション手法を紹介したいと思います。(参考:インタレストについては連載第12回をご覧ください)

 コミュニケーションにおいては35パーセントが言葉、65パーセントがノンバーバルによって意志伝達が行なわれるとの研究があります。ですからノンバーバルは重要視しないといけないのですが、ジェスチャーや立ち方の姿勢または相手のふとした動作から感情やインタレストを読み取りビジネスに活かす勉強をした人はそうは多くないかと思います。

 例として、ペルーのフジモリ大統領とエクアドルのマウア大統領が初めて会談したときのことを紹介します。当時ペルーとエクアドルは西半球で最も古いと言われた国境紛争を抱えていました。
 マウア大統領にお目にかかった際、彼はこんな風に語ってくれました。
 マウア大統領 「フジモリ大統領にお目にかかったとき私は大統領に就任して4日しか経っていませんでした。かたやフジモリ大統領は就任8年、南米で最も名声を勝ち得ていた大統領でした。しかも当時エクアドルの経済状態は貧窮しており、大国ペルーとの武力抗争が勃発することは大統領としては是が非でも避けたいことでした」
 「そこで私は(ハーバード流交渉術の創始者である)ロジャー・フィッシャー教授に電話してエクアドルに来て適切な助言をしてくれるようお願いしました。そのとき、ダン・シャピロ(ハーバード交渉プログラム副責任者であり執筆者の知人でもある)にも来ていただきました」

 読者の皆さんへの質問です。

質問) 初対面時の二人の大統領の感情やインタレスト(関心)を推測してください。
 

(第14回)言葉がなくても交渉できる--元エクアドル大統領とハーバードチームの交渉術2

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内田隆

 かたや就任して四日しか経っていないエクアドルのマウア大統領(当時)、かたや南米で最も名声を勝ち得た就任八年のペルーのフジモリ大統領(当時)、この対照的な両者が西半球で最も古い国境紛争交渉を行うため初めて会談したときの二人の感情やインタレスト(関心)を考えてみたいと思います。

 ロジャー・フィッシャー教授をはじめとしたハーバード交渉チームは、マウア大統領を訪れアドバイスをしました。
 執筆者がマウア大統領とお話した際に分析した彼のリーダーシップ資質は「オープン」であり、「正直」であり、「信頼感」があり、人間関係を信頼を基に築きあげようとするタイプのリーダーでした。
 フィッシャー教授からのアドバイスの骨子は、以下の通りです。
1.フジモリ大統領と人として感情的に信頼関係を構築すること
2.年長であり経験者であり偉大なリーダーである彼を尊敬していることを伝えること、ただし自分にも大統領として応えなければいけない国民や世論があり大統領としての威厳は保つこと。
3.ペルーとエクアドルという異なる立場でなく領土問題を解決したいという同じインタレスト(関心)を持つものとして、同じ側に立ち問題解決に当たりたい同士であるとの共通認識を得ること。
 そしてロジャー・フィッシャーがマウア大統領に要求したのが、二人がひとつのソファに並んで座っている写真を撮影し報道させることでした。
 
 二人が並んで座っている様子から見られる二人の感情やインタレスト(関心)のポイントは以下の通りです。(注:下線はノンバーバルなサインであり、太字はそれが表すインタレストや心理を示します。)

■共通の感情・関心

1.左右対称的なポーズ(ミラーリング)は、二人が親密な間柄にあることを示し、お互いに相手側に身体を向け、相手を真っ直ぐ見つめていることは、互いに敬意があることを表しています。
2.二人が真剣に議論している姿が伝わってきます。フィッシャー教授は立って握手している姿(国家元首同士が合うと良くニュースで見る握手のシーン)でなく、ソファに隣同士に座って、ペンを持ち、議題か何かの草案かメモでも書かれていそうな地図やノートを共に眺めている姿とするように求めました。これにより二人は対立するのでなくお互いが紛争を解決したいという同じインタレストに向き合っている同志である印象を与えようとしました。

■マウア大統領の感情・関心

1.幾分目線の位置をフジモリ大統領よりも低くすることで、自分より目上のフジモリ大統領に威圧感や指図しているように思わせないように注意しています(これもハーバード交渉チームからのアドバイス)。
2.前かがみになり手振りを使い真剣に自分の思いまたは課題の内容をフジモリ大統領に伝えようとしています。
3.足を相手(フジモリ大統領)側に組んでいますが、これは相手に関心・好意を持っている、少なくとも持とうと努めている表れです。

■フジモリ大統領の感情・関心

1.ソファの背に深くもたれていること、アームチェアを使って空間を大きく見せていることから、フジモリ大統領は先輩国家元首としても年齢的にも自分のほうが高い位置にいると考えているおり、懐の深さや余裕を見せていることがわかります。
2.二人が隣同士に座り真剣に議論している姿から、この写真を見た両国民に二人が紛争を真剣に解決しようとしていることを伝えることができたこと足をマウア大統領から遠ざけるように組んでいることから心理的な壁を持ってこの会談に臨んだこと、つまり今度の若い新米大統領がどんなことを言ってくるのだろうと少し危惧していること、が推測できます。
3.しかしながら会話を傾聴しているうちに右掌が開かれてきたことからリラックスし始めている、つまりマウア大統領に対して感情的な繋がりを持ち始めていること、がわかります。

■結果のまとめ

つまり次の三点が言えます。
1.感情的な信頼関係が築けつつあること
2.マウア大統領は先輩であるフジモリ大統領への尊厳を態度からも(当然言葉でも)伝えていること
3.二人が隣同士に座り真剣に議論している姿から、この写真を見た両国民に二人が紛争を真剣に解決しようとしていることを伝えることができたこと。
 さらに3点目に関しては、帰国後に自国民の空気を感じたフジモリ大統領は「国民は私たちが問題を解決することを期待している」とマウア大統領に述べました。このときマウア大統領はフィッシャー教授チームの意図が完全に成功したことを実感したと仰っていました。
 
 余談ですが、「私たち」との言葉を相手に言わせたら、ほぼ勝利を手にしたと言っても良いでしょう。もう敵ではなく同じ側に立った同士であることを無意識に言わせているのですから。
 つまり、例えばあなたが他部門や他社とのミーティングで「私たち」と言ってもらえたら、それは今後の合意に向けての非常に良いシグナルだと思って良いです。逆に、例えば合併や共同創業の話をしているときにいつまでも「わが社の考えは」と言っている社長がいたら、彼とは組まないことをお薦めします。組んだあとも必ず元自社役員の立場でばかり発言し行動しますので、あなたの足を引っ張るだけです。

 このように自分の態度を上手にコントロールし相手の態度を注意深く観察することで、相手とより良い交渉合意を得られることができます。
【まとめ: ノンバーバルから読み取れる感情・インタレスト(関心)】
1.対称的なポーズ = 信頼関係、親密さや感情的な繋がり
2.熱意: 前かがみ、相手側に身体を寄せる(向ける)、手振り
3.目線の位置: 高い(フジモリ大統領、目上) > 低い(マウア大統領)
4.視線: 真っ直ぐ相手を見る = 相手への関心や敬意
5.胸前: 広く見せる = 自信 
6.姿勢: 背にもたれる、アームチェア、掌をひらく = リラックス、余裕さ

内田隆(うちだ・たかし)
マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院経営学修士(リーダーシップ、ネゴシエーション、戦略、起業を専門に学ぶ)。更に、ハーバード大学ビジネススクール、ケネディ行政大学院にてリーダーシップや組織経営を学ぶ。
在学中300人以上の世界のビジネスリーダー、国家元首達と会い、彼等のリーダーシップスタイルを独自に研究。特にビジネスリーダーシップやWin- Win型ネゴシエーションを家庭や趣味に応用した「人生のリーダーシップモデル」を独自に構築し定評を得る。
2007年株式会社フォロードリームを創立し代表取締役会長兼CEOに就任。他人を恣意的に動かすことよりもまずは自らをリード手本を示す「セルフリーダーシップ力」で社員力を経営競争力へと変える経営戦略&リーダーシップコンサルティングや講演、研修、執筆活動など幅広い分野で活躍している。
詳細プロフィールはこちらまで
HP: http://www.followdream.jp Email: info@followdream.jp

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