2023年8月29日火曜日

そっくりに真似をするだけで丸儲け! 世界中のビジネスを「コピペ」するロケット・インターネット社の全貌 & ドイツ最大級のベンチャー企業 ロケットインターネットが 「パクリ」で 得たもの、失ったもの!


From L'OBS(France) ロプス(フランス)
Text by Prune Antoine

ロケット・インターネット創業者でCEOのオリバー・ザンバー
PHOTO: HANNELORE FOERSTER / GETTY IMAGES
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アマゾンのようなECサイトでも、出会い系アプリでも、野菜の配達サービスでも、何でもあり。成功したビジネスモデルをそっくりコピペして、まだローンチされていない国で創業させる──。こんな企業が、ドイツで異様な急成長を遂げている。

最も大事なのは「効率」


ドイツの企業「ロケット・インターネット」は、創業から10年も経たずして、ネットビジネスの世界的巨人となった。同社は毀誉褒貶が激しいものの、はなはだ強力な戦略をとっている。既存のITビジネスをコピー&ペーストして、そういうサービスがまだ存在していない市場で立ち上げるのである。

「私たちの赤ん坊が生まれるのは、あそこにある仕事部屋です」

19世紀に建てられた工業ビルの6階を指差して、ヨハネス・ブルーダーが言った。ブルーダーはさしずめ父親というところか。

ブルーダーは40代で、カラフルなバスケットシューズを履いている。グーグルの元社員で、現在はロケット・インターネットの最高執行責任者(COO)を務めている。

ここはベルリンの中心部、目の前に建っているのはロケット社のオフィスビルだ。もっとも同社は目下のところ新しいビルを建設中で、完成すれば、チェックポイント・チャーリー(旧東西ドイツの国境検問所)を見下ろすオフィスに引っ越すことになる。

ブルーダーはこれから駆け足で、それも半時間足らずで、社内を案内してくれることになっていた。ロケット社は、ヨーロッパNo.1のネットビジネスのインキュベーターだ。ここで一番大切にされるのは効率で、楽しむことではない。

ブルーダーのいうかわいい赤ん坊とは、生鮮食料品の配達サービスの「ハローフレッシュ(HelloFlesh)」や、介護市場をリードする「ヘルプリング(Helpling)」などのスタートアップ企業のことだ。ロケット社は「新たな企業を創造する工場」なのである。

ブルーダーが説明する。

「製造業からヒントを得て、私たちは細かい点にまで心を配っています。私たちの会社はグローバル企業であると同時に、ドイツの企業でもあるのです」

ロケット社は「IT業界のポルシェ」を自負している。同社はまた、秘密主義に徹し、情報の漏洩を厳しく管理していることでも知られている。その上で、次から次と新時代の優良企業を生んでいるという伝説を作り上げてきた。

200以上のスタートアップをローンチ


マルク、オリバー、アレクサンダーのザンバー3兄弟によって2007年に共同設立されたロボット社は、わずか10年も経たないうちに、ヨーロッパのハイテク業界の有力企業となった。

同社は投資ファンドと企業アクセラレーターの両方の性格を兼ね備え、2014年以来、200社以上の企業を立ち上げてきた。110ヵ国以上に進出し、世界で3万6000人を雇用している。

そこには「資本主義3.0」の奇跡の成功の法則があるのだろうか。

いや、そんな誇らしげなものはない。サイトのコピーを作る、それを新たな国で展開する、そのあと事業を大金で売る。したがって、明日の世界を創造しているわけではない、複製を作っているだけなのだ。

「ネットの世界でもっとも攻撃的な男」と自称するオリバー・ザンバーが起業したのは、1999年のことだった。当時のオリバーはビジネススクールを出たてで、シリコンバレーに憧れていた。

オリバー・ザンバー
PHOTO: JOHN PHILLIPS / GETTY IMAGES FOR TECHCRUNCH

オリバーが最初に作ったクローン企業は「アランド(Alando)」。米国の巨大ネットオークション企業「イーベイ」のドイツ版だ。イーベイは、のちにドイツ市場に進出するために、アランドを4300万ユーロ(約51億円)で買収するハメになった。

そのあと、オリバーはペースを加速した。レプリカ企業が次々とオリバーの会社から生まれたのだ。

「Airbnb」のクローンは「ウィムドゥ(Wimdu)」、「Amazon.com」のクローンは「ラザダ(Lazada)」だし、クーポンサイト「グルーポン」のクローンは「シティディール(CityDeal)」だ。出会い系サイト「ミィーティック」は「イーダーリング(eDarling)」に化けた。こうしたクローン企業は数十社に及ぶ。

一番の成功は「ザランド(Zalando)」だろう。米国の「ザッポス」を真似た靴やアパレルのネット通販企業で、年間売上高22億ユーロ(約2600億円)に達し、フランクフルト証券取引所での評価額は89億ユーロ(約1兆円)だ。

ーーーー

ドイツ最大級のベンチャー企業

ロケットインターネットが 「パクリ」で

得たもの、失ったもの!


勉強の為に転載しました。
https://lexus.jp/magazine/20170517/20/exp_oyamada_02.html


ドイツ最大級のベンチャー企業が「パクリ」で得たもの、失ったもの

他社のビジネスモデルのパクリで驚異的な成長を遂げた
ロケット・インターネット社が得たものと失ったものとは。
名実ともに欧州を代表するネットビジネス企業についての
事例から見えてくる、ベンチャー企業がとるべき戦略とは?

(読了時間:約5分)
Text by Yuya Oyamada 
Photograph by Bloomberg / gettyimages
Image Credit※1
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ロケットのような猛スピードで名実ともに欧州を代表する
ネットビジネス企業に

ベルリンに「ロケット・インターネット」という会社がある。
2007年に設立されたネットビジネス関連の企業だ。
グローバルで事業を展開し、同社に関連する企業は世界で3万6000人を
雇用している。

創業から10年も経たないうちに驚異的な成長を遂げたロケット社だが、
同社は常に、さまざまな毀誉褒貶にさらされてきた。
その理由は、ロケット社のビジネスモデルのほとんどが、
他社のコピーで成り立っているからだ。具体的には、アメリカの
IT企業のビジネスモデルがネタ元だ。

例えば、ヨーロッパ最大のファッション通販サイト「zalando」は、
アメリカのザッポスのコピーだし、東南アジアの「LAZADA」は
アマゾンが元ネタだ。zalandoは時価総額50億ユーロにも上り、
ラザダは中国のアリババが東南アジアへの事業進出に際して
10億ドルで買収した。

このほかにも、アマゾンのアフリカ版コピーである「JUMIA」、
Airbnbのコピーであり日本でも事業を展開する「WIMDU」、
グルーポンのコピーである「CITY DEAL」、イーベイのドイツ版
である「Alando」など、こうしたクローン企業は何十社にも及ぶ。

ロケット社の社是はシンプルだ。「アメリカと中国以外の地域で」
世界最大のネット企業になること。こうした競争の激しい地域で
人気となったサービスを誰よりも早くコピーし、それ以外の地域で
展開させる。特にアジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの
ネットサービス後進国を重視し、本家が進出する前に市場を
制圧してしまう。

創業者はドイツ人のマルク、オリバー、アレクサンダーのザンバー
3兄弟。次男であり現CEOのオリバー・ザンバーは、
ビジネススクール在学時にアメリカのベンチャー企業の
ビジネスモデルを徹底的に研究し、『もっとも成功しているアメリカの
スタートアップ企業から学べること』という論文を発表している。

ロケット社のビジネスモデルは、日本でいう「タイムマシン経営」に近い。
アメリカでブームになったITベンチャーのビジネスモデルは、
数年後の日本でも必ず流行る。だから、その知見をアメリカから
持ち帰り、まだ誰も注目していないうちに立ち上げる。
実際、日本のネット企業の多くが、こうした起源を持つ。

つまり、海外のビジネスモデルのコピーという戦略に特段の
目新しさはない。
ただ、ロケット社は「他社の研究→コピー→リリース」という
スピードが、他社の追随を許さないほど圧倒的なのだ。

フランスの「ロプス」誌によると、コピー企業の設立にかかる時間は
たった100日。わずか3ヵ月半でサービスをローンチするだけでなく、
宣伝戦略まで立案する。ローンチから9ヵ月が経っても成長の目処が
立たない場合は即撤退という徹底ぶりだ。
「同じプロジェクトに半年以上取り組む人間は、
ロケット社にはいない」と同誌はリポートしている。

いわば、グローバルな規模で起業のPDCAサイクルを高速で回し続けている
というわけだ。

その結果、ロケット社は2014年にフランクフルト証券取引所に上場。
「過去10年のドイツ市場で最大の上場案件」と呼ばれ、
時価総額は最高で60億ユーロにも達した。
まさしくロケットのような猛スピードで、
名実ともにヨーロッパを代表するネットビジネス企業となったのである。

3年足らずで時価総額が半分以下へと落ち込んだ理由

……と、以上で話が終わればコラムとしてきれいなのだが、現実は複雑だ。

というのも、現在のロケット社は上場からわずか3年足らずで時価総額が
半分以下へと落ち込んでしまっている。いくつかの有望とされたコピー
企業が成功に至らなかったことが原因とされるが、同社の本質は、
ざっくりいえば「数撃ちゃ当たる」。失敗する時期があるのも投資家
たちには折り込み済みのはずである。

思うに、成長が鈍化した理由として大きいのは、元社員や元幹部らが、
こぞってメディアでロケット社に批判的な発言をしているからだ。

ネットで検索してみてほしい。
「給料が不当に安い」「人材を使い捨てている」「コピーには限界がある」
……。
ロケット社を紹介するほとんどの記事には、関係者たちによる
ネガティブなコメントがそえられている。どうしてこんなことに
なったのか?

すでに流行ったものをコピーし、まだ展開されていない市場に投下する。
それを幅広いラインナップで行い、会社全体として高速でヒットのPDCA
サイクルを回していく。こうしたビジネスモデルは本来、製品単位で
行われる。
「コピーキャット」と揶揄されるロケット社だが、彼らに天才的な発見が
あるとすれば、この方程式が企業単位でも通用すると証明したことだろう。

ただ、製品は失敗しても簡単に撤収できるが、会社で働くのは人である。
「成功が見込めないので素早く撤収」という決定は、ロケット社にとっては
「避けられない失敗のひとつ」かもしれないが、実際に各地で働く人々に
とっては、端的に失業にほかならない。

そんなにあっさりと切り捨てられたんじゃ、とてもやってられない――。
そんな声が出ても不思議ではない。
結果、ロケット社に協力しようという人が減っていき、社員の忠誠心も
薄くなる。「起業の高速PDCAサイクル」という成功の方程式が、
そのままリスク要因にもなってしまったのだ。時価総額の大幅な減少は、
その点が見抜かれた影響が大きいと思う。

これからロケット社はどうなるのか? 良い予測としては、コピー企業で
働く人々も自社に誇りが持てるよう、人への投資を重視するように変わって
いくことが考えられる。攻勢から治世へ。最初はイケイケだった
ベンチャー企業も、成長するに従って、こうした現実的な道筋を
たどることは珍しくない。

一方の悪い予測としては、往々にして利益優先型の企業は、苦境に陥ると
PDCAサイクルのスピードをもっと上げようとする。どんどんどんどん
事業を立ち上げては潰し、また立ち上げ……というように、
「数撃ちゃ当たる」の発想をマシンガンで行うようになる。

もちろん、それでも数々の失敗を覆すような成功が出れば問題ない。
しかし、もし運悪く、当たらない時期が何年か続けば……。
そこから先は言うまでもないだろう。

ロケット社は今、その真価が問われている。

小山田裕哉
  
Yuya Oyamada

ライター・編集者。1984年生まれ。
日本大学芸術学部映画学科卒業後、映画業界、
イベント業などを経て、フリーランスのライターとして
執筆活動を始める。扱うジャンルは幅広く、
ビジネス・カルチャー・ファッション・広告・
時事問題など、「アイドルから高級ブランドまで」
をテーマに、さまざまな媒体で執筆・編集活動を
行っている。著書に『売らずに売る技術 
高級ブランドに学ぶ安売りせずに売る秘密』
(集英社)
※1:画像はロケット・インターネット創業者兄弟の次男であり現CEOのオリバー・ザンバー氏

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