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政府は、強い放射線が飛び交う宇宙空間でも高性能を発揮する宇宙向け半導体の開発支援を本格化させる。過酷な環境でも誤作動が起きず、少ない電力で稼働する新型半導体を実用化する。人工衛星の増加に伴う需要拡大を見据え、新たな市場を開拓する狙いがある。
半導体が放射線を浴び続けると、電子機器が故障し、誤作動を起こす。衛星に使われる半導体には放射線への強い耐性が要求され、既存品は米国製が占めている。
政府が支援を本格化するのは、宇宙航空研究開発機構(JAXA(ジャクサ))と、NECの技術者が2019年に設立した新興企業ナノブリッジ・セミコンダクター(NBS、茨城県)が共同開発した宇宙向けの新型半導体。24年度予算案に、製造技術の確立に必要な開発費7・5億円を盛り込んだ。
JAXAによると、回路の配置を工夫するなどして、米国製の約40倍の放射線に耐えられるほか、消費電力を約1割に抑えられる。わずかなエネルギーで稼働できるため、宇宙機器の寿命を延ばせる可能性がある。既存品の4分の1程度の大きさで、機器の小型化にも貢献できる強みがある。
内閣府や文部科学省、経済産業省は21~23年度、JAXAとNBSの共同開発チームに開発費計4・6億円を補助し、試作品の開発を支援。放射線への耐性を高めるための基本技術を確立した。24年度からは商品化を見据え、回路を更に改良し、衛星に搭載しても稼働できるよう製造技術の開発を支援する。
内閣府によると、22年に世界で打ち上げられた衛星は2368基で、過去10年間で約11倍に増えた。地球観測衛星の場合、従来は撮影データをそのまま地上に送信していたが、近年は衛星内で画像処理をしてから送信する「衛星のデジタル化」が進む。このため高性能の宇宙向け半導体の需要は今後、世界中で高まるとみられる。
政府は、宇宙開発の優先順位を定めた「宇宙技術戦略」を今年度中に策定し、重要技術の一つとして宇宙向け半導体も盛り込む方針だ。将来的には米国製から国産に切り替え、衛星だけではなく、国際宇宙ステーション(ISS)のような大規模な宇宙施設にも採用されるよう実用化を進める。
一方、共同開発チームも市場投入に備え、購入に関心のある企業を集めた研究会を設立し、供給先の開拓を進める。新型半導体を搭載した衛星の共同開発を別の宇宙新興企業に打診中で、25年にも打ち上げて、宇宙での性能を実証する。
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