安定稼働とデータ活用を見据えたSAPモダナイズはどうあるべきか「塩漬け」では立ち行かない基幹システム問題
キンドリルがSAPシステムのモダナイズや運用支援を本格化させている。自らが約2年でモダナイズを成功させた経験を基に、日本企業固有の問題を含む移行の障壁の解消とモダンなアプリケーション運用を提案している。
長くエンタープライズITシステムの運用を支援してきたKyndryl(キンドリル)は、IBMからの分社後、顧客の多様化するニーズに対応するためにさまざまなベンダーとのアライアンスを強化してきた。その範囲はITインフラのみならず、ビジネスアプリケーションやそのインテグレーションにまで広がっている。
企業の喫緊の課題となっている、レガシーなSAPシステムの運用支援とモダナイズにも力を入れている。同社が取り組む「将来を見据えたSAPシステムのモダナイゼーション」とはいったいどういったものなのか。SAPビジネスを統括しているキーパーソンに話を聞いた。
基幹システムを「変えないこと」が安定稼働を妨げる大きなリスクに
レガシー化した基幹システムは、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する際の大きな障害だ。安定して長期稼働してきたという長所があるが、環境の変化に対応しにくく、運用コストがかさむという短所も持つ。IT人材の不足が深刻化する中、レガシー化した基幹システムの運用に人材を割き続けるのは難しく、効率の良い運用や柔軟な開発が可能なモダンな基幹システムへの変革が求められている。
中でも、製造、流通、金融、化学、通信など国内の多くの業種業態で利用されておりモダナイズが求められるシステムの一つにSAPシステムがある。旧バージョンの「SAP ERP Central Component 6.0」(ECC 6.0)の保守期限は2027年末に迫っているため、モダナイズを避けては通れない。
安定して稼働し続けることが重視される基幹システムは、長く「変えないこと」が重要とされてきた。しかし現在は「変えないこと」が大きなリスクになりつつある。「『塩漬け』は限界にきており、周辺システムを含めてモダナイズすることが重要」と語るのは、キンドリルジャパンでSAPビジネスを統括する榎木泰平氏(理事、プラクティス事業本部 アプリケーション、データ&AI事業部長)だ。
「周辺システムのアップデートに基幹システムが対応できず、塩漬けでは今後さらに運用の負担が大きくなる可能性があります」
日本のSAPシステムユーザーの多くが統合システム運用管理「JP1」や帳票作成・運用ツール「SVF」、データアーカイブ基盤である「OpenText」など、さまざまなシステムを連携させている。SAPシステムへの入力やその操作をRPAに代行させ、運用を自動化しているケースもある。そういった周辺システムをアップデートする際は、塩漬けにしたSAPシステムに合わせてバージョンや連携箇所などを調整する必要があり、その負荷は非常に高い。
SAPシステムのモダナイズで課題になる「運用」「セキュリティ」「パートナー」
榎木氏によると、SAPシステムのモダナイズを検討する際のポイントは「運用」「セキュリティ」「パートナー」の3つに整理できるという。
運用では、周辺システムの問題に加えてIT人材不足への対応やセキュリティ管理、俊敏なアプリケーション開発など検討すべき領域は広い。榎木氏が「システムごとにモダナイズを検討すると運用コストは増加する」と指摘するように、インフラやミドルウェア、アプリケーション、周辺システムなどの最適化を考える必要もある。だが、レガシーシステムの多くはそれぞれの領域をバラバラに運用していることが多く、最適化が難しい。
セキュリティについても、従来の基幹システムの考え方では対応できない状況が生まれている。かつて基幹システムは、安全性を重視してインターネットから切り離して運用するのが一般的だった。だが近年は、クラウドサービスとの連携が前提になりつつある。
「セキュリティパッチを速やかに適用し、最新の脅威に対応できる仕組みは必須です。ゼロトラストに代表されるような個別単位のユーザーアクセス、セキュリティも求められてきています。SAPシステムについてもインフラからアプリケーションまで含めて、セキュリティを適切に運用する体制が必要です」
システム刷新に当たっては、クラウドでどのように実装するのが最適なのかを判断する「アーキテクト視点」の目利きが求められる。また、アプリケーションだけでなくクラウドの知見を持つパートナーの存在が欠かせない。
「運用負荷の軽減や効率化を目指して基幹システムのクラウド移行を検討するケースは多いのですが、移行の選択肢は多いため判断が難しい。移行プロセス全体のストーリーを描き、経営層の説得まで受け持てるパートナーは多くありません。ここにキンドリルの価値があります」
インフラ構築からクラウド移行、保守運用までサポート
キンドリルには、IBMでSAPシステムのインフラやミドルウェア(Basis)の運用を担った経験が蓄積されている。近年は、SAPシステムのモダナイズを包括的に支援する「RISE with SAP」の再販やアプリケーションの運用・保守を担うAMS(Application Management Services)にも力を入れている。2024年からは日本のSAPユーザーグループ「JSUG」のプラチナパートナーになり、SAPコミュニティーを支えている。
「お客さまから頂く相談は、RISE with SAPを採用してバージョンアップしたい、オンプレミスで『SAP S/4HANA』(以下、S/4HANA)に移行したい、『Amazon Web Services』(以下、AWS)や『Google Cloud Platform』(以下、GCP)、『Microsoft Azure』(以下、Azure)などのパブリッククラウドでSAPシステムを稼働させたいなどさまざまです。ECC 6.0のバージョンアップだけでいいのか、データベースやプラットフォームの移行が必要なのか、塩漬けにするのか、SAPシステムではない別のERPに移行するのかといった議論をして、お客さまに最適な提案をします」
キンドリルが提供するSAPサービスは、インフラの構築・運用から、Basis運用、クラウド移行、アプリケーション構築、アプリケーション保守・運用までの領域にわたる。長年の運用実績とノウハウを基に、上流のコンサルティングから移行作業まで一社で担える。
「キンドリルが提案するのは、将来を見据えたSAPシステムのモダナイゼーションです。長年培ってきた知見に基づくインフラやBasisのサポートはもちろん、アプリケーションの保守といったSAPシステムを取り巻く包括的なサービスを提供可能です。コストや業務の削減を中心に業務フローを改善することで、システム運用を継続的にサポートします」
クラウド移行後の安定稼働と基幹システムデータの活用を見据えた提案
インフラの構築からアプリケーションの運用まで一貫して担うキンドリルのSAPモダナイズは、キンドリルでのSAPモダナイズ経験に基づいたアプローチだ。同社は約2年という短期間でグローバルのSAPシステムをモダナイズして運用体制を整えた。その中で、アプリケーションのモダナイズだけでなく安定稼働のノウハウを蓄積した。
システム移行を進める上でまず外せないのが、周辺システムの対応だ。SAPシステムの運用を長く担ってきた同社には、もともと帳票システムやRPA連携による自動化のノウハウがある。アップグレードやクラウド移行が周辺システムや運用にどう影響するのか判断し、運用を止めない実装方法を提案できる。
「既存の運用管理ツールや帳票運用ツール、RPAなどによるサポートを求めるお客さまは多い。キンドリルであれば、お客さま独自のルールや仕組みを踏まえて周辺システムとの連携もサポートできます」
同社のノウハウはグローバルで共有されているため、日本産ソフトウェアと連携したシステムであっても経験豊富な技術者がグローバルで運用を担う体制が整っている。
「ECC 6.0からS/4HANAへの移行でコストを削減するのは難しく、むしろ高くなる傾向があります。キンドリルは、グローバルに進出する多くのお客さまをサポートしてきたノウハウを生かして業務フローを改善し、コストや業務を最適化します。グローバル拠点を生かしたアプリケーション保守なども可能です。キンドリル自身が約2年でシステムを刷新し、コスト効率の良い体制を整えたノウハウをお客さまにお伝えしてサポートします」
主要なクラウドについての豊富な知見を活用してアプリケーションを運用できる点もキンドリルの強みだ。
「AWS、GCP、AzureをSAPシステムのIaaS、PaaS、SaaSの基盤に採用してお客さまに提供した実績があります。お客さまが利用しているクラウドを活用して既存の環境に合った仕組みを提供できます」
システムのモダナイズやクラウド移行の後は、基幹システムのデータを基にAIを活用したいと考える企業が多い。キンドリルはデータ活用基盤の整備に向けた提案も可能だ。
「システムをモダナイズすると、データを保管するための信頼性や品質だけでなくデータを活用するための頻度や鮮度が重要になります。キンドリルは、アプリケーションパフォーマンスの監視や『SAP BTP』(Business Technology Platform)を利用したAIやデータ活用など、イノベーションにつながる取り組みをサポートします」
SAPシステムのモダナイズは、保守期限が迫る企業にとって避けて通れないテーマだ。国内だけでなくグローバルでも高いケイパビリティーを持つキンドリルは、企業にとって力強いパートナーになるだろう。
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提供:キンドリルジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2024年8月17日
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