デンソーが実用化へ、レアアースが不要なスゴイ磁石の正体
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デンソーは、鉄とニッケルのみで構成しレアアース(希土類)が不要な磁石を5―10年内に実用化する方針を示した。まずは小型モーターでの採用を目指し、将来は電動車用モーター向けの実用化を視野に入れる。また従来は難しかった100度C以上での水素イオンの移動を可能にし、冷却装置の小型化が見込める燃料電池も2030年代の早い段階で実用化を目指す考えだ。
同日開いた先端技術研究についてのオンライン説明会で明らかにした。開発しているのは「鉄ニッケル超格子磁石」で、鉄とニッケルの原子を規則正しく並べることで、一般的なネオジム磁石と同等かそれ以上の性能が出せる。触媒などの工夫で初めて人工合成に成功したという。
レアアースは資源国が限られており、日本メーカーは調達リスクを抱える。レアアース不要の磁石はこの課題解決につながる。現在は材料メーカーと共同で量産化に向けた技術開発を進めている。
燃料電池では、エネルギー生成などで重要な役割を果たす水素イオン伝導体に、金属イオンなどで構成される「配位高分子」を採用。従来は水素イオンの移動に必要だった水を不要にし、100度C以上での動作を実現した。
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複数の成分を組み合わせることで、磁石の特性を細かく調整
三恵技研工業、Future Materialz(FMC)および、東北大学は2024年9月、小型モーターに向けたレアアースフリーの「強磁性窒化鉄系ボンド磁石」を開発したと発表した。このボンド磁石を用いた小型モーターは、ネオジムボンド磁石と同等の性能が得られることを実証した。
国内で消費される電力の大半はモーターによるものである。このためモーターメーカーは、レアアースのネオジウムを使った磁石を用いるなどして、モーターの効率改善を図ってきた。ただ、レアアースは供給リスクがあり、使用量をできるだけ削減した磁石の開発が求められていた。
東北大学の高橋實教授は、1972年に強磁性窒化鉄の存在を明らかにしていた。この研究成果に基づき、FMCが磁気特性や分散特性、耐蝕性に優れた高純度の強磁性窒化鉄(Fe16N2)粉末を大量合成することに成功した。さらに三恵技研がボンド磁石化技術を開発することで実現した。
開発した強磁性窒化鉄系ボンド磁石の大きな特長は、極めて強い磁力を持つ「強磁性窒化鉄」と、ネオジウムを使わない強力な磁石である「サマリウム鉄窒素」という、2つの異なる磁性成分を組み合わせて作製したことである。独自技術により、異なる磁石成分を一体化し、単一材料のように機能する磁石を作ることに成功した。複数の成分を適切に組み合わせれば、磁石の特性を細かく調整することも可能だという。
東北大学大学院工学研究科の中村健二教授は、開発した強磁性窒化鉄系ボンド磁石を用いたモーターの特性を評価した。この結果、ネオジムボンド磁石を用いたモーターと同等の特性を有していることが分かった。
研究グループは今後、開発したボンド磁石の量産技術を確立していくとともに、モーターメーカーと共同で、この磁石を使った新しいモーター製品の開発にも取り組む予定である。
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