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ヨーロッパから考える日本の国防
「日本を外から眺める」シリーズ(18)
『アジア版NATOについて』
アジア版NATOについて、
今日本で色々騒がれている。
石破首相が、
自民党総裁に選ばれる直前に、
米国シンクタンクに
日本の外交政策の将来について
論文を寄稿した。
アジアにはNATOのような
集団的自衛体制が存在しない。
そして相互防衛の義務がないため
戦争が起こりやすい。
中国を抑止するためには
アジア版NATOの創設が
不可欠だと言った。
これを読んで、
ドイツの伝統的な議論である
European army創設を思い出した。
2013年、
キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と
社会民主党(SPD)が連立政権合意後、
連立協定に、
“We strive for an ever-closer association of
European military forces which can develop further
into a European army with parliamentary oversight”
(欧州の軍隊が
ますます近くなるように努め、
いずれそれらが、議会によって
監視される一つの欧州軍と
発展するよう努める)と公約した。
欧州軍とは
一体どの国を指すのか。
「欧州」をEUとして
EU軍としよう。
EU加盟国のオーストリア、
アイルランド、キプロス、
そしてマルタの4カ国は
中立国である。
これら中立国は
軍事同盟に入ることを
国内法で禁止している。
ドイツが勝手に
変えることはもちろんできない。
あるいは、欧州軍とは、
歴史あるフランス軍、
オランダ軍など全てが解体され、
全く新しい
一つの軍のことなのか。
それとも、27のEU加盟国
それぞれの軍とは別に
28個目の全く新しい
軍組織を作るのか。
また言語はどうするのか。
ドイツ陸軍とオランダ陸軍からなる
統合戦車大隊があるが、
これは英語を
共通語としている。
ドイツ人もオランダ人も
英語が上手だからいいが、
スペイン人やギリシャ人にも
それを強制するのか。
考えただけでも無理。
なんと言っても米軍抜きの
欧州軍なんて話にならない、
と言うのは
ロシアと国境を接する
北欧やバルトの国。
ということで、
このドイツの議論はいつも
宙に浮いては沈んでいた。
2014年のロシアによるクリミア併合、
そして2022年2月から始まった
ウクライナ戦争で、
完全にこのテーマは
もう忘却の彼方になった。
米国に頼らない
EU主体の防衛強化派も、
結局頼りになるのは
NATOしかないという意見になった。
アジア版NATOなんてとんでもない、
と思うかもしれないが、
ドイツもEU軍創設と言う
とんでもないことを言っていた。
NATOのような集団防衛組織が
アジアにもあったらいいなという
願望はよくわかる。
中国が勝手に
暴走することを牽制する、
アジア的な何らかの集団防衛組織も、
また反対に、
中国とも信頼醸成を構築できるような
何らかの組織も両方必要だと思う。
アセアン加盟国の国防大臣と
日中を含む6カ国の国防大臣が集まり
防衛を議論するグループなど、
過去のいろいろな取り組みは、
結局中国の暴走を
防げなかったのだから。
台湾問題も北朝鮮核・ミサイル問題も
全く取り扱えていない。
中国が妨げていたからである。
日本が自身の防衛強化を続け、
経済力を高め、
地域の安全保障問題を二国間でなく
国際問題とし取り上げ続けること。
それと並行に
日本の集団的防衛組織創設の
議論を続ければ、
国際社会が真剣に
耳を傾けるだろう。
アジアの多国間相互防衛の
枠組みなんて不可能、と
議論もなく頭から
否定することはない。
日本のリーダーは
こういうふうに考えていることを
国際社会に示すことは大事だと思う。
そして何より
議論を続けることで、
中国がおとなしくなれば
それは結構なことと思う。
しかし今回の衆議院選挙では
与野党関わらず、
焦点は国内問題だらけで残念だった。
世界の中の日本という視点で
国民に語れる政治家は
いないのだろうか。
こんなに世界情勢が不安定な時に
選挙をやっている余裕は
ないはずなのだが。
そんなことを思いながら
在外選挙に行って投票した。
===
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感じたことを率直に
お聞かせいただけますと幸いです。
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<著者紹介>
バルダオフ七重
東京出身、2014年より
ルクセンブルグ在住。
NATO国防大学
シニア・アソシエート・フェロー
(ローマ、イタリア)
国連大学地域統合比較研究所UNU-CRIS
アソシエート リサーチ フェロー
(ベルギー・ブリュージュ)
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員
ルクセンブルグ大学で学び、
ゲント大学(ベルギー)で博士号
(PhD in Political Sciences)取得。
国際交流基金の日本研究フェロー
(2021年度)。
国際安全保障産業協会
(ISICジャパン)の役員を務める。
東京では国連大学本部で
国際法務部、外資系金融機関に勤務。
ボストン音楽院卒業。
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社会民主党(SPD)が連立政権合意後、
連立協定に、
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European military forces which can develop further
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(欧州の軍隊が
ますます近くなるように努め、
いずれそれらが、議会によって
監視される一つの欧州軍と
発展するよう努める)と公約した。
欧州軍とは
一体どの国を指すのか。
「欧州」をEUとして
EU軍としよう。
EU加盟国のオーストリア、
アイルランド、キプロス、
そしてマルタの4カ国は
中立国である。
これら中立国は
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国内法で禁止している。
ドイツが勝手に
変えることはもちろんできない。
あるいは、欧州軍とは、
歴史あるフランス軍、
オランダ軍など全てが解体され、
全く新しい
一つの軍のことなのか。
それとも、27のEU加盟国
それぞれの軍とは別に
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<著者紹介>
バルダオフ七重
東京出身、2014年より
ルクセンブルグ在住。
NATO国防大学
シニア・アソシエート・フェロー
(ローマ、イタリア)
国連大学地域統合比較研究所UNU-CRIS
アソシエート リサーチ フェロー
(ベルギー・ブリュージュ)
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員
ルクセンブルグ大学で学び、
ゲント大学(ベルギー)で博士号
(PhD in Political Sciences)取得。
国際交流基金の日本研究フェロー
(2021年度)。
国際安全保障産業協会
(ISICジャパン)の役員を務める。
東京では国連大学本部で
国際法務部、外資系金融機関に勤務。
ボストン音楽院卒業。
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