(写真:EE Times Japan)
米GlobalFoundriesとイスラエルのTower Semiconductor、そして恐らく中国の一部の企業は、AI(人工知能)や、量子コンピューティングなど他のアプリケーションにけん引されるシリコンフォトニクスの需要の波に備えている。 画像はイメージです この新興技術は、ティア2ファウンドリーに競争上の優位性をもたらし、米中間の半導体競争を変化させる可能性がある。米国のシンクタンクであるCenter for Strategic and International Studies(CSIS)の報告書によると、中国政府では、シリコンフォトニクスが、米国が主導するEUV(極端紫外線)リソグラフィツールの輸出禁止措置によって中国の先進チップ製造の進展が鈍化している状況を回避するのに役立つと考える人もいるという。 フランスの市場調査会社であるYole Group(以下、Yole)によると、シリコンフォトニクス市場は小規模だが、年平均成長率(CAGR)42%で成長し、2029年までに8億5000万米ドル規模に達すると予測されるという。主な成長要因は、最新の800Gトランシーバーと、膨大なデータを伝送するために光ファイバーネットワークの容量が増加していることによる需要増にある。 香港のSouth China Morning Post紙は2024年10月、中国の国営JFS研究所は、シリコンフォトニクス開発における「マイルストーン」を発表したと報じた。米国による制裁が続く中、シリコンフォトニクスは、中国がチップ設計における技術的障壁を克服し、国内のサプライチェーンを強化するのに役立つ可能性がある。 シリコンフォトニクスを製造するファウンドリーは、最先端のプロセス技術を使わずとも、低消費電力で高速データ伝送が可能なチップを製造できる。この新技術は、電子の代わりに光を生成することでデータ伝送を高速化し、AIデータセンターのエネルギー消費を削減する。 Yoleによると、AIの機械学習データセットは非常に大きくなっており、サーバのデータ伝送には光伝送が不可欠になっているという。 Yoleのフォトニクスアナリストを務めるMartin Vallo氏は米国EE Timesのインタビューで、「GoogleやAmazonなどのハイパースケールデータセンターの顧客は、2023年3月から、AIチップのトップメーカーであるNVIDIAと提携して800Gトランシーバー増やし始めた」と語った。 「これによって800Gトランシーバーの需要が急増し、注文と補充が継続的に増加しており、業界の動向が根本的に変化した」と同氏は述べる。 800Gトランシーバーは、従来の400G世代の2倍の伝送容量で、AIインフラや大規模なAI/ML(機械学習)クラスタで超高速かつ高帯域幅の通信を実現する。
ビット当たり1pJも視野 GlobalFoundriesのプロセス
GlobalFoundriesのシニアディレクターを務めるVikas Gupta氏はEE Timesのインタビューで、「より高いデータレートとより低い消費電力はデータセンターの成長の鍵となっており、シリコンフォトニクスが優位に立っている」と述べている。 今日のデータセンター向けフォトニクス部品の多くは、スイッチやGPUボードに挿入可能な標準プラグを備えている。このプラガブルな形状は、シリコンベースのCo-packaged Optics(CPO)に移行しつつあり、変換インタフェースはコンピューティングにより近くなっている。 Gupta氏は、「これらのインタフェースは電子機器の近くに配置されているため、消費電力を削減できる可能性があり、(システム設計者は)銅トレースで発生しているシグナルインテグリティ損失の全てを、ボードレベルでも考慮する必要がなくなる。シリコンフォトニクスには、次世代データセンターに必要なデータレートを維持または向上させながら、データセンターの損失を大幅に削減する能力と機会がある」と述べている。 エネルギー効率の典型的な指標は、ビットあたりのピコジュールである。 「シリコンフォトニクスを使用したCPOは、エネルギー効率を1ビットあたり5ピコジュール以下に下げることができる。さらに、1ピコジュールまで下げることも可能だ」とGupta氏は述べている。「当社の顧客は既に、シリコン上でビットあたり5ピコジュールを実証している。次世代では、5ピコジュールをはるかに下回ると期待している」(Gupta氏) Gupta氏はさらに、「GlobalFoundriesには、プロトタイプフェーズが完了間近の顧客テープアウトがいくつかある」と付け加えた。 同氏によると、少なくともトランシーバー側、データ通信側では、生産開始の準備ができている顧客が数社ある段階だという。 GlobalFoundriesの米PsiQuantumやオーストラリアDiraqといった量子コンピューティングの顧客は、フォトニクスを購入している。PsiQuantumは、GlobalFoundriesのニューヨーク州マルタ工場で、標準的な45nm窒化ケイ素フォトニクスプロセスでフォトニックチップを製造している。 ただし、量子コンピューティング企業は、生産を開始するためにGlobalFoundriesのファブに独自のツールを設置する必要がある。
変調器の材料としては勢いを失っているシリコン
Gupta氏は、「シリコンは、変調器などの材料としては勢いを失っており、薄膜ニオブ酸リチウムやチタン酸バリウムなどの他の材料が登場すると予想される。また、レーザー用もしくは半導体光増幅器としてシリコンフォトニクスダイにリン化インジウムを加える必要性が出てくることも考えられる。非シリコンベースのこれらの異種材料を使用するとなれば、シリコンフォトニクス固有の設備に刷新する必要が生じる。シリコンフォトニクスのためにシリコンを異なる材料に異種接合するとなれば、特定のツールが必要になるだろう。それをファブ内で行うか、ポストファブで行うかは、技術によって異なる。現時点では、シリコンフォトニクスのファブ内でのツールの使用がかなり多い」と述べている。 組み立ておよびテスト企業は、サプライチェーンのボトルネックの一つである。 Gupta氏は、「OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)企業は、フォトニクスが著しく成長している市場であり、同市場に参入する必要があることを認識している」と述べている。 ※米国EE Timesの記事を翻訳、編集しました。
EE Times Japan
0 コメント:
コメントを投稿