https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00745986
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iPSオーダーメード早く安く
患者自身の細胞から作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)を再生医療に用いる。その実用化に向けた取り組みを京都大学iPS細胞研究財団(iPS財団、京都市左京区、山中伸弥理事長=京大教授)が進めている。「my iPSプロジェクト」と呼ばれる事業で、4月、大阪市北区に同プロジェクトの臨床用iPS細胞製造施設を開設した。取り組みは新たな段階を迎えている。
my iPSプロジェクトは2019年、山中教授が講演で目標を示したのを機に始まった。患者本人由来のiPS細胞を「自家iPS細胞」という。他人の細胞から作製したiPS細胞と違い、自家iPS細胞を用いると免疫拒絶のリスクを最小化できる。患者の病態に合わせ、作製したiPS細胞を治療に必要な細胞に変化(分化)させ、オーダーメードの分化細胞として提供できるのも利点だ。
従来、iPS細胞は手作業で作製してきた。手作業では1人分のiPS細胞の作製に半年ほどかかり、製造費は数千万円とされる。より多くの患者に提供するには、特別な訓練を積んだ熟練の作業者が何人も必要となる。しかも1人分だけではなく、多人数分を同時かつ個別に作製しなければならない。
こうした時間とコストの課題を解決しようと、iPS財団はiPS細胞や分化細胞を自動で作製する技術開発を進めている。「細胞製造を産業にしていくには、自動化は避けて通れない」とiPS財団の塚原正義研究開発センター長は説明する。装置の中から細胞を取り出すことなく培養する「閉鎖型自動培養装置」を使うことで、患者本人の血液から1人分の自家iPS細胞を約3週間で作製できる。製造費は100万円程度(ただし原材料費だけで計算)で済む。実際の治療では、これに分化細胞の製造費や治療費、入院費、薬剤費などが加わる。今後、医療費全体をさらに減らす取り組みも必要となる。
4月、未来医療国際拠点「中之島クロス」(大阪市北区)の6階に臨床用iPS細胞製造施設「Yanai my iPS製作所」を開設した。7階には24年に先行して開設した研究施設「my iPS研究所」がある。細胞製造施設は10日に医薬品医療機器総合機構(PMDA)による適合性調査を受けた。許可を得た後、臨床用の自家iPS細胞の製造を始める。細胞製造施設の自動製造室には閉鎖型自動培養装置が現在13台あるが、順次増やす。100台あれば年間1000人分の自家iPS細胞が作製できるようになるという。塚原センター長は「臨床用の『my iPS』(自家iPS細胞)を自動で作れる施設が初めてできた。最初のスタートラインに立てたことは大きい。(自家iPS細胞を用いた再生医療が)世界中に広がっていくための先駆けになれれば」と語る。
今後は早ければ28年の臨床研究・治験を目指す。対象の疾患は企業の関係者や大学の研究者、病院の医師らと相談して決めるが、難治性疾患や希少疾患を想定する。塚原センター長は「iPS細胞でないと、自分の細胞でないと本当に治せないという患者のためにやっていきたい」と話している。
(2025/4/11 13:00)
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