2020年1月28日火曜日

脱北者に染色体異常 核実験による放射能汚染か 韓国政府は発表せず

https://newsphere.jp/national/20191011-1/
シェアしました。

2018年に爆破された豊渓里核実験場|Voice of America / Wikimedia Commons
 韓国統一省が、北朝鮮の核実験場がある豊渓里(プンゲリ)近くに住んでいた脱北者から深刻な放射線被ばくの証拠を見つけていたと、韓国紙が報じた。核実験場の土壌や地下水が汚染されていると見られ、汚染された水が川を通じて海に流れ出ているという見方もある。
◆脱北者が被ばく 核実験場に異変?
 朝鮮日報(英文記事)によれば、統一省が調べた、豊渓里近くに住んでいた脱北者10人の体内における被ばく線量は、250ミリシーベルトを超えるものだったという。これは染色体異常を引き起こすのに十分な値だとしている。通常の生活をしている人がさらされる放射線量は、世界平均で年間2.4ミリシーベルトだ。
 5人からは、7~59の染色体突然変異が見られ、放射線レベルは279~1386ミリシーベルトだった。最も被ばくしていた48歳の女性は、豊渓里からわずか23キロのところに住んでいたという。豊渓里では、2006年から2017年までに6回の核実験が行われていた。
 韓国科学技術院のチョン・ヨンフン氏は、このような被ばくが通常の状態で起こるはずはないとし、核実験場のトンネルが崩壊している可能性を指摘する。どのように現場が管理されているのか早急なチェックが必要だと述べている。韓国統一研究院の元院長キム・テウ氏は、豊渓里のある吉州(キルジュ)などの住民は飲料水を地下水に頼っているとし、核実験場を通過する地下水が放射性物質に汚染されているという考えを示した。さらにこの水が黄海に流れ込んでいるという情報もあるという(朝鮮日報)。
2018年に爆破された豊渓里核実験場|Voice of America / Wikimedia Commons
◆ダブルスタンダード? 韓国政府は重視せず
 2017年12月のニューヨーク・タイムズ紙(NYT)の記事によれば、すでに同年10月に韓国政府が豊渓里近くに住んでいた脱北者の健康調査に乗り出していた。同年9月に北朝鮮はこれまで最大の核実験をしており、放射性物質の放出が懸念されていたためだ。
 健康調査によれば、北朝鮮の核実験が始まった2006年以降に韓国に来た吉州出身脱北者は114名いたという。しかしいずれも韓国に到着したのは9月の大規模核実験の前だったこと、また調査に参加したのは30人ほどだったため、一部に高い放射線被ばくと染色体異常が認められていたが、決定的な調査結果を出すのに十分な医学的データが得られなかったと報告書は述べていた(NYT)。
 今年の調査で、核実験場付近の放射能汚染の可能性がさらに高まった。しかし統一省関係者は、2017年の調査では核実験と放射能汚染の関係は見つからず、昨年の追加調査でも同様の結果となったため、別途発表する必要はないと決めたと主張している。
 朝鮮日報はこの発言に対し、福島の原発事故で出た放射性細塵への日本の対応に韓国政府が払う特別な注意とは対照的だと述べる。福島の放射線レベルはいまでは年間1ミリシーベルトにまで落ちており、ソウルと同じだと指摘している。
◆鉱山でも汚染? 北側の被害には打つ手なし
 米議会出資の短波ラジオ局、ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、放射能汚染は核実験場だけでなく、ウラン鉱山でも起こっているとする。平安南道のトンガム村にあるウォルビサン鉱山では防護用装備なしで労働者が働かされており、住民は鉱山周辺を水源とする水を飲んでいるという。
 鉱山の労働者と家族のなかには、不治の病やガンなどにかかる人が増え、不妊症や奇形児の出産なども見られるという。こういった症状は、医学的にも放射能の影響によるものだと考えられると東国大学校の元教授Kim Il-jung氏は指摘している。
 同氏は、北朝鮮政府による一刻も早い調査が必要だとしているが、原因究明のための調査や被害者への補償などはまったくされていないと、RFAへの情報提供者は述べている。

0 コメント:

コメントを投稿