https://news.mynavi.jp/techplus/article/20211029-2172888/
東京大学(東大)は10月28日、「TEMPO酸化セルロースナノファイバー」(TEMPO酸化CNF)の特異なナノ構造を利用することで、分子チャネル構造を有する新しい全固体リチウムイオン電池(全固体LIB)を開発し、高い伝導率と高い輸率を有しつつ、安定性のある新しい全固体電池製造とその基本コンセプトの構築に成功してそのメカニズムを解明したことを発表した。
同成果は、東大大学院 農学生命科学研究科 生物材料科学専攻の磯貝明特別教授のほか、米・メリーランド大学、米・ブラウン大学、米・フロリダ州立大学、米・ニューヨーク市立大学、独・ミュンスター大学、米・陸軍研究所の総勢24人の研究者が参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」に掲載された。
リチウムイオン電池の活用が進み、その課題も見えてきており、新たな二次電池の開発が求められるようになってきた。そうした次世代二次電池として期待される中に全固体リチウムイオン電池(全固体LIB)があるが、既存の固体イオン伝導体は、無機型と高分子型の2種類に大別され、そのどちらも得手不得手が存在していることから、全固体LIBの完全な完成には至っていないという。
そうした中、今回の国際共同研究では、TEMPO酸化CNFの特異的なナノ構造を活かして、独自の分子チャネル構造を形成することで、高性能固体高分子イオン伝導体の調製に成功したという。
TEMPO酸化CNFは、植物のセルロースのTEMPO触媒酸化反応により、約3nmの極細均一幅を有した植物が生合成する結晶性セルロースミクロフィブリル単位にまで、完全に分散化された新規バイオ系ナノ素材。再生産可能な木質バイオマスを原料とし、CO2の固定化物である新素材としての多面的な基礎研究が進められているとともに、さまざまな機能材料としての実用化に向けた研究開発が、日本を含む世界中で進められている。
今回の研究では、CNFは通常はイオン絶縁性であることを踏まえ、TEMPO酸化CNF内のセルロース水酸基に銅イオン(Cu2+)を配位させることで、セルロース分子間を微小であるが適正な間隔に拡幅。TEMPO酸化CNF内に分子チャネル構造を形成することで、セルロース分子鎖に沿ったLi+の高速輸送を可能にしたという。
その結果、室温において、従来の高分子材料の10~1000倍となる1.5×10-3S/cmという高いLi+伝導率を達成。それに加え、Cu2+配位セルロースイオン伝導体により、0.78という高い輸率(従来の高分子では0.2~0.5)も実現されたという。
また、Li-金属アノードと高電圧カソードの両方に対応できる4.5Vまでの電気化学的安定性が示されたという。これは、薄い固体電解質として利用可能であることを示すものであるとともに、低イオン伝導性が課題であった厚い固体電極にも適用可能な高イオン伝導性バインダーとしても利用可能であることを示すものであるという。そのため研究チームでは、今回の結果は、安全で高性能な全固体LIBの基本設計コンセプトを提案でき、同時にその機能発現機構を解明するものであるとしている
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