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アリババグループの創業者であるジャック・マー氏が中国の浙江省・杭州市のアパートでAlibaba(アリババ)を立ち上げて以来、常に進化し、国際的に知られるeコマース帝国を築きました。
アリババの成功には7つの理由があります。最も大きな理由の1つは、掲載料撤廃による販売者(セラー)の獲得です。また、アリババが継続して行っているイノベーションへの取り組みもその1つです。アリババの画期的な成功を可能にした7つの理由を紹介します。
アリババの歴史、21年間を振り返る
アリババは1999年に杭州市のジャック・マー氏のアパートで設立、同年末に「Alibaba.com」が立ち上がりました。
アリババの目論見書によると、中国のインターネット利用者数が8,000万人に達した2003年にオンライン市場「Taobao.com(淘宝網)」をスタート。その後、決済アプリの「Alipay」と「Aliwangwang」(Taobao版インスタントメッセンジャー)をローンチし、「Taobao.com」での購入体験を向上させました。
2007年には、中国のインターネットユーザー数が2億1,000万人に増加。広告取引プラットフォームとして、「Alimama」がスタート。合わせて、「Taobao」は収益化を加速しています。また、アリババはBtoCとCtoCの両方のプラットフォームを運営していたことから、2008年にオンラインショッピングモール「Tmall(天猫)」を立ち上げました。
2009年には、「Alibabaクラウドコンピューティング」を設立。戦略の一環としてビッグデータを優先する方針を掲げました。
2010年には、アリババがモバイル決済に注力するため、次の3つのプラットフォームを立ち上げました。「Juhuhuasuan」(C2B向けプラットフォーム)、「AliExpress」(グローバルな消費者向けマーケットプレイス)、「モバイルTaobaoアプリ」です。
成功の核となる要素①:アリババ独自のビジネスモデル
アリババが主に中小企業や個人に提供しているサービスは、中小企業の生産力を底上げし、消費者により多様な選択肢を提供するという、独自のビジネスモデルです。
アリババの3つのコアビジネスである「1688」(BtoB向けECプラットフォーム)、「Taobao.com」、「YiDaTong」(中国最大の輸出入専門代理店)は、いずれも小規模企業にサービスを提供することに重点を置いています。個々の企業で実現するには不可能な価値をアリババが提供しているのです。小規模企業が集まれば、完全なECのエコシステムが完成します。
小規模企業に焦点を当てることで、多種多様な商品がさまざまなタイプの消費者に提供されています。2014年、アリババのプラットフォームでは、23億元(約3,300億ユーロ、約3億4,000万ドル)相当の取引がありました。
成功の核となる要素②:アリババの“型破りな”収益モデル
アリババは、プラットフォームへの掲載料ではなく、マーケティングと技術サポートのサービスに課金するビジネスモデルを展開しています。これにより、忠実な顧客と、大きくて強固な市場シェアを獲得しているのです。
アリババの利益の源泉は主に広告とキーワード入札で、総利益の57%を占めています。2番目の利益源(25%を占める)は、消費者行動のビッグデータに基づく技術サービスです。
中間手数料を撤廃し、出品者が無料で登録できるようにしたことで、中国企業にオンライン取引の習慣を根付かせました。一方、「eBay中国」は、プラットフォーム取引において手数料を徴収しています。「Taobao」は多くの販売者を集結させることで、さらに多くの消費者を獲得することに成功したのです。
現在、アリババのプラットフォームは登録ユーザー数5億人以上。2億3,000万人以上のアクティブユーザーと、800万以上の積極的な販売者を抱え、年間注文数は110億件を超えているそうです。アリババのプラットフォーム上には、数多くの顧客が存在するため、広告、キーワード入札、顧客データを自社の利益につなげています。
成功の核となる要素③:信頼できるクレジットモデル
顧客の間で評判が高いのが、アリババの正確なクレジットモデルです。ECプラットフォーム上のすべての販売者は、身元情報を確認するためにオンライン認証テストへの適合が求められます。これにより、販売者をプラットフォーム上で常に監視することが可能になり、違法取引を減らすことができます。
それとは別に、すべての取り引きが記録され、販売者と購入者の両方がトラッキングすることが可能です。そうすることで各取引が保護され、購入者はより信頼できる出品者を選ぶことができるのです。
さらなる安全性のため、支払いはまず「Alipay」に転送し、購入者が商品を良好な状態で受け取ったことを通知した時にのみ、販売者に送金します。2013年に「Alipay」のユーザー数は3億人を超え、取引件数は9,000億元(約1,280億ユーロ、約1,350億ドル)に達しました。携帯端末のアクティブユーザーは1億人に達し、「PayPal」のユーザー数を上回っています。
また、オンラインでのフィードバックが積極的に奨励するシステムが構築されています。購入者が投稿したレビューには割引クーポンを付与し、レビューをすればするほど、割引クーポンを獲得できます。購入者レビューは、他の消費者の総合的な購入体験と意思決定プロセスに役立ち、購入後の不平・不満を減らすことができます。
成功の副次的要素①:顧客満足度を高めるサポートサービス
アリババは、快適な購買環境とオンラインで優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することで、高いユーザーエンゲージメントを実現しています。またアリババは、販売者が購入者と積極的な交流を維持できるように支援すると同時に、顧客満足度を確保するための一連のサポートサービスを提供しています。
これらのサポートサービスには、販売者向けのオンラインビジネストレーニングの提供、プラットフォーム上の多数の店舗を管理するための特別なコーディングシステムの導入、販売者と購入者間のより良いコミュニケーションを促進する独自のインスタントコミュニケーションツールの開発、購入から7日以内であれば全額返金などがあります。これらのサポートサービスにより、より多くの取引が発生するようになっているのです。
成功の副次的要素②:ビジネスチャンスへの感度
アリババはユニークなビジネスチャンスを見極め、それをつかむことに長けており、その結果、顧客のロイヤルティを高めることに成功しています。「独身の日」は、中国の国慶節とクリスマスの間の11月11日に行われます。ほとんどの消費者は通常、この期間中のショッピングを避けていましたが、Taobao.comはその日をショッピングの祭典にすることに成功したのです。
2014年の「独身の日」には、開始3分以内に「Tmall」上で10億元以上の取引がありました。「『Taobao.com』では、15億元以上の収益と5億元(約7,100万ユーロ、約7,500万ドル)以上の純利益を生み出した」とアリババは発表しています。
また、「独身の日」の期間中、広告やソフトウェアサービスに対する「Tmall」での販売者のニーズが大きく増加しました。このようにアリババは、「独身の日」から莫大な利益を得ています。
成功の副次的要素③:新しいビジネスモデル
アリババは、従来の取引パターンを積極的に見直し、顧客のニーズに応じて、より多くの価値を創造するための方法を模索しています。
CtoB(Consumer-to-Business)モデル
アリババは、従来のサプライチェーンコストを削減し、商品の回転に必要な時間を短縮することで顧客満足度を高める、CtoBモデルを展開しています。アリババは、同じようなニーズを持つ消費者を集めて、単一の商品を卸売価格で購入できる強力な購入者グループを形成します。さらに、膨大なオンライン顧客行動データを活用して、特定の顧客の習慣に適した商品も開発しています。
OtoO(Online-to-Offline)戦略
アリババのシステムでは、消費者は二次元コードをスキャンすることで商品を購入することができ、別のコードで商品の受け取りを報告することもできます。また、消費者は指定されたコードをスキャンすることで、ターゲットを絞った広告を受け取ることができると同時に、さまざまなブランドの取り組みに参加することも可能です。
アリババはOtoOサービスの成長を加速させるために、「Alipay Wallet」を通じたモバイル端末のドメイン利用を積極的に行い、銀行と提携してコードスキャンや現金移動による決済サービスも提供しています。
成功の副次的要素④:統合されたエコシステム
アリババは単なるEC企業に留まらず、販売者にはより簡単な取引方法を紹介し、購入者には積極的な購買体験を促すことで、優れたサービスの提供をめざしています。
そして、ポジショニングにおける目標を達成するために、広告サービス、物流ネットワーク、金融サービス、モバイル端末サービスなど、さまざまな領域でコアビジネスを拡大しています。
Alimama
アリババのBtoBオペレーション向け広告プラットフォームです。広告主に向けて、「Alimama」に利用可能な広告ポジションをリストアップし、購入してもらうことができます。
ビッグデータの利用
アリババは、他のドメイン(地図、天気、タクシー、音楽、旅行など)のソフトウェア企業を買収することで、消費者の日常生活のほぼすべての側面をカバーする包括的なデータを統合しています。これらのデータは、広告主が自社広告の掲載に最も適切なウェブサイトを選択し、効果的に消費者にリーチするのに役立っています。
Taobao Ke(淘宝客)
「Taobao Ke」は、商品プロモーションで販売者を支援する会員で構成し、「販売あたりのコスト」で課金するアフィリエイトサービスです。会員は、興味のありそうな消費者を見つけ、セールストークを通じて販売者の商品を購入してもらったときにのみ手数料を受け取ります。
ビデオとモバイル端末の統合
「Taobao」は2014年4月、中国最大の動画サイトを運営する企業の発行済株式16.5%を取得。デスクトップパソコン、モバイル端末での動画の強みを生かして、消費者と広告のインタラクションを可能にしました。消費者が動画広告を見ると、「Taobao」はゲームやクーポンなどさまざまな形で関連情報を携帯電話に送信し、視聴者のクリックを誘います。
Ali Micro Finance
「Ali Micro Finance」は、伝統的な銀行からの融資を得ることが困難な小規模団体に少額預金と融資を提供しています。プラットフォームから収集した顧客行動データをビジネスに変換し、「Ali Micro Finance」に小口融資を申し込む資格がある小規模企業に関して、信用格付けを細かく分類しています。
中国スマートネットワーク(CSN)プロジェクト
「CSN(China Smart Logistic Network)プロジェクト」は、アリババが中国で最も影響力のある物流会社4社と協力して立ち上げたもので、購入後24時間以内に商品を購入者に届けることを目標としています。異なる物流会社のそれぞれの物流ネットワークを統合し、配送の回転率の観点から、最も効果的な単一のネットワークを形成しました。
データ分析に基づき、アリババはネットワークのさまざまな部分において、最適な物流会社を選択します。また、消費者は配送希望のリスト(最速、最安、安全、最高のサービスなど)から選択することができ、CSNはそれに応じて、対応する強みを持つ「適切な」物流会社を配置しているのです。
責任あるイノベーション
アリババは過去10年間の成功を受けて、責任あるイノベーションに力を入れてきました。
実際、貧困地域の農作物のオンラインプロモーションやブランディングを提供しており、貧困地域の人々がビッグデータに基づいて競争力のある商品を栽培できるように支援しています。アリババは、農業技術を統合することで、地域の栽培基準、商品の品質、物流効率を向上させています。またアリババは、ライブストリーミングプラットフォームを利用して、貧困地域で作られた高品質の農作物を販売できるように支援しています。
不平等を減らすために開発するプログラム
アリババのイノベーションの主な目的は、恵まれない都市や人がプラットフォームを通じてビジネスを創造し、実行し、発展させることを可能にすることです。特に、西側に比べてまだ未発達な中国西部が対象です。
アリババは「Taobao教育情報プラットフォーム」を構築。最高の教師(や授業)をオンラインで共有することで、都市部と農村部の教師格差の解決策を模索しています。女性の雇用と起業家精神を支援するための特別プログラムもあり、すでに以下のような実績があります。
グローバルなグリーン開発を推進
「Alipay」のオンラインおよびモバイル決済プラットフォームは、食料品から自転車のレンタル、資産管理商品まで、あらゆる支払いに10億人以上の人々が利用しています。
2016年8月、アリババはそのデジタル技術の力を気候変動対策の推進に使い始めました。モバイルアプリで開始した「Alipay Ant Forest(蟻の森)」プロジェクトでは、自転車通勤やペーパーレス化、持続可能な商品の購入など、排出量を減らすための一歩を踏み出すたびに、ユーザーへ「グリーンエネルギーポイント」を与えています。このグリーンエネルギーポイントは、ユーザーのアプリ上で仮想の木に成長し、成長に応じてAlipayが、地元のNGOと協力して本物の木を植えたり、保護地域を守る活動を行います。
「Alipay Ant Forest」はサービス開始以来、5億人以上のユーザーを集めました。中国北西部に1億本の木を植え、総面積11万2,000ヘクタール、総面積1万2,000ヘクタールの自然保護区を守ってきました。
また、農家と協力して木を植えたり、有機農作物を開発したり、ECプラットフォームと連携したりすることで、約40万人の雇用機会を創出し、6,000万元(約840万ドル)の収入を生み出しました。
アリババはまた、グリーンパッケージ、グリーン倉庫流通、グリーンインテリジェンス、グリーンリサイクルなどの具体的な施策を通じて、物流業界のグリーン化を推進することで、総二酸化炭素排出量の改善にも取り組んでいます。
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