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■FOSTEX GX100で聴くとこもった音だが……
初めてPMA-2000SEを聴いたときのスピーカーはFOSTEX GX100だった。このときは店員さんがセレクターの操作をまちがえ、たまたまPMA-2000SEに繋がっただけだ。
「クレルでFOSTEXを鳴らしてみよう」
そう思い、店員さんにお願いした。だからクレルの音が鳴るとばかり思っていたので、最初に音が出た瞬間、「何このこもった音は?」と驚いた。で、「おかしいんじゃないですか?」と店員さんに確認したら、まちがってPMA-2000SEに繋がっていたというわけだ。このときは2小節ほど聴いただけでうんざりし、すぐほかのアンプに切り替えてもらった。
2度目にPMA-2000SEを聴いたのは別の店のDENONコーナーだ。そこではDENONが扱うデンマークのスピーカー、DALI IKON 2と単独で繋がれていた。一聴しただけで、前回の音とはまるでちがうことがわかった。
以前のようなこもり感はなく、中高域の見通しがとてもいい。シンバル類もあざやかで、そのせいか前より解像度が高く感じる。音色的には、低域の押し出しだけでなく繊細さや透明感もカバーしたPMA-SXのテイストに近い。問題の低音もベースの輪郭がきれいに出ており、DENONならではの低域の力感と相まってかなりよかった。
「ほう、DENONの2000番はSEバージョンで相当変わったんだな」
そう感じた。
■あの音はいったい何だったのか?
これで終われば話は簡単だ。だが当然、疑問も残った。なぜ初めて聴いたときにはあんな音だったのか? 1回目の試聴環境は2回目と異なり、スピーカーとアンプはセレクターを介して繋がれていた。そしてもう1点は当たり前だがスピーカーがちがうことだ。
実は2度目の試聴時のDALI IKON 2を聴いたのは初めてだった。だから私はあのスピーカー単体の音の傾向を知らない。ゆえにアンプの音との切り分けができない。
あのこもり感のなさや中高域の見通しのよさ、低域に輪郭が刻まれるクッキリ感がもしスピーカーの属性だとすれば、私はアンプの音を聴いたのではなくスピーカーの音を聴いていたことになる。これではPMA-2000SEを正確にジャッジしたことにならない。
■よさを殺し合う音、生かし合う音
で、今度はそれを確かめるため、後日また別のショップへ行ってみた。この店はセレクター方式だが、そのぶん次々に別のスピーカーに切り替えられるので実験には向いている。ただしスピーカーは棚置きだから、そのぶんは割り引いて考える必要はあるが。
さて、どのスピーカーから試そうか? ちょっと考え、PMA-2000SEが得意そうなロックがうまいMONITOR AUDIOのGS10をまず選んだ。この組み合わせならPMA-2000SEのよさが出ると思ったからだ。
だが中高域はいいが、低域、特にベースの音が膨らみややボケる。ちょっと続けて聴く気がしない。問題のFOSTEX GX100にも切り替えてみたが、1度目に聴いたときとまるで同じ音だった(笑)。だめだこりゃ。GX100は解像度が高くハイスピード、硬質でシャープな鳴り方をする。だからそういうテイストとは正反対のPMA-2000SEと組み合わせると、互いが互いのよさを殺し合ったかのような音になるのだ。
あとは「このスピーカーなら低域が出ないからこもらないかも?」などとFOSTEX G1300に替えてみたり、5万前後のスピーカーとしてはデキがいいと思っていたHighland Audio ORAN4301にしてみたり。だがそれぞれのよさがサッパリ出ない。
特にKRELL KAV-400xiやmarantz PM-11S2で鳴らしたときには「いい低音を出す」と感じたORAN4301が、あんなボケた低音に成り果てるとは。これにはけっこう驚いた。
■では懸案のDALI IKON 2ではどうか?
さていろんなスピーカーで鳴らし、局面はいよいよ核心へと向かう。真打ち登場、懸案のDALI IKON 2である。
まあホントに驚きましたよ、あたしは。
IKON 2では、いままであれだけダメだったベースの音にはきれいに輪郭ができ、イヤなこもり感がない。高域、特にシンバル類が美しく響き渡り、中高域の見通しのよさもあのときとまったく同じだ。全帯域にわたり音のイキイキ感が増し、全軍躍動と相なった。いやはや、参りました。
しかしこれだけいろんなスピーカーで鳴らして自分の中で合格点が出ないものが、唯一、DALI IKON 2に繋ぐとあれほど豹変するなんて。これが相性、組み合わせの妙ってやつか。
そして同時に(恐らく)自社のアンプとの相性のよさを計算した上で商品を選定し、DALI IKON 2を輸入・販売しているのであろうDENONに感心した。プロだなあ、やっぱり。
だってたまたまDENONコーナーへ行き、DALI IKON 2が繋がれてるときの音だけ聴いたら「すばらしいアンプだ」って印象しか残らないもん。
で、私みたいに何度もしつこく組み合わせを変えては試す物好きなんてごく一部だろうから、大半の人はそのベストな(組み合わせの)音だけを聴き、「PMA-2000SEはすばらしい」てなイメージだけが脳裏に刷り込まれる……。
これがリアルなビジネスであり、「世の中」なのだ。
(追記)
FOSTEX GX100との組み合わせをさらに別の店でも試してみたが、本文中に書いた2つの店よりはマシだった。背後の壁との距離が、それら2店よりあったのが原因かもしれない。ただしDALI IKON 2との組み合わせの方が明らかにいいのは、本文中に書いたのと同じだった。
IKON 2は低域がかなり締まり気味で、その点が低域の膨らみがちなPMA-2000SEとうまくバランスする理由のひとつだ。一方、FOSTEX GX100は、同じFOSTEXのG1300などとくらべて低域の量感がけっこうある。そこがPMA-2000SEの豊満な低音とバッティングしてしまうのだろう。
またGX100はアンプの音を脚色せずにそのまま出す。だからよくいえば柔らかくリラックスできる、逆に悪くいえば音のエッジが甘くボケ気味になるPMA-2000SEの音色が丸出しになるのも組み合わせがイマイチな一因だと思う。(2009年11月6日付)
tag : DENONPMA-2000SEGX100IKON2PMA-SXGS10G1300ORAN4301KAV-400xiPM-11S2
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