2023年12月27日水曜日

レゾナックが量子化学計算に比べて数千倍速く物性を予測可能なアプリを開発 マテリアルズインフォマティクス

https://monoist.itmedia.co.jp/mn/articles/2312/22/news064.html

レゾナックは、ディープラーニング技術を用いたAIと膨大な蓄積データを用いるケモインフォマティクスアプリを独自開発し、運用を開始した。

2023年12月22日 11時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 レゾナックは2023年12月21日、ディープラーニング技術を用いたAI(人工知能)と膨大な蓄積データを用いるケモインフォマティクスアプリを独自開発し、運用を開始したと発表した。

 ケモインフォマティクスとは、過去の累積データを基に作成した予測モデルを利用して未知の化合物の構造や物性などを予測する「情報化学」と呼ばれる研究分野のことである。実験条件の提案や薬品、材料の分子探索などに使える。なお、ケモインフォマティクスは主に分子や化合物レベルの情報を扱うのに対し、マテリアルズインフォマティクスは主に物質や材料レベルの情報を扱う。

 ケモインフォマティクスアプリは、情報科学を用いた予測技術を備えているため、新しい化合物の開発における物性計算などの時間を大幅に短縮する。併せて、シンプルなユーザーインタフェースも採用しているため、ケモインフォマティクスの専門知識がない技術者でも使え、開発期間の短縮が求められる半導体などの材料をより短期間で開発することが可能になる。

ケモインフォマティクスアプリのイメージ[クリックで拡大] 出所:レゾナック

ケモインフォマティクスアプリの開発背景と機能

 これまで新規材料の開発では多くの場合、実験の初期段階で文献や経験に基づき、一定の予測を行ってから実験と測定を繰り返す手法がとられてきた。さらに、量子化学計算によるシミュレーションやケモインフォマティクスを用いて予測する場合は、通常は物性の計算やデータの入力規則である記述子の作成が必要となる。しかしながら、これには量子化学計算やケモインフォマティクスの深い知識や経験が求められる。

 そこで、レゾナックの計算情報科学研究センターはケモインフォマティクスアプリを開発した。ケモインフォマティクスアプリは、過去の材料開発で蓄積された計算情報と実験データを活用したディープラーニング技術を利用しており、量子化学計算に比べて数千倍速く物性の予測が行える。

 加えて、ユーザーインタフェースはシンプルで直感的に扱えるWebアプリケーションとなっている。このため、ケモインフォマティクスの経験が浅い実験者でも、日常的に使う分子の描画方法で簡単に分子データを入力でき、実験者自身で物性の予測や材料の事前設計が可能になった。

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