トピック
- 提供:
- インテル株式会社
- 笠原 一輝
2023年12月19日 18:00
先日発表された「インテルCore Ultraプロセッサー」について、インテルは「我々のクライアントSoCのアーキテクチャにおいて過去40年間で最大の転換点」と表現する。確かにCore Ultraプロセッサーの実装技術や省電力技術はこれまでの同社のCPUとは一線を画す設計となっている。しかし、チップだけを見ていては、同社がインテルCore Ultraプロセッサーとともにもたらそうとしているものについて見誤りかねない。
と言うのも、インテルCore Ultraプロセッサーでは、PC産業全体が発展する上での鍵と言える「ハードウェアとソフトウェアの相乗効果」もさらに大きくなっているからだ。インテルはこれまでも40年の歴史の中で、プラグアンドプレイ、USB、Centrino(Wi-Fi)といったエコシステムの発展を下支えし、PCの価値や使い方を拡大してきた。
今回インテルがCore Ultraプロセッサーのプラットフォームでもたらそうしているのは、これまではクラウド上でしかできなかったような生成AIがノートPC上でも実行できるようになる、つまり「AI PC」というパラダイムシフトなのだ。
ハードソフトの相乗効果、長時間バッテリ駆動、小型軽量化という3つの技術革新がノートPC進化の歴史
インテルは、PC産業が今のような規模の巨大な産業に成長する歴史の中で、大きな役割を果たしてきた。と言うのも、現在のPCのルーツとなる1981年発売のIBM PCで、インテルの8086プロセッサーとMicrosoftのMS-DOSという、汎用ハードウェアとソフトウェアが採用。その2つを両輪にして多くのPCメーカーが次々と製品を発売して、毎年3億台近いPCが販売されるという今のPC産業が形作られてきたからだ。
プロセッサーを中心としたハードウェアと、OSベンダーやISV(独立系ソフトウェアベンダー)によるソフトウェアが螺旋のように絡み合い、その相乗効果によって成長してきたのがPC産業の歴史と言っていい。
インテルによるPCハードウェア進化の軌跡を簡単に振り返ってみよう。PCは最初のフォームファクタであるデスクトップから、ラップトップ、そしてノートや2in1へと進化し、現代に至っている。1990年にインテルが導入した80386SLプロセッサーは、サスペンド/レジュームといった機能を実装してきた。その後のノートPCプラットフォームでは当たり前のように採用されている技術だが、その礎を築くことになったのが80386SLだ。
1997年に発売されたノートPC用MMX対応Pentiumプロセッサーでは、TCP(Tape Carrier Packaging)とインテルモバイルモジュール(IMM)という新パッケージ技術が導入され、ノートPCの小型軽量化が格段に向上した。その後もインテルはノートPCに最適化したパッケージングの投入を続けており、現代のBGAパッケージへとつながっている。
そして、2003年に登場したのが、Centrino Mobile Technology(以下Centrino)だ。Centrinoは当時としては圧倒的に高い電力効率を実現し、ノートPCの薄型化、長時間バッテリ駆動化を実現するPentium MプロセッサーをCPUとして採用。同時にWi-Fi機能を標準で搭載し、完全なワイヤレスで利用できる薄型ノートPCという現在の"常識"を作り出した。
現代のインテルCPUは、PC向け、サーバー向けなどジャンルを問わず、ほぼ全てがこのPentium Mの子孫と言っていい。その意味でも、Centrinoの位置付けは重要だ。しかし、ここで目を向けるべきは、CPUだけではない。インテルが、Wi-Fiという新しい技術をプラットフォームに盛り込み、それをPC業界が容易に実装できるような環境作りをしたからこそ、今のWi-Fiがあるのだ。
Centrinoから20年が経過したところで登場するのが、インテルCore Ultraプロセッサーだ。インテルCore Ultraプロセッサーには、どのような革新があり、プラットフォームとして、ユーザーにどのような価値をもたらすのか? ひもといていこう。
3Dパッケージング技術のFoveros採用で、これまでとは全く異なる設計思想
インテルCore Ultraプロセッサーには実に多数の技術革新があり、ここでは紹介しきれないぐらいなのだが、大きくは3つにまとめることができる。新しい3Dパッケージング技術であるFoverosの採用、新しい省電力E-coresの採用による3Dハイブリッドアーキテクチャの実現、新しいNPU(Neural Processing Unit)の採用だ。
これらがノートPCの進化の歴史をさらに加速していくことになる。
最新のCPUでは、チップレットと総称されるマルチダイ(複数のチップを1つのパッケージに封入する)技術を使うのが一般的だ。チップレットを利用することで、製造技術の世代が異なるダイを1つのチップに統合できるようになる。インテルも、2.5Dチップレット技術であるEMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)、3DのFoverosといったチップレットの技術を投入しているが、インテルCore UltraプロセッサーはFoverosをメインストリーム向け製品に初めて採用した。
Foverosのメリットには、短期的なものと長期的なものの2つがある。前者は、CPUタイル、GPUタイル、SoCタイル、I/Oタイル、ベースタイルという大きくいうと5つのダイに分割した設計とすることで、それぞれに最適なプロセス技術を製造でき、低コストで高性能な製品を作り上げられるというものだ。
後者は、将来的により小型パッケージへの移行や、より多くのチップを1パッケージに実装可能にするというもの。以下の写真はインテルCore UltraプロセッサーとインテルCoreプロセッサー(第13世代)のパッケージだが、ダイ面積はCore Ultraの方が小さくなっている。これは将来の世代で、より小さなパッケージを導入したり、パッケージ上にメモリチップを混載したりすることができる可能性を示している。
3Dパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャによりさらなる長時間バッテリ駆動が実現
そして、Foverosによって実現可能になったのが、「3Dパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャ」技術だ。前述の通りインテルCore Ultraプロセッサーでは、CPU、GPU、SoC、I/O、ベースという5つのタイルに分割して生産し、封入する段階で1つのパッケージにしている。
着目すべきは、CPUコアがCPUタイルだけでなく、SoCタイルにも搭載されている事だ。CPUタイルには、インテルCoreプロセッサー(第13世代)などと同様に、「パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャ」に基づき、P-cores(高性能コア)とE-cores(高効率コア)という2つの種類のCPUコアが実装。P-coresであればOSやアプリケーションの起動など低遅延が重視される用途、E-coresではあればコア数を生かした並列実行など、それぞれの得意分野に応じたアプリケーション/タスクが割り当てられ実行される。
インテルCore Ultraプロセッサーでは、それに加えてSoCタイルに「低電力E-cores」と呼ばれるもう1つ別のE-cores(2コア)が実装された。このコアは、CPUタイルに実装されているE-coresと比較すると性能は抑え気味ながら、より低消費電力で動作ができる。OSやアプリケーションがあまり性能を必要としない状況では、低電力E-coresだけで動作するようになっており、その時にはもっとも高効率にノートPCを動作させることができるため、バッテリ駆動時間が延びることが期待される。
OpenVINOとインテルCore UltraプロセッサーがAI PCの進化を加速する
PC業界において2024年に最もホットなトピックとなりそうなのが「AI PC」だ。AI PCとは、これまでクラウド側で行なわれてきたAI推論の演算処理をPCローカルで行なうということ。クラウドで行なっていた演算処理をPCローカルで行なうメリットは、クラウド側の応答を待つ必要がないこと(低遅延で実行できる)だけでなく、データをクラウドにアップロードする必要がないため、データ漏洩に対する懸念がないことが挙げられる。
企業の方針で、データはクラウドストレージにアップロードせず、ローカルストレージにだけ保存して運用している場合でも、AI PCであれば自社データを活用してAIの業務に活用し、セキュリティを気にすることなく生産性を上げられる。
インテルCore Ultraプロセッサーは、NPUというAI推論を専用に行なうプロセッサを搭載している。だが、NPUを搭載したからAI PCが実現するというわけではない。AI PCの処理はNPUにより加速されるのは事実だが、AI処理にCPUやGPUを使った方がいい局面も多数あるからだ。実際、AdobeのPhotoshopでは、Intel GPUを活用したAI推論が行なわれている。ほかにもそうした例は数知れず、既に多くのAIを活用したアプリケーションが、IntelのCPU、GPUにも最適化されている。
そうしたことが実現できているのも、インテルが以前よりAI PC向けの開発環境を提供してきたからだ。同社は2018年にAI PCアプリケーションの開発を推進する開発キット「OpenVINO toolkit」(以下、OpenVINO)の最初のバージョンを提供し、AIアプリケーションの性能を引き上げる取り組みを行なってきた。AdobeやMicrosoftといった大手だけでなく、中小のISVも含めてOpenVINOを利用するベンダーが数多く存在しており、既にIntelのCPUやGPUへの最適化が図られている状況だ。
OpenVINOを利用してIntel CPUやGPUにAIアプリケーションの最適化が終わっている場合は、わずか数行コードを書き換えるだけでNPUへの対応が終了する。しかも、OpenVINOは無償でダウンロード可能だ。今後AIアプリの開発を考えている開発者はぜひ導入を検討したい。
実際、インテルが行なったStable Diffusionのデモでは、インテルCore Ultraプロセッサー搭載機はインテルCoreプロセッサー(第13世代)搭載機とは比べものにならない速さで画像の生成を行なっていた。
AI PC加速に向け、コミュニティ施策にも注力
ここまでハードウェアとソフトウェアの両輪でプラットフォームを進化させることが重要だと述べてきたが、それに加えインテルは、AI PCを活性化、そしてより進化させるため、コミュニティ施策にも注力する。
インテル株式会社マーケティング本部長の上野晶子氏は「AI PCを利用することで、さまざまな分野で生産性効率が上がり、新しい使い方も登場するだろう。インテルとしてはそういった動きをけん引すべく、業界をサポートするようなコミュニティを構築していきたい」と述べており、インテルCore Ultraプロセッサー発表に併せ、「インテルAI PC Garden」というAIソフト開発者の支援コミュニティをDiscord上に構築した。
インテルは直近、ゲーム、自作、クリエイターといった分野で、情報発信やユーザー支援のコミュニティ活動を積極展開している。インテルAI PC Gardenもそれに加わるものだ。ここでは、AIソフト開発者や、AIをビジネスに戦略的に活かしていこうと思っているスタートアップ企業がOpenVINOを使用した最新の技術や、ベストプラクティスを学ぶことができるほか、知識の共有を促進するためテクニカルな質問やディスカッションを行なったり、必要に応じて技術トレーニング、機材貸与などもできる予定だ。
より高性能で、より省電力で、AIによる新しい使い方を実現するPCに変貌するノートPC
まとめると、インテルCore Ultraプロセッサーは、Foverosの採用による新しい実装技術、3Dパフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャによる高性能化と長時間バッテリ駆動の両立、そしてAI PCの立ち上げと発展を実現するものとなる。「40年間で最大の転換」とするのが誇張ではないことがお分かりいただけただろう。
特にAI PCの取り組みに関しては、今後ユーザーのPCの使い方を大きく変えていく可能性を秘めている。たとえば、相手からミーティングの要求がメールで来た時、これまでは自分でスケジュールを確認し、キーボードで入力して返信していが、今後はAIがスケジュールを確認して自動で出席なり欠席の返事を出すといった使い方ができるようになりそうだ。
プレゼンテーション向けのスライド作成においても、今はユーザーが自分で資料となるデータを探し、グラフを作り、文字を入力ということをやっているが、将来にはアウトラインこそ人間が指示するものの、AIが自動でローカルストレージにあるデータを参照し、必要に応じてインターネット上のデータも見にいって作成してくれる。そうした機能が実現するのも間もなくだ。
つまり、インテルCore Ultraプロセッサーの登場により、AIを利用する端末としてPCの地位が格段に引き上げられることになる。次の40年が経った時、PC産業の歴史を振り返ると、インテルCore Ultraプロセッサーがエポックメイキングな製品として名を残している可能性はとても高いだろう。
そんな期待の高まるインテルCore Ultraプロセッサー搭載機は、まずは日本エイサー、ASUS、デル・テクノロジーズ、MSI、レノボ・ジャパンから投入される。
また、日本初となる「インテル Core Ultraプロセッサー搭載のAI PC体験コーナー」を発売開始初日の12月15日から「ビックカメラ有楽町店」、「ソフマップAKIBA パソコン・デジタル館」にて展開しており、すでに店頭デモ最新のAI PC を体験できるようになっている。また「ビックカメラ有楽町店」では発売記念ベントも12月18~21日に実施。イベント期間中は限定数でノベルティーも配布予定。仕事にも遊びにも使える最新のAI PCの進化を体験しに「ビックカメラ有楽町店」&「ソフマップAKIBA パソコン・デジタル館」のパソコンコーナーを訪れてみてはいかがだろう?
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