2025年4月11日金曜日

半分氷で半分火、物理学者が新しい物質の状態を発見 牡丹堂 (著)・パルモ (編集) 公開:2025-04-06・更新:2025-04-06

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 物質の相は、固体・液体・気体に限られない。物理学者がこのほど発見した新しい相は、「ハーフアイス・ハーフファイア(half ice, half fire)」と呼ばれている。

 半分氷で半分火?なんだか矛盾したかのように思えるこの状態は、みんなが想像しようとしているものとはおそらく違う。それは原子核の周りをぐるぐる回る電子のスピンに関係するものだ。

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 この奇妙な物質相を応用することで、量子コンピュータの新型ストレージや革新的な冷却装置が開発できるかもしれないという。では、この新たな物質相について詳しく説明しよう。

電子スピンが生む「冷たさ」と「熱さ」の共存

 あらゆる物質を構成する原子は、陽子と中性子で構成される原子核と、その周囲で雲のように分布する電子によって構成されている。

 この電子は原子核の周りを公転しつつ、自転もしている。この自転のことをスピンといい、公転運動とあわせて磁力と大きく関係している

 なお、この説明はイメージしやすくするためのもので、量子力学的に見て、惑星のように公転しているわけでも、コマのように回転しているわけでもないので、そこんところよろしくだ。

 新たに発見された物質相「半分氷・半分火(ハーフアイス・ハーフファイア)」は、秩序だった「アップスピン」(コールドサイクルと呼ばれる)、無秩序な「ダウンスピン」(ホットサイクルと呼ばれる)が同時に起きている状態だ。

 半分凍って、半分燃えているわけではなく、コールドサイクルとホットサイクルの対比にちなみ「ハーフアイス・ハーフファイア」と名付けられた。

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奇妙な双子の相「半火半氷」と「半氷半火」

 じつはハーフアイス・ハーフファイアには双子の相がある。それは数年前に米国ブルックヘブン国立研究所のチームによって観測された「ハーフファイア・ハーフアイス」だ。

 それがはじめて観測されたのは2016年のことで、「フェリ磁性」という磁性材料で見つかった。

 フェリ磁性とは、互いに逆向きの磁気モーメントを持つ原子集団を含むが、その集団の数が不均衡であるために全体としては磁化を持つ磁性のことだ。

 ハーフファイア・ハーフアイスが観測された磁性体は、ストロンチウム・銅・イリジウム・酸素で構成される「Sr₃CuIrO₆」で、そこに外部磁場をかけることでこの相が作られた。

 このとき、銅がある部分ではスピンが活発で磁気モーメントが小さくなり、イリジウムのある部分ではスピンが抑えられ、磁気モーメントが大きくなる。

 これは興味深い発見だが、アレクセイ・ツヴェリク氏は、ただの始まりに過ぎなかったとニュースリリースで語っている。

徹底的に研究しましたが、この状態をどう利用できるのかわかりませんでした。「パズルのピースがいくつか欠いていたのです(アレクセイ・ツヴェリク氏)

 その後の研究では、「ハーフファイア・ハーフアイス」には、それと対となるホットサイクルとコールドサイクルの位置が入れ替わった逆の状態があることがわかったのだ。それが今回の「ハーフアイス・ハーフファイア」だ。

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量子情報の記録に応用できる可能性

 研究チームは、両者が入れ替わるきわめて狭い温度範囲を特定。このおかげで、双子の相には素晴らしい応用があるだろうと期待することができる。

 その1つが、鋭い相転移を利用した革新的な冷却技術だ。さらに、この相自体をビットとして利用して、量子情報を記録することができるかもしれないという。

 「新たな可能性への扉が今、広く開かれました」と、イン・ウェイグオ氏は語っている。

 この研究は『Physical Review Letters』(2024年12月26日付)に掲載された。

編集長パルモのコメント

パルモの表情、普通

火とか氷とか聞くと、真っ先にポケモンの属性が思い浮かんでしまうのは私だけではないはずなんだ。というのは置いておいて簡単にまとめると、ひとつの物質の中に「熱い部分」と「冷たい部分」が同時に存在する不思議な状態が見つかった。これは、電子のスピンという量子の性質によって生まれたものだ。しかも、ちょっと温度を変えるだけで、この状態がパチッと切り替わる。でもってこの状態は、「オン・オフ」みたいなスイッチとして使える可能性があるから、量子コンピューターや冷却技術に応用できるかもしれないってことだね。

なんか大学時代に小中学生の塾講師のバイトをしていた時のことを思い出すなー。中学校の物理も結構難しいよね。私はゴリゴリの文系なので理数系は中1くらいまでしか教えてないけど。

References: Journals.aps.org / Bnl.gov

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。

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この記事へのコメント 24件

コメントを書く

  1. 氷炎将軍フレイザードの観察でもしてたんか

    1. 彼はストロンチウム・銅・イリジウム・酸素からなる超合金シリーズの可能性が高いね
      メカニカルな変身もする可能性がある

  2. ポケモンより先に「ダイの大冒険」のあいつを連想したなあ
    きっとそういう人多いはず

  3. つまりなんだ?
    上手く利用すると触れた瞬間に凍らせる(温度低下を起こす)ができるのか?気化冷凍法か?

  4. なんかのキャラソンのタイトルだったような……とググって解決した

  5. つまりどういうことなんだこれ・・・?
    理解が追いつかない

  6.  正直よくわかんないです。 磁石を無限に割っていったときにどこまで磁石なのか疑問だけど、全体としては弱い磁性体が実は小さい単位だと強い磁性のそれぞれの向きが反対だから弱いってのはなんとなくわかりました。 ですが凍ってるところと火のところが……うーん まだ基礎研究で、応用は考えなくてもいいかなと思いつつ、磁気冷却に使えそうな可能性があるってのは面白いかな。

  7. やれやれ・・
    俺の右腕に取り付いた能力の正体はこれだったのか・・

  8. これはアレでしょ?
    あのヒロアカのキャラの・・・

  9. 氷は物質だけど、火は物質じゃなくて現象じゃなかったっけ?

  10. もう何年も前だけど、Intel が「これからはスピントロニクスの時代や!」て電子スピンを利用したメモリを発表してたけど、それから音沙汰なくてションボリしてた。
    早く実用化しないかなー(3ビットおじさん)

  11. もう50年程前、電子スピン共鳴装置を使って徹夜しながらデータ取ってた学生時代
    卒業論文の為だったけど、、、、今はただの年金暮らしジジイです。

  12. 電子は回転してるんじゃなかったの(・・;)
    あとパルモは理系だと思ってた

  13. ごく狭い温度変化で2つの状態を切り替えできる
    つまり0と1を表現できるということ
    電子計算機や記憶媒体などに利用できそうだな?
    なるほど、確かに応用範囲は広そうだ

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