
大脇 幸志郎
鹿児島大学の研究班が臨床試験に向けて準備中の、がん細胞の中でだけ増殖するウイルスを使ったがんの治療法が最近報道されました。この治療法をマウスの実験で試し、効果を確かめた2014年の論文を紹介します。
◆横紋筋肉腫幹細胞(RSC)を標的に
この研究よりも前の研究で、研究班はがん細胞の中でだけ増えている「サバイビン」という物質があると増殖して細胞を殺すウイルス「Surv.m-CRA」を開発していました。
研究班は、横紋筋肉腫という筋肉にできるがん(悪性腫瘍)を、Surv.m-CRAによる治療の目標としました。特に、横紋筋肉腫に含まれている「横紋筋肉腫幹細胞」(RSC)という細胞を殺せるかどうかに注目しました。
がんができるときに、「がん幹細胞」という細胞が元になって、さまざまな種類のがん細胞が生まれるという説があります。RSCは、横紋筋肉腫のがん幹細胞と考えられている細胞で、横紋筋肉腫の細胞は大きくRSCと「子孫細胞」に分けら...