2016年8月2日火曜日

世界初「認知症ワクチン」が誕生。インフルエンザのように予防接種可能 に!? 平野星良


厚労省の発表によれば2012年時点での認知症患者数は、全国でおよそ462万人。2025年には65歳以上の高齢者、5人に1人が認知症になるとの予測がある。

これまで、日本のみならず世界中で治療薬の研究開発が進むなか、オーストラリアとアメリカの共同研究チームがブレイクスルーとなる新薬を開発した、と大きな話題を呼んでいる。

認知症治療薬に
新時代の幕開けか?

発症の原因によって細かく分類されている認知症。なかでも半数近い人がアルツハイマー型認知症を患っている。今回の新薬も、このアルツハイマー型(以下、認知症と記す)に有効なワクチンだ。

米政府から多額の資金援助を受けてカリフォルニア大学分子医学研究所と、フリンダース大学(南オーストラリア)の研究チームが共同開発した「認知症ワクチン」が、なぜここまで注目されているのか?

それこそが、今回のワクチンの肝。これまで進行を遅らせる薬はあれど、認知症を予防する(ないしはできる)薬は皆無だったから

現在、日本でも使用されている認知症治療薬は4種類。どれも発症後に投与され、あくまで「進行を遅らせる」ことに主眼をおいたもの。ところが、研究チームが開発した新薬は、認知症になる前に予防薬として投与できる。ここに大きな意味がある。

50歳以上は予防接種が可能
初期段階なら回復も期待

年齢が50歳以上の健常者であれば、インフルエンザのように予防接種を受けることができる。さらに、認知症初期段階の人であれば、ワクチン投与で症状の回復も見込めるそう。

フリンダース大学のNikolai Petrovsky医学教授によると、脳内のアミロイドベーターとタウ、2種類のタンパク質の蓄積によって引き起こされる認知症の症状から、このワクチンはそれらを分解させる働きかけをするものだそう。

Petrovsky教授は、臨床実験に成功した上での前提ながら、この先3年から5年以内には、これらのワクチンが実際に医療現場で十分に活用される見込みがあることを「The Australian」に語っている。

また、高齢者予備軍として50歳以上の人であれば、だれでもインフルエンザと等しく、認知症の予防接種を受けることができるそうだ。しかも、驚くことに認知症初期段階の人であれば、このワクチン投与で症状の回復も見込めるという。

薬で認知症を治す日は近い?

アメリカ政府は、このPetrovsky教授の研究を含めた認知症治療薬の開発に、2016年だけで10億ドル(約1,000億円)以上を投資している、と「ABC News」は報じた。

国際アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Disease International、ADI)が発表した報告書によると、世界では毎年新たに約990万人が認知症を患い、2010年の推定値と比較して約30%高い数値だという。新薬への需要は非常に高く、ワクチン製品化へのプロセスを是が非でも速めたい米政府の意気込みを感じる。

いまも、世界中で治療薬開発に向けたさまざまな研究開発が行われている。しかし、結実するまでの道のりは果てしない。認知症の研究が進んでいるアメリカにおいて、過去20年で101もの新治療薬が開発に失敗した、という事実もある(米国研究製薬工業協会)。

今回の予防ワクチンが身を結ぶか。そこに世界が大きく注目している。

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