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「 若い血の中のたんぱく質には老化した細胞を復活させる力がある」という研究結果が2014年に発表されてから、「若者の血を輸血する」という医療行為が注目を浴びています。この手法に目を付けたスタートアップも複数存在し、「80万円を支払って若者の血液を輸血してもらう」という臨床試験が行われるまでになっています。
The Next Health Fad? Blood Transfusions from Young People
https://www.technologyreview.com/s/602080/the-next-health-fad-blood-transfusions-from-young-people/
「若者の血液を高齢者に輸血する」というアイデアが最初に注目を浴びたのは2014年のこと。 Harvard Stem Cell Institute(HSCI)の研究者であるエイミー・ウェイガース教授が「若いマウスの血液は高齢マウスの筋肉・心臓・脳の機能を向上させる」ということを発見した時です。この時、実験では若いマウスと高齢マウスの皮膚を縫い合わせる「並体結合」という方法が採用され、2匹の循環系が一体化させられたとのこと。並体結合を用いた研究は1960年代から行われていましたが、PayPalの創業者であるピーター・シール氏が関心を寄せるなど、近年になって再び注目を浴びています。
そして、新たに「Ambrosia」というアメリカ・カリフォルニアのスタートアップが「若者の血液を35歳以上の人に輸血する」という臨床試験を開始しており、希望者は8000ドル(約80万円)を支払えば試験に参加できるようになっています。Ambrosiaは600人の被験者に対して、16~25歳の若者の血液を週に1度・4週間にわたって輸血するという計画を立てています。Ambrosiaの創業者であるジェシー・カーマジン氏は山のようにインタビューのオファーを受けているものの、現時点では話すことができないとして発言を控えている様子。
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ただし、Ambrosiaの臨床試験は「費用を支払うことで受けられる」ということが、批判を浴びることも。また、臨床試験では100以上のバイオマーカーが用意され、輸血前・輸血後の状態を比較するようになっていますが、バイオテクノロジー企業 ノバルティスの役員であるDavid Glass氏は「プラシーボ効果のコントロールグループが用意されていない」と研究の正確性について指摘しています。
このほか、Alkahestという企業でもアルツハイマーの可能性がある患者に若い人の血液を輸血するという臨床試験を行っている最中で、結果は2016年末にも公表される予定です。
2014年に行われた研究では、ウェイガース教授のチームは「GDF11(Growth Differentiation Factor 11:成長/差別化因子)」と言われるタンパク質の役割をメインに据えた論文を2つ公開しました。GDF11は体内で生成されるタンパク質で、年齢と共に減少するもの。ウェイガース教授によると、GDF11の量を増やすことができれば筋肉の強度を高めたり、老化した脳を回復させたりができるとのこと。
GDF11が何かは以下の記事を読むとよくわかります。
若い血の中のたんぱく質には老化した細胞を復活させる力があることが判明 - GIGAZINE
ただし、ウェイガース教授らの研究に対して、ノバルティスの研究者らは「GDF11は加齢とともにむしろ増加し、骨格筋の再生には逆効果である」というレポートを公開しており、GDF11の効果を疑問視する声も上がっています。製薬会社の グラクソ・スミスクラインや Five Prime Therapeuticsも「GDF11に筋肉を若返らせる効果は無い」という研究結果を発表しているほか、6月には「GDF11はDuchenne型筋ジストロフィー 病のマウスに効果を発揮しない」という研究結果も発表されました。
いずれの研究もまだ結論が出されておらず、「若者の血液を高齢者に輸血する」ことの効果は未知数。しかし、たとえGDF11やGDF8に単体としての老化防止効果がないとしても、それらを含む血液には若返りにつながるヒントが隠されている可能性は大いにあるとして、ウェイガース教授らはGDF11や、GDF11に関連するGDF8といった物質について研究を続けていく模様です。
2016年8月8日月曜日
若者の血液を輸血して健康になる恐るべきビジネス
23:14
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