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https://gigazine.net/news/20161111-fusion-energy-explained/
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人口増加を続ける地球では、人間の生活に必要な電力などのエネルギーをどのように確保するのかが重要な問題となってきます。電力を生み出す方式には、主に火力発電と原子力発電が用いられていますが、未来の発電技術として研究が進められているのが、核融合のエネルギーを利用する「核融合発電」です。海水を燃料にしてエネルギーを生みだし、しかも環境に与える影響も非常に少ないという核融合エネルギー技術がどのようなもので、どんな課題を抱えているのかが、Kurzgesagt – In a Nutshellのムービーにまとめられています。
Fusion Energy Explained – Future or Failure - YouTube
私たちの宇宙の「通貨」と呼べるものはエネルギーです
エネルギーがあることで、私たちの家が明るく照らされ、食べ物を育て、コンピュータを動かす電力を得ることができます
エネルギーから電力を得る方法にはいくつかの種類があります。代表的なものは化石燃料を燃やす火力発電、核分裂を利用する原子力発電、そして太陽光から発電する太陽光発電ですが……
これらすべてには、欠点が存在しています。火力発電は汚れた空気を排出し、原子力発電は高レベル核廃棄物が生みだされます。また、太陽光発電は太陽がないと発電ができず、曇りの日のために電力を蓄えておく仕組みも今のところありません。
しかし、事実上の無限のエネルギーを持つものが存在しています。それが「太陽」です。
この無限のエネルギーを手にするために、人類は地球上に太陽を作りだすことはできるのでしょうか。
太陽が輝いているのは、その内部で「核融合反応」が起こっているためです。
非常に強い重力を持つ太陽の中心部分では高い圧力がかかり、非常に高い温度になっています。そのため、物質を構成する原子は……
原子核(赤)と電子(青)が分離したプラズマ状態になっています。
プラズマ状態となった太陽中心部では原子核と電子が自由に飛び回る状態になっています。原子核はプラスの電荷を帯びているために、通常であればお互いに反発しあう性質があります。
この反発を上回るためには、原子核同士が非常に高い速度で衝突する必要があります。
ここでいう「非常に高い速度」とは、「非常に高い温度」であることを意味します。実際の太陽の中心部「コア」では、温度は1400万~1500万ケルビン(セ氏約1400万~1500万度)にも達しています。
太陽などの恒星は非常に体積が大きく、内部の圧力が極めて高くなります。
圧力のために高い温度が生じたコアでは、原子核同士が融合して新たな物質が生みだされ……
その際に、非常に大きなエネルギーが放出されます。このエネルギーが熱であり、太陽光であり、電磁波などであるというわけです。
そして、このエネルギー放出こそが、科学者が「新世代の発電技術」として研究を進めている「核融合炉」です。
しかし、太陽と同じ仕組みによる核融合を、太陽よりも小さな地球上で再現することは不可能です。そこで人類は、別の「賢い」方法を用いることで、太陽と同じような環境を作り出す必要があります。
プラズマの温度を極めて高くし、核融合を起こせる状態にするために、これまでに科学者たちは大きく2つの方法を編み出してきました。
その1つが、強い磁力線を発生させてプラズマを閉じ込める「磁場閉じ込め方式」と呼ばれるものです。
その代表的なものが、フランスに建設される予定の国際熱核融合実験炉「ITER (イーター)」です。ITERは、液体ヘリウムによって冷却される超伝導コイルを用いて強い磁場を生みだし、その中にプラズマを閉じ込めようというもの。
この装置では、絶対零度に極めて近い超伝導コイルを使い、人類が知り得る宇宙で最も高い温度のプラズマが生みだされることになります。
燃料の表面にレーザーを照射することでプラズマを発生させると同時に、膨張しようとするプラズマをレーザーの力で押さえ込み、内部へと押しつぶす爆縮を発生させます。この時に発生した高い温度と圧力により、燃料の内部で軽元素を核融合させるというのがその仕組みです。
慣性閉じ込め方式で核融合を起こさせるためには、非常に強力なレーザーをあらゆる方向から非常に高い精度で燃料に照射する必要があります。
この方式による核融合も世界中で研究が進められており、アメリカのNational Ignition Facility(NIF:国立点火施設)をはじめ、日本国内でも研究が行われているとのこと。
このほかにもいくつかの方式による核融合の研究が世界中で進められていますが、これらはいずれも研究段階にあります。
エネルギーを生みだすために研究されている核融合炉ですが、現存する核融合炉のほとんどは稼働させるために必要なエネルギー(=電力)を超えるエネルギーを生みだせていない状況。つまり、材料となる燃料(果物)をミキサーに投入して絞っても……
得られる成果(=ジュース)はまだまだ少ない状態にあるというわけです。
核融合は、古くは1920年代頃から研究が進められてきましたが、商業的に成り立つ段階にはまだまだ達していない状況。さらに、その実用性については否定的な見方も存在しています。施設の建設には何兆円という巨額の費用が必要であり、この費用を回収できるかどうかは不透明な状況。
しかし、仮に核融合炉が実現すると、これほどまでに効率的なエネルギー源は存在しません。海水が燃料になる核融合炉では、コップ一杯の水から1バレル(約160リットル)の石油と同じエネルギーを生みだすことができます。さらに、二酸化炭素などの排出物が出ないため、環境に与える影響が少ないのも大きなメリットと言えます。
これは、核融合で用いられる燃料は水素とヘリウムでできているため。そしてこの水素は海水から作り出すことが可能です。
とはいえ、水素であれば何でもいいというわけではありません。核融合反応に必要なのは、水素の安定同位体である二重水素(デューテリウム)と三重水素(トリチウム)です。
このうち、デューテリウムは海水に大量に含まれていますが、トリチウムは少し厄介です。
トリチウムは放射能を持ち、その半減期は12.3年というもの。そのため、放射線による影響が存在しています。
また、トリチウムが用いられるのは核爆弾がほとんどとのこと。そのため、トリチウムは非常に高価な材料というわけです。
このように、厄介なトリチウムのかわりとなるのが、ヘリウムの同位体であるヘリウム3です。
しかし、ヘリウム3はトリチウムと同じぐらい希少な存在のため、地球上で十分な量を確保するのは容易ではありません。
そこで注目されているのが、地球の周りを回っている「月」です。
月の表面では、何億年という期間にわたって太陽風を受けてきたために、ヘリウム3が多く生成されて存在しているとみられています。
そこで、月の土壌を集めてヘリウム3を生産する工場を建設し、地球へとロケットで送り届ける仕組みを作るという構想も作られています。
また別の心配をする声も存在します。核融合はいわば、地球上にミニ太陽を作るようなもの。そのため、大量のエネルギーが急激に放出されることで大爆発が起こるのでは、という心配も起こっているのですが……
実際には、核融合発電所は、ほかのどの発電方式よりも安全であると考えられています。
核融合炉は、核分裂によるエネルギーを利用する原子力発電所とはまったく違う性質を持っています。核分裂炉の場合、適切な制御が行われなくなると壊滅的な被害につながりますが……
核融合炉では、磁力やレーザーによる「プラズマ閉じ込め」が行われているのがポイント。制御に問題が起こっても、プラズマ閉じ込めが行われなくなると……
自動的にプラズマが消滅し、核融合に必要な圧力と温度が失われます。そのため、核融合が暴走するような事態には陥らないというわけです。
また、放射能をもつトリチウムが放出される事による環境への影響も懸念されています。
トリチウムは酸素と結合し、放射能をもつ水へと変化します。この水が海などに流れ出ると環境に被害が及ぶことが懸念されるわけですが……
そもそものトリチウムの量が極めて少ないために、環境に与える影響は事実上ないと考えられているとのこと。
このように、核融合は少ない燃料から多くのエネルギーを生みだし、しかも地球により優しいということで、期待されていることもわかります。
しかし、一番の問題は、実現のためにどれほどのコストがかかるのかがわからない所にあります。いわば、何兆円というお金をかけても実現するかどうかがわからないが、実現すると大きなメリットを得ることができる、という史上空前のギャンブルというわけです。
そのため、同じお金をかけるのであれば、すでに確立されている既存の技術に投資する方がよい結果を生むかもしれません。
場合によっては、多額の予算をつぎ込んだあげく、使い物にならない遺産が残されてしまうことも考えられます。
しかし、その結果が無限のエネルギーを安全に得るということになれば、人類が得られるメリットも無限ということになりそう。このように、「核融合エネルギー」というギャンブルに人類が挑むかどうかは、今後も時間をかけて検討されるべきテーマということになりそうです。
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