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「SHM-CD」がちょっとしたブームになっていることはご存じだろうか。音楽好きであれば認知度の高いアイテムだが、一般的にはそれほど知られていないようなので、改めてその内容を紹介しよう。
今、「SHM-CD」がちょっとしたブームになっていることはご存じだろうか。音楽好きであれば認知度の高いアイテムだが、一般的にはそれほど知られていないようなので、改めてその内容を紹介しよう。
SHM-CDとは、昨年ユニバーサル ミュージックからリリースされた新しい“高音質”CD。こういう書き方をすると「DVDオーディオやSACDのような新規格がまた出たの!?」と思うかもしれないが、それとはまったく違う。SHM-CDはあくまでもCD規格のディスクであり、その名の通りSHM(スーパー・ハイ・マテリアル)を利用して高音質を実現した“CDとして”の究極のカタチのひとつなのだ。
では、一般的なCDとどこが違うのだろう。それはズバリ、盤に使用しているポリカーボネート樹脂の質である。CDは、1.2ミリほどの厚みを持つポリカーボネート樹脂の円盤に、スタンパーと呼ばれる金型でビット情報を成形。そのあと反射膜と保護膜、レーベル面を塗布して完成に至る“光ディスク”だが、「光を当ててその反射を読み取る」というシステムは、非接触で劣化がゼロという大きなメリットがある代わりに、少なからずデータエラーを起こしてしまうマイナスポイントがある。
実際のところ、CDにはデータエラーを補完するシステムが採用しており、よほど大きな傷や振動がない限り“音とび”しないため、頻繁にデータエラーが起こっていることにはまず気がつかない。知らぬ間に、劣化した音を聴かされているのだ。
そういった情報の欠落をできるかぎり回避する1つの手段として考え出されたのが、このSHM-CDである。ポリカーボネート樹脂を、これまでのものから液晶モニターに使われている透明度の高いタイプに変更することで、読み出し時のデータエラーを低減。同時にスタンプの精度向上や量産効率よりも品質を優先させた専用生産ラインの新設なども行い、オリジナル音源に忠実な、高音質サウンドを実現したのだ。
実際にその効果は驚くべきものだ。発表当初、リリースを読んだだけの僕は、「ポリカーボネート樹脂の透明度を上げたくらいでそれほど音が変わるものか」とたかをくくっていたが、実際の音を聴いたとたんがくぜんとした。まるで同じ演奏を別の良質な機材で録音しているかのような、クリアかつ緻密な音が聞こえてきたのだ。
この衝撃は、SACDの音を最初に体験したときのよう。いつものディスクが、これまで聴いたことのないくらい生々しいリアルなサウンドを奏でてくれたのだ。しかもそれが、普通のCDプレーヤーで楽しめる。なんという手軽さと優れたパフォーマンスだろう。
以来僕はSHM-CDに夢中となり、数年ぶり、いや10数年ぶりに大量のCDを買いあさっている。僕以外の音楽ファンもかなりの人が同じようなインパクトを受けたようで、限定発売されたタイトルの多くが完売。なかでも“名盤”と呼ばれるいくつかのタイトルはプレミア価格が付くほどの人気を博している。
そしてこの夏、SHM-CDは100タイトルを超え、さらにユニバーサル ミュージック以外のレーベル、ワーナーやテイチクからも(冬にはJVCからも)リリースされることとなった。いまやSHM-CDは、CDに代わる新しいスタンダードとなり得る可能性すらある。なぜなら、どうせお金を出すのだったら、少しでもいい音で楽しみたいというのは音楽ファンの正直な心理。しかも価格は2500~2800円が主流で、いままでとそう変わらないのだから、歓迎しない方がおかしい。
とまあ、SHM-CDの特徴と個人的な感想をここまで述べてきたが、百聞は一見にしかず。いやこの場合は一聴にしかず、というべきか。SHM-CD未体験の人にちょうど良い“聞き比べ”ディスクが登場したので紹介しよう。
9月3日にユニバーサル ミュージックから発売された「これがSHM-CDだ!」は、SHM-CDと通常のCDが1パッケージに収められた、まさにSHM-CD体験を目的としたアルバム。両ディスクを聞き比べることで、SHM-CDの優位性が実際に体感できるようになっている。
お得な“聞き比べ”ディスクの中身とは
実はこの春に第1弾となる「ロック」が登場したが、あまりの人気のために発売後すぐに売り切れてしまい、多くの人から「第2弾を」というリクエストがユニバーサル ミュージックへも寄せられたようだ。それを受けてこの秋、第2弾として「ロック/ソウル/ブルース」「ジャズ」「クラシック」の3タイトルが同時リリース、より多くの人がSHM-CDの特徴を体験できるようになっている。
しかもこの「これがSHM-CDだ!」シリーズは、サンプルとは名乗っているものの、曲が途中で終わってしまう“サンプル試聴ディスク”ではなく、れっきとしたコンピレーションアルバム。しかも選曲が絶妙で、例えば「ジャズ」は、ジョン・コルトレーンやオスカー・ピーターソン、ルイ・アームストロング、ビル・エヴァンスなど、ビッグネームの名曲がずらりと並ぶ。
さらに「クラシック」では、カラヤンやクライバー、ベーム、バーンスタインなど著名な指揮者がタクトを振る名演奏に加えて、小澤征爾のウィーンフィル・ニューイヤーコンサート「ラデツキー行進曲」まで収められている。ジャズやクラシック初心者でも、充分堪能できる内容となっているのだ。
これがたった1000円で手に入るなんて、どう考えてもお買い得。第1弾同様、すぐに売り切れてしまうことが予想されるので、ぜひ聞いてみたい人、SHM-CDがいかなるものか体験したいという人は、早めの購入しておくことを勧めする。
せっかくだから、この3枚に関して「聞き比べ」お勧め曲をリストアップしておこう。
まず「ロック/ソウル/ブルース」では、1.オールマン・ブラザーズ・バンドが一番。ライブは観客の声援などが収められているため、SHM-CDの「細かい音まで漏らさず再生する」特徴が生きてくる。このほか4.ジェームス・ブラウンや5.フライング・ブリトウ・ブラザーズ、7.フリー、13.トム・ウェイツ、20.マーヴィン・ゲイなどは、アコースティック&エレキギターやパーカッションの音を聴くと、SHM-CDの音がいかにクリアでイキイキとしているかが実感できる。
「ジャズ」は1.と5.のコルトレーン、3.オスカー・ピーターソン、8.アントニオ・ラルロス・ジョビン、11.キャノンボール・アダレイ、12.ケニー・バレル、13.ビル・エヴァンスと上げたらきりがない。全体を通しては、ピアノと金管楽器の音色に注目すると、表現力の差を実感できるはずだ。
「クラシック」は全曲とも違いがはっきりと分かる。しいて上げるならば、4.ラデツキー行進曲のニューイヤーコンサートならではの抑揚感、6.サン=サース交響曲3番の力強い低音とオルガンの音の多彩さ、7.モーツァルト/レクイエムの合唱などに、両者の違いが顕著に感じられた。
最後に、現在リリースされているSHM-CDの中から、実際に試聴し、とくにオススメしたいと思ったタイトルをピックアップしよう。ジャズやクラシックのない偏ったラインアップだが、ほとんどが個人購入のためご容赦を。
まずは「イーグルス/フリーゼス・オーヴァー」と「エリッククラプトン/アンプラグド」。どちらももともと良質な録音の名盤なので、その実力をSHM-CDによってさらに生かされたという印象。そういった事情もあって、音質よりも空間的な広がり、ストレスなく空間いっぱいに音が広がる気持ちよさに心ひかれた。アンプラグド系は、ブライアン・アダムスもよかった。
'70年代のアルバムでは、やはりレッド・ツェッペリンが筆頭にあがる。1994年に行われたリマスター盤の良さが、SHM-CDによって開花したという印象。とくに「ツェッペリンIV」は粗野なセッティングながら、1発録音ならではの迫力やノリの良さが充分に伝わってくる。そのあとオリジナル盤のCDを聴くと、録音機材がまるで10年前のポンコツのように感じた。対して「カーペンターズ/ナウ・アンド・ゼン」は、アナログレコードにある独特の柔らかさ、心地よさがやっと取り込めたというイメージ。こちらも悪くない。
モトリー・クルーやイングヴェイ・マルムスティーン、ザ・キュアーなどのベスト盤も良かった。意外なものでは、ビレッジピープルがあっさりとしたちょい古めかしい音ながら、録音の良質さがよく分かって好印象だった。
SHM-CDは、聞き慣れたミュージシャンの聞き慣れた曲ですら、新しい“何か”を発見させてくれる貴重な存在。しかもラジカセやPCなど、再生機器がチープであればあるほど、普通のCDとの音質差がはっきりとしてくるのだから面白い。良質なサウンドを追い求めるオーディオファンはもちろん、“音楽好き”にこそベストなディスクと断言しよう。
ダウンロードミュージックに完全移行しようとしている人、ちょっと待って。SHM-CDという名のCDには、まだまだ可能性があるゾ。
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