2022年3月2日水曜日

「kintone」導入で業務改善--Access&Excelや紙のFAXを辞めた地域密着型リフォーム会社

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「kintone」導入で業務改善--Excelや紙のFAXをやめた地域密着型リフォーム会社

柳谷智宣

 

2020-09-28 07:40

 世界的な開発者不足を背景に、プログラミング開発なしに、業務システムを構築できるサービスが続々と登場している。中でもプログラミング未経験の人でも簡単に業務改善アプリを作れるのがサイボウズの「kintone」。月額1500円/ユーザーで導入できる手軽さと、大企業の業務システムにも使われる信頼性、柔軟性が特徴で、1万社以上が利用しているクラウドサービスだ。

 kintoneは業務を熟知している現場の人間が自分でシステムを構築できるので、スピーディーかつ過不足のない開発が行える。開発と言っても、ウェブページ上でパーツを配置するだけと操作は簡単。ITに関わりがなさそうな業界でも活用され、めざましい効果を上げている企業は多い。

 今回は、東京都のリフォーム会社が、「Microsoft Access」と「Excel」で運用していたシステムをkintoneに切り替え、自分たちでブラッシュアップすることで大きな業務改善を実現した事例を紹介しよう。

kintone(サイボウズ)のウェブサイト
kintone(サイボウズ)のウェブサイト
キャプチャ:筆者

課題は複数システムへの重複入力やテレワーク対応

 今回、お話を伺ったのは家づくり代理人(東京都世田谷区)の代表取締役 神田雅弘氏と奥様の神田奈緒美氏。ママリフォームという屋号で、住宅のリフォームサービスを提供している。世田谷区赤堤から、自転車15分圏内の地域密着スタイルが特徴だ。

 以前は家を建てる時のサポート業務を手がけていたのだが、新築する人よりもリフォームする人が増えたため、10年ほど前からリフォームをメインにするようになったという。

 ママリフォームでは神田奈緒美氏の女性目線・主婦目線からのアドバイスをすることで、顧客に寄り添って悩み事を解決している。従業員は2020年入社した正社員1人と、パートが3人ほどいるという。

ママリフォームのウェブサイト
ママリフォームのウェブサイト
キャプチャ:筆者

 同社では、20年前から「FileMaker Pro」というデータベースソフトを使っていた。今で言う、ローコードツールの1つだ。当時、「1to1マーケティング」と呼ばれる顧客1人1人に対してマーケティングを行うという考え方が流行っており、顧客管理をするために導入した。

 長らくFileMaker Proを使っていたがシステムが古くなったため、6年ほど前にMicrosoftのデータベースソフトAccessに移行した。

 「2018年12月に入ってくれたパートさんの旦那さんがITに詳しかったので、うちのシステムを見てもらいました。そうしたら、こんな古いシステムを使っていたら発展しませんよ、と言われたんです」と神田雅弘氏。

 AccessはインストールしているPCでしか操作できないのがネックだった。新型コロナウイルスの影響で、ママリフォームでもテレワークが導入されているが、これでは仕事にならない。

 さらに、受注するとAccessとExcel、そして施工管理アプリの「ANDPAD」すべてに顧客の名前や住所などの情報を重複して入力しなければならなかった。明らかな無駄手間なうえ、入力ミスが起きる可能性もあるため、パートたちからなんとかならないか、という声が上がっていたという。

 さらに、FAXも利用しており、協力業者から届いた見積りなどを紙でファイリングし、保管していた。案件が増えれば、紙の量も多くなり、いつ使うかも分からない資料が棚を埋めているという課題もあった。

 そこで、その人から紹介されたのがkintoneだった。

家づくり代理人 代表取締役 神田雅弘氏
家づくり代理人 代表取締役 神田雅弘氏
提供:神田雅弘氏

 早速、神田雅弘氏はkintoneのことを調べ、サイボウズで開催されている「導入相談カフェ」に行き、詳しい話を聞いた。そこで、良さそうだと感じ、今度は神田奈緒美氏とパートたちも連れてもう1度話を聞きに行った。

 「そうしたら、みんなkintoneは良さそうだと言うのです。意外と簡単そうで、状況に合わせられそうだと感じました。それで導入の相談をしたのですが、結局、超大手の開発会社を紹介されて、パックで作って何十万円というプランを紹介され、あれ、なんか違うなと感じました。大手にうちの話をして伝わるのかな、と思ったのです」(神田雅弘氏)

 そこで、5年ほど前にリフォーム屋の経営者が集るイベントで知り合った矢内哲氏のFacebook投稿で、「kintone」の文字を見つけた。矢内氏もkintoneのことを知っているのかな、と考え、とりあえず相談を持ちかけたそう。

 実は、矢内氏はkintoneのユーザー企業が事例を発表するイベント「kintone AWARD 2018」でグランプリを獲得しているkintoneユーザーだ。kintoneを活用して新規事業としてリフォーム事業を立ち上げている。サイボウズ公認kintoneエバンジェリストでもあり、現在はkintoneの導入支援も手がけている。

 「やっぱりkintoneを導入するなら詳しい人に相談した方がいい、ということで今年の2月に矢内さんに相談しました。新型コロナウィルスが広まっていたので、Zoomでビデオ会議しました。そこで、矢内さんのリフォーム事業でkintoneを活用した事例を教えてもらったのです。4年がかりで到達したというゴールを見て、同じ業界の我々なら、もっと短期間で済むかもしれないと考えて、お手伝いをお願いしました」(神田雅弘氏)

kintone導入で業務効率が大幅に改善

 以前使っていたExcelやAccessのシステムも、開発するときは、要望を伝えて開発してもらうという流れだったという。しかし、矢内氏はママリフォームの人たちと一緒にkintoneアプリを作り上げていくという手法を採った。

 3月にZoomで打ち合わせを行い、4月にアプリを製作し、5月にkintoneを正式導入した。ゴールデンウィーク明けにはすでに案件管理アプリが完成していたそうだ。

 「意外だったのは、一緒に会話しながら作っていったことです。Zoomで全員の意見を聞いてくれて、修正して、しばらく使ってみてまた会議を行いました。自分たちで作っている感じが、kintone流なのかなと思いました」(神田雅弘氏)

 「これまで何回か開発を依頼しましたが、どうしても伝わらないことが多く、何度も失敗してきました。それが、自分たちで改善をすれば、数ヶ月でここまでのものができるのか、と夢みたいです」と神田奈緒美氏は満足げに笑った。

 顧客管理アプリと案件アプリを作成して連携させることで、一度入力したらそのデータを再利用できるようになった。矢内氏がカスタマイズして施工管理アプリのANDPADとも連携できるようになったので、同じデータを重複して入力するという手間がなくなった。同時に、入力ミスも防止できるようになった。

 「FAX+kintone」(バーズ情報科学研究所)というkintone連携ソリューションを導入することで、FAXをデジタル化。以前棚で保管していた紙の束を廃棄し、ペーパーレス化も実現できた。

 「受信したFAXデータを案件に紐付けることで、必要な情報がすぐに検索できるようになりました。kintoneはクラウドサービスだから、どこでも必要な時に資料が見られるのが便利です。今までは、お店に来てファイルを探していた時間を有効に使えるようになりました」(神田奈緒美氏)

ママリフォーム 代表 神田奈緒美氏
ママリフォーム 代表 神田奈緒美氏
提供:神田雅弘氏

 神田夫妻は現場に出ていることが多いが、その時に連絡が来たときも、kintoneを見ればその場で答えが出せる。今までは、会社に連絡したり、帰社したりする必要があったが、迅速な対応ができるようになったという。

 ママリフォームは地域に密着しているので、顧客との距離も近い。会社に連絡があったことをkintoneで確認できれば、その内容によっては帰社する前に寄ることもできる。電話に出られなかった場合でも着信の履歴を見てkintoneで調べることで、誰からかかってきたのかがわかる。案件の状況によっては、即連絡するといった柔軟な対応が可能になる。いろいろな場面で業務効率が大きく改善したそうだ。

 kintoneのタスク管理プラグイン「KANBAN」(アーセス)も導入し、タスクや案件の管理もかんばん方式で扱えるようにした。kintoneのUIはややプアなのだが、プラグインを使ったリッチなインターフェースならITに詳しくない人でも直感的に利用できる。

 kintoneそのものの利用料金は1ユーザー当たり月額1500円と安いのだが、プラグインや連携サービスの料金を加えると、中小企業には無視できない負担になってくる。しかし、神田雅弘氏は効率化や削減できる人件費など、投資を上回る効果が得られるなら、投資は必要だと答えた。

 「タスクをkintoneで管理するようになったので、従業員も私も紙の手帳は使わなくなってしまいました。転記する手間もなくなり、快適です」(神田奈緒美氏)

 手軽にアプリが作れて、クラウドで共有でき、スマホでも閲覧できるというkintoneに感動した神田雅弘氏は、サイボウズの株価は上がるはず! と思ったそうだ。その慧眼は素晴らしいが、確認したときにはすでに株価があがりまくっていた後だったという。

 最後に、今後の展開を伺った。

 「kintoneアプリを改善していきたいです。今は顧客と案件の管理を中心に進めて来ましたが、今後は会計システムにデータを渡したり、経営の分析を行ったりしていこうと思っています」と神田雅弘氏は締めた。

 Accessからkintoneへ移行でき、プラグインの便利さも体感したママリフォーム。サポートがあったとは言え、自分たちでアプリを改善するスキルも身につけた。今後も、ビジネスのニーズに応じて、自分たちに最適なシステムを短時間で開発していける。kintoneの大成功導入事例と言っていいだろう。

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